読後感は最高。彼のコトバはきっと届いた
多くの人が星奏ルートを酷評しているが、私はそうは思わない。
むしろ、これ以上無いくらいに感動した。
すごく胸が痛くて、苦しかった。
でも、ちゃんと報われた。
最後には泣いてしまった。
完璧なハッピーエンドだし、作中で語られていたテーマもきちんと回収されている。
というわけで批評。
――きっと俺は……いろんなことを、取りこぼしているんだろう。
ホームページに記されていた等身大の恋とは、作者の、あるいは多くの人の青春そのものなのだと思う。
そう思うのは、私も似たような経験があるからだ。
確かにあった恋心。
もしかしたら、そう思わせる「彼女」の反応。
あの時ああしていれば、そんなチャンスが何度もあった。
だけど、彼は取りこぼしてしまった。
星奏ルートには、そんな思いがいたるところに散りばめられている。
故に、この物語のテーマは「失恋」である。
ただし現実と違うのは、二人が確かに両想いであるというところだ。
もしかしたら、これは私の妄想かもしれない。
それを承知のうえで、根拠を書きたいと思う。
本編において、初め、主人公と星奏は過去に固執していた。
初恋の思い出をなぞるようにして、子供ではなく少年少女として、描き直していた。
だからこそ彼は同じ過ちを繰り返してしまった。
彼は、つまり彼女は違う。少しだけ。
多くの人は主人公の目線で考えるから気付けないだろうが、主人公が取りこぼしたものは、本当にたくさんあったのだ。
私にはそれが痛い程わかった。
その多くが、星奏の出していたサインである。
星奏は努力していた。
五年前は主人公に全く見せなかった自分の内面を、拙いながらも表現しようとしていた。
初めての約束と、伝えたかった、君の、言葉。
これを主人公でなく、星奏の視点で考えると面白い。
私は、二人は初恋の思い出を描き直していると表現したが、違う点がひとつだけある。
それは二人が恋人関係になったということだ。
その理由が、主人公の魂の叫びである。
彼は物事を理屈っぽく考える性格だ。
半端に賢しくて、どこか冷めているから、感情的になることが出来ない。
これは本編で彼が繰り返し言っているように、
「僕は他人の気持ちが分からない」
という言葉からも明らかである。
そんな彼が、星奏を失うという恐怖から、感情的になった。
ただ彼女を引き留めたいという一心で叫んだ。
それが星奏の心を動かしたのだ。
だから星奏は、過去とは違う行動をした。
五年前には決して見せなかった内面を主人公に明かした。
そして、何かを伝えようとしていた。
あのね、私……ううん、なんでもない。
星奏にも伝えたい言葉があった。
でも怖かった。
だから遠回りに、やっぱりいいと言って逃げた。
だって、大好きな彼に迷惑をかけたくなかったから。
ならどうしてそんなサインを出したのか?
そんなの期待していたからに決まっている。
自分の大好きなヒーローは、きっと自分を救ってくれると。
だが結果として、彼は踏み込んでくれなかった。
その結果、彼女はいなくなった。
しかし、これをバッドエンドと捉えるのは違う。
そもそも物語はまだ終わっていない。
想像してほしい。
君の青春には、親しい女友達が居た。
いわゆる友達以上、恋人未満。そんな関係だ。
だけど二人とも告白なんてしないから、結局友達のままだった。
大人になった後、君は思う。
あの子のことを好きだったけど、あの子はどうだったのだろうか。
思えば、あの時のあの言葉、あの行動は、彼女なりのアプローチだったのではないか?
