伏線バリバリの良くまとまったサスペンス。テンポが良く、夢中で読み進めた。ただ、良くも悪くも無駄や余白がないので、良作ではあっても名作にはなれないという印象。
今作は推理ではなく、張り巡らされた伏線回収を楽しむ作品。
ミステリー・サスペンス系は沢山プレイしてきたが、ここまで伏線回収に徹している作品は初めて。
【昆虫美食部=ムシクイ】を、謎解きのムシクイを埋めることにかけているなど、事件だけでなく細部まで伏線は徹底している。
ただ一言でも書いたが、キッチリした構成ゆえに良くも悪くも無駄がなく、伏線や犯人がバレバレになりやすいのは好みが分かれそう。
キャラもシナリオ上ではある程度感情移入できるが、シナリオから切り離してしまうと魅力が殆どなくなってしまう。
今作のヒロインたちの薄い本が出たり、「俺の嫁!!」と叫ぶ人が出たりする割合は低いと思う。
特に透子さんは設定的にもキャスト的にも、沢山の人の心を掴むヒロインになるだけの素地はあるのにパワー不足で残念。
同じフルプライスなのに『景の海のアペイリア』に比べ、背景がやたら少ないのが気になった。
特に主人公たちが住む集合住宅のシーンで、一軒家が立ち並ぶ背景の使いまわしは違和感が強い。
集合住宅の廊下か入口の背景は必要だったと思う。
暗転で済ませているシーンもかなり多め。
こんなに背景が減ると、シルキーズプラスさんの財政状況が悪いのか不安。
もし今後万一のことがあって、シルキーズプラスさんの塗り技術が断絶になったら惜し過ぎる。
余談だがライターの海原望さんは女性な気がする。
コンドーム描写の多さとヒロイン造形が男性っぽくない印象を受けた。