全てのつよきすファンに贈る至極の一本。NEXTの感想の時に「続編が出たら嬉しいなあ」みたいなことを書いたわけですが、その希望が最高の形で実現しました。しかし、楽しかった時間もやがて終わり、後にはシリーズが完結したことの寂しさが残ります。
初代つよきすが発売されたのが2005年。その後、続編が次々に発売され、’13年には世代が一新されたNEXTが出ました。そして10年後の現在、旧世代と新世代が共演するシリーズ集大成の今作が世に出ました。つよきすシリーズは棺桶に入れたいぐらいお気に入りの作品となっている当方ですが、年齢上10年前からつよきすをプレイしていたわけではありませんでした。また全てのつよきすコンテンツに触れたワケでもありません。古いPCで初代からやり続けブラウン管のTVでCS版を遊びスマホが主流じゃない頃からつよコミュに入っている、そういった元来のファンの方々からすると当方はまだまだ新参で半人前のファンかと思います。しかし、今作をプレイして感じた幸福感やシリーズ完結の寂寥感は、古参の方々と意を共にするものと自負しております。では、今作の当方の感想を書いていきます。
共通√→勝気&きつね√の感想→NEXTヒロインアフターの感想→伝説世代アフターの感想→「祭りの後」√の感想
といったような流れで書いていきます。
○共通√
祭りが始まる幕前のような位置づけで、つよきすの舞台のおさらいや各キャラクターの顔出しを兼ねた日常パートです。旧キャラはいつ来るの?いつ来るの?といった感じで読み進めていった記憶があります(笑)カニ、スバル、フカヒレが一緒にいるシーンが初めて出てきた時は思わず涙が出そうになりましたね。10年という月日が流れても相変わらずの様子で嬉しかったです。
それにしても出させ方が上手かった。NEXTでは乙女さんやカニは”満を持して”登場したような印象で、ゲストキャラという色が強かった気がします(もちろん特別出演のつもりでしたのでしょうけど)。今作も舞台はNEXTの世界観を引き継いだ「10年後の龍鳴館」で、あくまでナギやはかりさんたちの時代となっています。昔のつよきすキャラが一斉に出ると、舞台も昔の空気に変わっていくのではないだろうかと危惧していましたが・・・そんなことはありませんでしたね。登場するのも何気ない日常のワンシーンからすっと入ってきて、そして世界観そのままにNEXTの世界に溶け込んでいきました。たまたま10年前のキャラたちが集まるようになって、NEXTメンバーの日常に関わるようになる。2つの世代がクロスするスペシャルなお祭りでありながらも、どちらかに偏ることなく見事に調和していました。かくして、楽しい祭りが開幕します。
○勝気&きつね√
前作(NEXT)で大人気だったきつねと新キャラである勝気の二つのルートが今作の目玉として用意されていました。きつねは異常なまでに人気があったので当然FDか何かで補完されるとは思っていましたが、やはり二大主役の一人に来ましたね。露出の激しい奇抜な服装とグラマラスな肢体から溢れ出る野性的なエロス。挑発的な顔つきに隠れているMの気質はプレイヤーの嗜虐心を掻き立てます。「本作はエロに力を入れています!」という製作コメントもありましたが、まさにその通りで、きつね単体だけ見ても非常に実用性は高いと思います。
そもそもツンデレ強気女子をテーマにしているつよきすでは色んなタイプのヒロインが描かれていますが、きつねという存在はある種究極の強気女子だと思います。クラスからハブられようが周囲から何と言われようが意に介さず自分の道を歩む。気に入った相手は認めて、とことん懐く。そこには青春期に特有の複雑な心模様が何一つないんですよね。ホントに本能で動くというか、直情的な感じのキャラ。ルートでも、好感度を上げていくというより、ナギがなんとかきつねの視界に入っていくような感じで、距離が縮んでいったように思います。だから最初はきつねは人間じゃなくて妖怪か何かだと思っていました(笑)。神社で別れるところとか、ある意味ミスリードでしたよね。さすがに人外キャラが多いつよきすの世界でも完全に人間じゃないヒロインは出ませんでしたけども。いずれにしても、きつねのようなキャラクターがつよきすの世界に生まれ落ちたのも、10年という月日の中でツンデレという属性も複雑化・多様化してきたためではないかと考えられます。
