ビジュアルサウンドノベルの力を最大限利用した作品
◇ネタバレ無し感想
まずは一つ、筆者自身の反省を
私は以前この「Re:LieF」というゲームの体験版をプレイし、このサイトに感想を記した。そこで「新規ブランドゆえの息切れが非常に気がかり」などと言っていたが、プレイ後の今となっては自身の不徳を恥じるばかり。
この作品の体験版から練り上げられていたシナリオ、圧倒的な画技、心揺さぶる音楽は最後まで衰えとは無縁だった。
エロゲ。カッコつけて言えばビジュアルサウンドノベルゲームとなるのだろうが、「Re:LieF」はこのゲームジャンルにおける一つの到達点なのではないかと、そう思わされてしまった。
最後に、このような素晴らしいゲームを作ってくださったRASK様および各種クリエイター様に感謝。
以下ネタバレ有り感想
◇ネタバレ有り考察・感想
(最初からどでかいネタバレをさせてもらうと)トライメント計画が仮想現実で行われているということは、体験版の時点で予想できていた。「人工知能」「VR」「離島」「ノイズ」程度のキーワードでメタ推理をすればそこまで突飛ではないはず。
そして本編開始からしばらくして、島が仮想現実ということは間違いないと確信する。まず第一に、体験版感想でも話題に上げたあの縁取りが、本編開始直後では消えていた。そのときは仕様を変えたのかなと思ったが、そのあと御雲島に来て縁取りが復活したときは思わずニヤリとしてしまった。筆者が没入感を抑制すると言ったあの縁取りは、奇しくも仮想現実への没入を表していた。
体験版部分が終了し、共通ルート後半へ。
まず「おや?」と思ったのは、体験版と違ってオープニングが流れなかったこと。このまま流れないのかな、と頭の隅に引っかかりながら読み進めていくと、終盤にユウが登場する。
体験版時点ではほとんど謎だった正体と明らかに意味ありげな名前。さてどんな伏線を投下してくるんだとワクワクしながら読んでいくと、さらっと核爆弾級の発言を投下してきました。
そしてオープニング。
やってくれたなと、感激しました。
オープニングが終わり、各ルートに入っていく。筆者は公式サイトのキャラクター順どおり、日向子→流花→もも→アイの順でプレイ。
メインヒロインの感想と、出てきたサブヒロインを含めて順に
・日向子
かわいい。
彼女のかわいさには一切の含みがない。
プレイ中に、何故そんなふうに感じたのかと考察し、一つの結論に至った。それは体験版部分で、彼女の一人称を長時間プレイしたからだ。一人称で語られるから、彼女の内面がはっきりとわかるし、そのかわいさに狙ってやってることなんて一つもないと安心できる。
それと特記しておいたいのが、彼女は嫉妬も純粋にかわいい。基本筆者は嫉妬する女はめんどくさいと感じるのだが、彼女は他のルートで出てきても、正直そのルートのメインより萌える。日向子マジかわいい。
・ミリャ
サブヒロインだけど日向子ルートにおける中心人物。
不思議系キャラゆえの安定感(?)なのだろうか、彼女がいるだけで場面が盛り上がる。見ていて本当に愛らしく、楽しかった。
このルートのヒロイン二人が抜群の安定性を持っているのに対して、主人公は体験版から一転して不安定になっていく。このルートで、主人公がヒロインたちを成長させていく物語よりも、主人公の成長記を主軸においた物語だとわかってくる。
そして日向子ルートのエピローグでは仮想現実から脱し、日向子、ミリャ、司の生存が確認できる(司が健在かはハッキリしないが)。つまり、エピローグまでの過程はぼかされているが、このルートで明確なゴール地点が示されたことになる。
このゴールを示すやり方は個人的に非常にありがたかった。
仮想現実の伏線を解いてしまった以上、ただ「脱出できましためでたしめでたし」で終了では拍子抜けしてしまう。このルートのおかげで、注目するポイントを「主人公の成長」「主人公の過去」「ヒロインの成長」に絞ることができた。
