再度プレイして書き直す。それを苦と思わないゲーム。
単純に抜けて面白いということ、エロと娯楽というエロゲがエロゲである要素を、最も高水準に満たした為に自身の最高得点となった。抜くことに関して至上のシステム。甲高くなくテキストを阻害しないBGMと、シナリオに合致したテーマ曲。尻込みを感じていてはできない、パワフルすぎる声演技。ADVとして標準的な演出と起伏の少ないテキストを除いて非の打ち所がない。
ゲームを始めて最初に感じたことは、合歓という女への胸糞悪さ。第一印象では菜月が好きだったので、教師を軽んじる言動や、何もしてないにも関わらず弱みをちらつかせて褒賞を得るその姿に憤った。救出ゲームなどで人間味のある姿を見ても、その後の地上での裏切りを4ルートに渡って見せ付けられ、その印象は変わらない。
その凝り固まった先入観を180度ひっくり返された最終ルート。作中の恵輔と同じ戸惑いを覚えながら聞かされる二人の境遇と、ただ一度たりとも報われることのなかった彼女の気持ち。幼かった二人の楽園を失い、虚構の楽園を恵輔に否定され、絶望に身をよじりながらそれでも、全てを捧げた男に合歓は感謝と別れを口にする。
偽りの楽園さえ失いわかたれた二人。だが、愛という禁断の果実を彼らと同じように得てしまった「蛇」によって、二人は引き合う。
愛する男のいない偽りの楽園に残され自身を殺した合歓と、過酷な現実を選択した恵輔。合歓の手を掴んだ恵輔はその後どうなっただろうか。生きる術を学んだとはいえ、国家さえ動かす金と権力、人が作り出した「神」を前に、たった一人の男に何ができるだろう。常識的に考えれば、野良犬のようにあっさりと死ぬ結末以外にない。
それでもあの時、数多の幸福に満ちた閉塞感「euphoria」を、「euthanasia」でしかない偽りの楽園を捨て現実を選び、その新生の果てに掴んだ二人の自由が、彼女に託された希望が、二人の「新しい世界」へと続いていることを願いたい。人として扱われず、裏切られ続け、愛した男に憎まれ、語ることが許された真実はなく、それでもただの一度も報われずに、ついには記憶さえも失った女の最後の微笑みを見てそう思った。
これは神に反逆し楽園を捨てた、新たな世界を求める男と女の物語。
初回梨香ルート(BAD含む)4時間10分、菜月ルート2時間45分、凛音ルート(BAD含む)3時間40分、合歓ルート4時間35分、トゥルールート(BAD含む)4時間40分。計19時間50分。
BGVあり(ボイスループ機能あり)、BGエロSEあり。
原画10/10 着色4/5 エロ15/15 ボイス5/5
ストーリー15/15 キャラクター5/5 テキスト7/10
音楽9/10 システム10/10 演出5/10 価格2/5
(高いレベルでのエロ・シナリオの両立+1、声優超演技+1)