さてもう一方の新ヒロイン、勝気√ですが、とても素晴らしい出来でした。実は泣き虫の性格でした・・・というのは、今までのつよきすキャラではありそうでなかった(ネタに扱われるカニは除く)強気女子でしたね。完全無欠のお嬢様でありながらもふとした時に見せる等身大の女の子らしさ、そういったギャップで骨抜きにしてしまうのはさすが姫の従妹といったところでしょう。風音氏もさすがの演技力でした。この√は大まかに分けると、きつねとの対決→夏休みのイチャラブ→エリカとの対決という展開なのですが、特にエリカとの対決の部分が最高でした。正直きつねとの対決のとこが霞むほどでしたね。新世代VS伝説世代という図式になっており、どのキャラにも見せ場がある熱い戦いでした。勝気√はどちらかというと強気に「なっていく」話でしたね。
ところで一つ気になった点を挙げるとすると、まきいづみ氏をモブとして出すんだったら、祈センセや紀子とかもうちょっと出番増やしてあげてもよかったんじゃ・・・と思ったところですね。
○NEXTヒロインアフター
前作で結ばれてからの話の続きです。また今作はさらに華砲、モジョセンセ、双子メイドが攻略できます。ついにつよきすも男の娘専用の√を用意してきました。しかもノエルは触手プレイに講じるCGがあるという優遇されっぷり。あそこは何故ビュッシュじゃなかったのだろう(笑)ちなみに・・・華砲√では村田と紀子がCG付きで本格的に出てきます!プチ感動。やはり2人はお似合いですね。天海先生は旧キャラを面影を残しつつ適度に成長している様子に描くのが本当に上手です。
話がそれてしまいましたが、5人のアフターは総じて良かったです。FDとしての側面が如何なく発揮されているイチャラブも堪能できましたし、それぞれの√で違うコミュニティ毎に話が進むのも面白い。チェリ√は蟹沢ファミリー中心の2-C、子羽√は伊達兄妹のお話に伝説世代が絡んでくる、などなど。相変わらずチェリ√はバカやってました(笑)が、ああいうバカやれる友達と青春を楽しむことこそが、つよきすという世界の醍醐味なんですよね(だからこそ、カニ2015は心に刺さります)。きつね勝気や旧ヒロインたちの存在に隠れがちではありますが、NEXTヒロインたちも魅力いっぱいであります。
さて、一番印象に残っているのは澄香√です。この√は前作のグランド√アフターということもあって、未来に繋がるような表現が随所にあって良かったです。例えば蟹沢ファミリーがスバルの店で食事しているシーンとか。ジロ兄の波乱万丈な人生の話になった時、ナギがジロに「お前も気をつけろよ」と言うと、
ジロ「兄貴みたいな人生も悪くない・・・けど、この4人で集まる時間がなくなりそうだからな」
と言ったところ。ここは良かったですね。エイチやチェリも茶化したりせずジロの言葉を黙って呑み込む。そしてその後、ナギたちが帰る時の会計時にスバルがお金をほとんど受け取らず、
スバル「また来いよ。今度も4人でな」
と言うのがグっと来る!これはセリフの主がスバルだからこその感慨深いものですよね。
また、オアシスで伝説世代がプチ同窓会をしているのを受けて、ナギ澄香はかりで自分たちはどうなるかを喋るシーン。NEXTにおけるメインヒロインははかりさんですが、真のヒロインはピュア子であることを印象付けるようなやり取りでしたね。
はかり「私らはどうなるかなぁ・・・私、友達作るの下手だから」
澄香「大丈夫ですよはかりさん。私たちの生徒会も、10年後は仲良くやってますよ」
はかり「かな」
ナギ「・・・」
ナギ(もしその時は──)
ナギ(澄香を中心にして集まるんだろうな)
○伝説世代アフター
コレを最大の楽しみにしていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。レオ視点で10年後の乙女、カニ、なごみん、姫、よっぴー、素奈緒、セレブが攻略できるのです(あくまでおまけですけど)!10年後というだけあって当然結婚しているワケですが、何やら出産後の体・・・とか、子供の前ではできない・・・とか、妙に生々しくてエロい。あと何も考えてなかった学生の頃と違って、経済状況が・・・とか、仕事があるから・・・とかで避妊するところもエロゲらしからぬリアルな描写でしたね。面白いのは、レオが学生時代に誰とくっついているかによって新世代キャラの境遇が変わっていること。例えば素奈緒√でははかりとネコが昔からナギの姉ポジだったり、乙女√では鍛錬を積んだナギが人外キャラになっていたりピュア子と衣がレオと馴染みがあったり。特にナギの変貌ぶりには笑いました。
