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rabbit220さんの相州戦神館學園 八命陣の長文感想

ユーザー
rabbit220
ゲーム
相州戦神館學園 八命陣
ブランド
light
得点
85
参照数
1058

一言コメント

一言でまとめると難しいですが、面白かったとは思います。しかし物足りなさを感じたのも事実。それを長文感想で考察したいと思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

オールクリアしました。
長文感想は初めてですが書いてみたいと思います。


●キャラクター
今作も魅力的なキャラばかりでした。
敵は言わずもがな、味方のヒロインズの葛藤を上手く描いていたと思います。
声優陣の魂の籠った演技は忘れられません。キャラたちの魅力をこれでもかというくらい引き出していました。
特に神野なんか一条氏以外に考えられないレベルですね。

キャラの中身で面白いと思ったのはセージですね。徹頭徹尾悪に徹し切ったキャラでした。父親で悪役というキャラはやはり何か理由があって人の道を逸れることが大半ですが、そんなことはない、あるがままに鬼畜なのだと。しかし、彼を知る人間は「どこか放っておけない、彼の役に立ちたいという」思いが彼を知ることで分かるというその複雑さがただの鬼畜で終わらない魅力を孕んでいるのだと感じました。

対して残念だったのがキーラです。彼女は物語の根幹にあまり関わっていないということもありますが、あまりに不遇な終わり方だったと思います。彼女と対峙した鈴子は救いようがないからという理由でなく、人と獣の線引きを説いて討伐しましたが、幼いキーラに人間というものを説いても仕方がないだろうと思いました。戦真館のスタンス、彼女の性として非情にならざるを得ないとは思いますが、推定一桁でで生い立ちも悲惨すぎる少女にルールを厳格に適用することはあんまりすぎるので、何かしらの救済はあってもいいと思いました。その辺りの話の補完をCS版が出るのであったら欲しいところですね。

●シナリオ
序盤中盤では謎が多く、終盤に向かうに至って謎が解明するという形でしたが、
ループ物であったが為に時系列など理解するのが難しかったです。今でもプレイした人と自分の見解があっているのかすり合わせしたいくらいです。
第八層は現実なんだろうなーと予想したりしてプレイしていましたが、まさか主人公達が大正時代の人間だったことに驚きました。そこで大方謎が解決しました。しかし最後のアラヤの一人解説ネタバラしはどうかと思いましたが。
あとグランドルートですが、ヒロインに不遇はなかったとはいえ正直内容が薄かったですね・・・コピペルートすぎr(ry
正直な話、100年後で名前、立ち絵まで一緒にしなくてもと思いました。それらしきキャラ達の影だけで十分だったように思います。
キャラの思想、心理ですが
男、女とはなんたるか。人間が人間たるには何を抱いて生きれば良いのか。主人公はそこをブレずに仲間達の柱となって甘粕風に言えば「守るべき光」となって魅力的に描かれていたのだと思いました。どのキャラにも言えますが、特に男女のなんたるかが正田氏の作風が顕著に出ていると思います。
今作では英雄的キャラが多かったので、次の作品ではもっと人間臭いキャラが、Diesの蓮ぐらい人間臭い方が共感しながらプレイできるなーと思えました。主人公達は嫌いではないのですが、あまりに英雄的すぎて少し共感できなかったのも事実でした。

●各シーン印象的だった所
私が好きなシーンは栄光&野枝の空亡戦でした!
お互いを思う感情、記憶を捧げた所でグッときて「100年後の桜散る千信館で」(うろ覚え)の所で感極まりましたね・・・
彼らの生涯一生にかけて結ばれる可能性を摘まれましたが、100年後、生まれ変わって二人が結ばれるのを切に願いましたホント。それこそ448君とヒロインズよりも。

次に甘粕戦ですね。なんだか次元が違いすぎる戦いで神座シリーズかな?(すっとぼけ)って感じで見ててワクワクしました。
甘粕「リトルボォオオオイ!!!」、万歳三唱で草不可避。甘粕さんは私の中で萌えキャラになりました。
馬鹿にしてるのではなく、勿論いい意味です。彼の馬鹿正義が今までライターが産んできたラスボス勢と見劣りしないぐらい魅力的なキャラになっていると確信しています。
あとラグナログとかCGがなくて残念でした。獣殿のアレみたくあって欲しかったですね。
派手な戦闘な割にそこまで見栄えがよくなかったというか、地の文に演出が追い付いてない感じ。
今作は腹の探り合いや、能力の性質で戦うスタンスでしたが、やっぱりド派手なバトルの方が私は好きですねw
詠唱だったり技名だったり総じて前作群より少ないイメージでした。やっぱり大事だよああいうの。


総括すると、悪い作品ではなかったと思います。
正直言うともう少し加筆された物を所望したいですね。
物足りなさは確かに感じました。キャラが今までの作品より多かった事で人物心理の奥深くまで考えて話を展開させるライターの持ち味が薄くなっているのではないかと思いました。
CS版が出るんでしょうけど、完全版商法と言うのでしょうか?プレイヤーからしたら一度で完成した至高の物を見てみたいと思います。
ですがこの手のジャンルのエロゲは中々ないのでlightにはこれからも突き進んでいって欲しいと思います。
シナリオ、絵、音楽の3拍子がここまで揃った物もなかなかないので、これからも頑張ってほしいと思います。
今作は立ち絵をCGのように動かすことで、これまで発売されたどのゲームより革新的なシステムになっていた所は評価が高いです。lightの向上心が見えました。これからも良質な熱いゲームを是非届けて欲しいです。