こんなのただの妄想だ。気持ち悪いことこのうえない。
だけど思うはずだ。
チャンスがあるなら、確かめたい。
もしも君と 今突然会えたのなら
何度も 描いてた
――オープニングの歌詞から抜粋。
相手の気持ちを考えることは怖い。
自分の気持ちを伝えて、望む返事なんて来るわけない。
それでも、伝えなければ「きっかけ」にはならない。
恋が始まる「きっかけ」にはならない。
主人公は自分の気持ちを伝えた。
君が好き。
だけど、相手の気持ちは考えなかった。いや、考えたけれど、踏み込まなかった。
強引に踏み込むことが出来なかった。
つまり、ただ口にしただけ。
怯えながら、どこか保険をかけながら。
そんなの、読まれないラブレターを書いたのと同じだ。
だから、あのエンディング直前のシーンに、オープニングの歌詞は驚くほどマッチする。
記憶はずっと今も 昨日のように色褪せない
胸の奥で広がる この気持ちまだ名前は無い
まだ恋じゃない。
彼は、彼女は、恋を知らないままだ。
あのあと二人が出会うことは、普通に考えれば二度とないだろう。
だが、互いを忘れることも決して無いだろう。
でも、
もしも君と、今突然出会えたなら――
このとき、彼は気付いたのだ。
――俺たちにできることは、ただ全力であることなんだろうか。
でも遅かった。
――だけど、少しばかり、歳をとって、疲れた。今はちょっとだけ眠ろう。
伝えたいコトバがあった。
でも怖くて、だから手紙を書いた。
だけどそれは間違いで、本当は、ただ全力で叫べばよかっただけなんだ。
そう気づいた時には、もう遅かった。
他の多くのゲームでは、彼が長い時間をかけて気付いたこと、星奏の伝えたかったコトバを、ものの数分で本人から聞き出してしまう。
だが現実はそうはいかない。
しかし、彼は彼女を追い続けた。
その過程で何度も失敗しながら、それに気付けないまま、追い続けた。
君は利用したんだ。
君が大嫌いだ。
この言葉を聞いて、いったい星奏はどう思うだろうか?
一途に思い続けた人から、決定的な事実を告げられて、でも言い返すことなんて出来なくて、いったい彼女はどんな心境だっただろうか?
なぜあの時、彼は彼女が読んでいた手紙を強引に奪い取らなかったのか。
あげればキリがない。
それは誰しも心に抱える後悔だ。
だが、失敗を繰り返しながらも、彼は諦めずに彼女を追い続けた。
私はここに胸を打たれた。
届け、そう思いながらプレイしていた。
最後はマウスを握る手が震えていた。
星奏が恋人より仕事を選んだ? そう思うなら、そいつは絶対にエアプレイだ。
果たして、多くを語らなかった主人公の思いがエンディングと共に語られる。
私は淡々とした文字を読みながら茫然とした。
結局、届かなかったのかと。
だが、その先に、ささやかな救いがあった。
……夢うつつに、かすかな足音を聞いた。
なんとなく
目を覚ましたら、美しい思い出の続きが俺を待っている。
そんな予感がした。
ただの妄想かもしれない。
でも私は、あれが現実であったと信じたい。
――君に届くものを書くよ。君を感動させるものを
――私は手強いぞ?
彼の思いが、届いたのだと信じたい。
対して、彩音という存在は、まったくもって対照的だった。
彼女は見事に主人公の心を掴み、幸せを手にした。
――頑張るのは恥ずかしいけど、頑張らないのはもっと恥ずかしい。
彼女もきっと怖かったはずだ。
星奏という存在がいて、主人公は明らかに彼女のことを引きずっていて、
でも自分の恋心を抑え込むことが出来なかった。
だからこそ、それがあふれ出したシーンに、ユーザーは心を打たれるのだと思う。
そういう意味で、彩音が報われたシーンでは目が熱くなった。
まさに、ハッピーエンドである。
……なんというか、
彩音ルートの、初チューまでは最高でした。
あそこで星奏があっさり引いたというか、主人公が動くきっかけになったのがアレという点を除けば百点です。文句ないです。
いや星奏ルートプレイしたらあっさり引いた理由もしっくりくるっていうか、アレ以外に無いんですけどね。
ただし個別ルートは許されない。
いやもう! 結ばれるとこで終われば良かったじゃん!
熱く語っちゃったけど、セナと主人公取り合った末に結ばれて終わりで良かったじゃん!
イチャラブパート? は本当にごちそうさまでした。
それだけに、それだけに最後の茶番がほんともう! ばかじゃないのっ!?
いろいろ書きましたが、続編希望です!
思い出の続きを書いてください!
彩音のポジションにあの女優が来るんでしょ!?
で、先生を苦しめた貴女がいまさら! とか言うんでしょ!?
もう先生を苦しめるのはやめて! とかいう女優に、覚醒した星奏ちゃんが言うんでしょ!?
確かに、私は彼を苦しめた。きっとこれからも。でも、それ以上に、こうたろー君を幸せにする!
とか言うんでしょ!? 僕キュン死しちゃうよ!?
なんだか直情的でポエミーな批評になってしまいましたが、とにかく、素晴らしい作品でした。
他の二人? 普通にキュンキュンしましたし、個別ルートも良かったのですが、星奏と彩音が突出しすぎていて……。