そして、プレイしたほとんどの方が複雑な気持ちになったカニ√。ホントに複雑な気分でした。カニと結ばれ幸せな家庭を築いたレオだったが、スバルとはたまにしか顔を合わせることがなくなり、フカヒレとも立ち話を少々する程度。仲は良いままだけど、学生時代とは違って、希薄ともとれる付き合い方を送る対馬ファミリー。もちろん√自体はカニと幸せに過ごすハッピーな内容なんですけど、手放しでは喜べない。楽しいのに切ない。そんな感じでしたね。特にレオが現代の蟹沢ファミリーを見て昔の自分たちを思い出すシーン。あれは反則でした。乙女さんのトコでもそうでしたが、旧作の絵を出してくるのは反則です(笑)泣くに決まってますから。積み重ねてきた思い出があるからこそ、心に響くような√でしたね。蟹沢ファミリーも今は4人で楽しく遊んでいますが、10年後はレオやスバルたちみたいになってしまうんでしょうか。気になります。カニとのHが制服姿だったのも、カニが昔の頃から抜け切れていないレオに気を遣ったのでしょうかね。
○「祭りの後」√の感想
さて、メインサブ、新旧すべての√をクリアすると解放される最後の√がこの「祭りの後」です。この√は今までにあったグランドエンド√ではありません。はかりアフターで、文化祭が終わった後の後夜祭で乙女さんとはかりさんがフォークダンスを踊るシーンがあるのですが、そこでの二人の会話を補完するような位置づけです。尺としては短い√です。
この√ではいったい何を言いたかったのかと考えてみると、この√は、ライターであるさかき傘氏はもちろん、シリーズ全体を通してつよきす製作に関わった飴スタッフの気持ちを、旧世代、新世代のメイン2人である乙女とはかりのやりとりが代弁していたのではないかと読み取りました。はかりの「ちゃんと皆を引っ張ってこれたかな・・・?」というセリフには、新シリーズであるNEXT、FESTIVALは、今までのつよきすファンを楽しませることができたのか?というニュアンスがあるのではないか。そこで、乙女さんは言います。
乙女「お前がやって来たことを私は楽しいと思った。だから胸を張っておけ。今日、少なくとも今この時は。そして、今日を振り返る時が来たら、思い出せ。私が楽しいと言っていたことを。皆が笑顔でいる今この時を。」
乙女さんは、はかりが引っ張ってきたNEXTからの新しい物語を、楽しかったという。それは、さかき氏や製作スタッフも同じ。もちろん、10年前と同じスタッフが残っているとは限らないし、新しいスタッフばかりかもしれません。しかし、当時の声優も見事に揃え、オールキャラが出るような祭りのような今作を製作して世に出したことは、飴としても制作サイドからしてみてもとても楽しかったのではないでしょうか。不評に思うファンがいるかどうかはともかく、作った我々は楽しかった!!だから、胸を張って言えるのです、FESTIVALは傑作だと。面白いのは無印だけ、NEXT世代は面白くない、それはプレイヤー次第だしどうにもできないこと。でも、FESTIVALまで製作をやり抜いて来て、ゲームを作った我々はとても楽しかったんだよ!と。これから先、ユーザーがつよきすシリーズを振り返った時、そういう我々スタッフが楽しんでいたということを思い出して欲しいんだよ!と。そういったことを、この√では言いたかったのではないかと思います(あくまでさかき先生個人の筆だとは思いますが)。
はかり√でも、「残念、私の方が楽しかったよ」というセリフがありますが、あれも実はプレイヤーよりもさかき先生の方が楽しんでいたということを言ってるのかもしれません(笑)
○総評
ボリュームは非常にあり、少しずつ進めていたらだいぶ時間がかかります。しかし、終わってほしくない、いつまでもプレイしていたいという想いが胸の中にあったため、むしろあっという間の時間だったと振り返ります。10年間のつよきすの物語はこれで幕を下ろし、もうこれ以上新作は出ないと思いますが、当方はいつまでもつよきすについていきたいと思います。
つよきすという作品は、当方の人生に大きな影響を与えました。強気女子という柱のテーマがありながらも、その実いろんな要素が詰まっており、それは学園エロゲとして非常に心の琴線に触れるような内容でした。目を閉じれば、作中の彼らの青春がいくらでも想像できます。そしてキャラクターたちのその物語は、いつまでも当方の中で紡がれ続いていくのです。
最後に、つよきすを創り上げてくれたこれまでのクリエイター陣の方々、飴スタッフの方々、キャラに命を吹き込んでくれた声優の方々に最大限の感謝を申し上げます。