・流花
彼女のルートが、なんというか、一番現代社会に沿ったシナリオだったのではないかと思う。日向子ルート後の、若干浮いた現実味が舞い戻ってきた気分。
このルートは色々と耳が痛かった。プレイヤー理人くんにはかなりのダメージだ。
・もも
人工知能、入門編。感情を持った人工知能がここで初めて出てくる。
現実ではまだ存在しないが、創作ではすでに感情を持った人工知能はありふれた題材であろう。もちろんありふれているからって、このルートが陳腐であると言うわけではない。「人工知能との友情」をテーマに、綺麗にまとめてきたと思う。
流花ともものルートは、両者とも前半がヒロインを主軸に、後半は主人公および世界観の伏線に主軸を置いていた。
この前半に、ネガティブポイントがあった。
日向子と比較して、明らかにヒロインの掘り下げが少ない。
後半で主人公側が展開を持っていくこともあってか、どうもルートを終えるとヒロインの印象が薄いことに気づく。それぞれテーマはまとまっているのだが、如何せん小じんまりとしてしまっているのだ。
ただ、後半は素晴らしい。
トライメント計画の終わり。流花ルートの「外側・陰」、ももルートの「内側・陽」の対比が見事だった。
3ルートを終えて、ついに最終ルートに突入。
・アイ
ルートに入るまで影薄過ぎでしょ。
・ユウ
筆者最大の問題点にして、最も好きなキャラ。
ももルートで感情を持った人工知能がでてきたが、筆者を含め、恐らく殆どの人が「人工知能との友情」に違和感を持たなかっただろう。
その次にアイとユウという感情を持った人工知能が出てきて、今度は恋愛関係まで発展する。
友情と恋愛感情の違いについては、(これで一本シナリオが書けてしまうので省くが)友情は「多数」に向けられるが、恋愛感情は「1人」に向けるものとしておく。
ではこの最終ルート、当然主人公はアイに告白するわけだが……
え? ユウは?
となる。思ってしまう。
だって小さいころから司を支えていたのはユウで、管理AIになって救おうとしてるのもユウ。
アイはユウのコピーだし……
そう考えたところで、ハッとする。
コピーだからと、無意識でアイが劣っていると考えてしまっていたのだ。
自分の考えの浅ましさ、そしてこの問題の大きさに気づく。
まず、いじめられていた頃の司と話していた「アルファ」。
「アルファ」のテキストウィンドウに名前は付いていない、つまり「ユウ」とも「アイ」とも明言されていない。
途中で司が「アルファ」にユウと名前をつけるが、その前に「わたし」という一人称を指摘され「ボク」と呼んだら面白そうとも言っている。
ならどのタイミングで二人に別れたかというと、これも憎らしいことに、日向子と流花の出会い辺りのぼかされた時点なのだ
人工知能のコピーについても、記憶を受け継いでいるが「人格」が違うとアイが語るだけに留まっている。実際、感情を持った人工知能のコピーなんて誰が説明できようか。
つまるところ、アイとユウの差異は「Re:LieF」開始地点からにしかない。
そう考えれば主人公がアイに告白する動悸に頷け無くもない(個人的にはユウ派なので複雑な心境なのだが)。
Hシーンを回収した後、いよいよ物語もクライマックス。
ゲーム終了しばらくは、さっきまでの苦悩を忘れさせてくれる。ここに至っては考察も感想も無粋だろう。
まとめ
シナリオ、CG、BGM、演出だけで十分高評価。だが最終ルートで感じた苦悩は(ライターが意図したどうかは不明だが)他のどんなゲームでも味わえないだろう。
もちろん、この苦悩を全く感じない人もいれば、単に不快に感じるだけの人もいるはず。しかし、筆者はこういう未知の感情をエロゲに求めているため、このような高得点を付けさせてもらった。
サントラとFD、および次回作を心待ちにしております。