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rats&starさんのいろとりどりのセカイの長文感想

ユーザー
rats&star
ゲーム
いろとりどりのセカイ
ブランド
FAVORITE
得点
85
参照数
194

一言コメント

悲しくも優しいセカイ。誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなんて偽善だ、と思う方にはお薦めしません。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

亡くなった人の魂がたどり着く「最果ての古書店」。主人公は、そこの管理者。
人生で願いを叶えられたものの魂は古書店の書架に収まり、そうでなかったものは主人公の力を借りて新しく舞台を整え、次なる人生へと旅立っていく。そんな仕事を永遠とも思える時間にわたって繰り返していくうちに、叶えられなかった願いの多くに「恋」があることを知った主人公は、「恋」とは何かを知るために管理者の役目を放棄し、人間として生きる道を選ぶ。しかし、元々人間ではない存在である主人公が人間として生きるには、すでにいる人間の器を借りる(=とある人間の命を奪い、そのものと入れ替わる)必要があった。一方、管理者を失った「最果ての古書店」は徐々に暴走を始め、世界は少しずつ崩壊してゆく。
人間として生きるに当たってそれまでの記憶を捨て去った主人公は、そのような事情を知る由もなく人としての生を謳歌するが、やがて主人公の生きる世界にも暴走の影響が現れ始める…。

この独善的ともいえる主人公を許容できるかどうかが、本作の評価の分かれ目となるかと。メインヒロインとなる「二階堂真紅」の双子の妹「二階堂藍」は、幼馴染みとの結婚を控えて主人公に命を奪われるし(ただし本人は許している)、結婚相手の「鹿野上悠馬」はそれこそ主人公にその人生を乗っ取られているわけだし(しかも主人公に対して恨み言を述べている描写もある)。

自分としては、それらすべてを含めて良質のファンタジーと受け止めました。