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putさんのそして明日の世界より――の長文感想

ユーザー
put
ゲーム
そして明日の世界より――
ブランド
etude
得点
95
参照数
1213

一言コメント

アフターの破壊力が最強。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●御波ルート
とりあえず終了させてきました。
攻略1人目ですから、どこら辺までが他ルートとリンクしてるのかが分からないので何とも言えないですね、シェルターの件とか。
ですが、素直に良い話だと思いました。田舎の人間は温かいなぁ。




●朝陽ルート
超展開でしたね……。最後は車に轢かれて解決ですかい。
確かにそれぞれの立場に固執していたのが間違いだったっていうのは分かりますけどね。
朝陽は母親役、昴は夕陽の父親役・皆の前では一筋の陰も見せない親友、夕陽はその二人や親友に甘えるだけの役。

終盤あたりは超展開でついていけませんでしたが、卒業式以後は普通に良かったと思います。
でも、卒業式のときシェルター行きが決まっている人(昴)に対して、温かい島人の声援(怒号?)が信じられませんでした。
確かにシェルター行きは断念したっぽいですが、数日限りで温かい声をかけられるほど人間関係が修復するのかな…。
卒業式に参加した島人は、主人公の親友みたくシェルター行きを喜んでいたごく一部の島人だったのかもしれませんが。




●青葉ルート
突然がらりと変わってしまった青葉には驚かされました。
主人公の家で化粧をしてる時点で伏線かなぁとは思ってたんですが、ここまで性格が変わるとは。
なんというか、皮肉ですよね。

時間がないと気づいて、青葉は生まれ持った美貌を武器に女として夕陽に勝負を仕掛け
主人公はそんな青葉を見て親友が消えてしまったと思い喪失感に囚われ
そんな矢先シェルター行きが決まり主人公は心を閉ざし
そして青葉はそんな主人公を見て”葦屋昴”が消えてしまったと絶望する
主人公は服を見て隠れてる青葉を見つけ出す
「そこに居るんだろう青葉?知ってるぞ。そこに座って膝を抱えてる。十年近くそこに一人で座ってる。そこに座ってるただの青葉に会いたいんだ」
このシーンは非常に良かったです。泣きそうになった。


このシーンを経て、今までの不自然な青葉は完全に鳴りを潜め本当の青葉が顔を出します。
主人公や夕陽と競り合う姿勢は変わらずに、女の子らしい部分はきちんと持っていて……。
まぁ性格を男の子っぽくした青葉も必死だったんだろうけど。




●夕陽ルート
個人的には好きです。こういうの。
それにしても夕陽の決心はすごいですねぇ。
主人公がシェルター行きの権利を棄権することで、間接的に夕陽が殺すことになるってのは分かる。
そこで主人公が自分のことを心配しなくても良くなるように自立しようとするのも分かる。
夕陽のことだから1日も続かないと思ってたんだけどねぇ……。そこが意外で、だけど夕陽は頑張ってるんだなぁと。
特にレジのシーンでは涙腺にきてしまいました。
そして主人公の悪夢。あのシーンで主人公が島のことや、そこに住んでいる人々をどんなに大切に思っているか思い知らされました。
確かに自分もあんな思いをしてまでシェルターに行きたいとは思わないかも……と、そこまで思わされました。

結局じいちゃん(じいちゃん何回主人公助けてるんだよw)の助言で、主人公が自分の立場から物事を考えられるようになって解決します。
個人的にこういうの好きだ。
他のゲームと比較的して設定が重いってのもストーリーに惹きよせられた原因かもしれないけど。




●ノーマルエンド
個別ルートよりも素直に良いと思いました。
特に、じいちゃんが泣くシーンと竜と灯台での2ショットシーンは涙腺がゆるみました。
「じゃから保証するよ。日常は取り戻せる。例えこの先世界が滅ぶと知っておってもじゃ」
「取り戻せないという思い込みが最初で最後の敵になる」
「守るべきものを失う愚だけは避けねばならない。何としても」
「俺の失敗はそれだ。ひかりを選ばなかった事じゃない。全ての選択肢を知らずに居た事だ。だからお前にはそうなって欲しくはないんだ」
「……例えそれで、同じ答えに辿り着くのだとしても、な」
「お前がお前らしく生きる事を俺は決して止めたりはしない」
「だが、選択肢が増えたからって新しい方だけを選ばなければいけない道理はない。同じように古い方に拘る必要もな」


みんなを守り、守られながらあるがままに生きていく。
このエンドは、その一言に尽きるかなと。




●アフター
同僚が夕陽の声だったからびっくり。(どうでもいい)


8月25日、温泉を掘り当てて記念写真。
写真が画面に出ただけで号泣しました。


昴を迎えにくるのは9月1日だった筈なので、掘り当てたのはその直前ですね。
こんな笑顔でみんなを置いていけるはずはないので、昴島に残って残りの余生を相変わらず楽しんだと思います。
世界の終わりまで1ヶ月なのに、本当に楽しそうで……。楽しそうなのにあと1ヶ月で世界が滅ぶ……。皮肉すぎる。
世界の終わりまで(残り1ヶ月は分からないけど、恐らくそうだと思う)、あるがままに生き続けた主人公たちは本当に素晴らしいです。
津波が襲ってくる瞬間まで、いつもと変わらず馬鹿騒ぎをしてたんだろうなぁ……。
それと、念願の温泉を掘り当てて本当におめでとう。

やばい、考えれば考えるほど涙が……。



本当にこのゲームをやって良かったと思いました。
ありがとう。

――そして明日の世界より。