認識というものはつくづく難しい、そして度し難い。いっそ清々しいほどにまで描ききってくれた事は何よりも評価したい。
この作品はフィクションである―紛れもない事実である。
しかし、同時にこの作品は現実のあらゆる問題に還元する事も出来る―それも紛れもない事実である。
純愛モノとして観ても面白いけれど、あえて「認識(五感)」に着目してみるのも一興かもしれない。物語後半に行くほど純愛モノとしての色が強くなり、忘れ去られがちになりそうだけど、この恋の始まりはそもそもが「認識」のずれであり、この問題は終始付きまとっているはずである。そういう意味でも「我々の五感というものが如何にあやふやであるか」に着眼してシナリオを読むのは決して間違った楽しみ方ではないだろう。ゴキブリを愛でたり食べたり出来る人々の気持ちに一歩近づけるかもしれない。それが正しいのかは別にして―そうなることが良いのかも別にして。