やっと再プレイできた。
再プレイして感じたのは、この作品は本当に底が浅い。
るーすが元劇作家だからか、書きたいシーンがまずあって、そこから設定や人物相関関係を作った感じがするとよく言われているが、まさにそんな感じ。
重厚に見せかけて、少しでも考察し始めるとすぐに矛盾点や違和感が浮き彫りになる。ハリボテのような作品。
シーンから設定を考えるっていう作家はほかにも大勢いるだろうが、
他の作家はある程度まとまりある小さな設定、
あるいはファンタジックな設定や厨二設定で満足するところを、
この作家は、現実世界での法に当たる特別高等人制度という現実的な設定、
誤魔化し難い設定を作ってしまったがために
墓穴を掘った、という印象。正直ライターの力不足。
EDに関しても曖昧にせずはっきりと結末を示してしまったため、
読み手にゆだねる部分がなくなり、ご都合主義だと感じてしまう。
この辺はC†CやAIRとは正反対だと思う。
全体的な設定として、年10人程度しか合格者が出ない高等人制度。
そんな少ない人数で被更生人全員を監督するなんて不可能。
しかも生活時間制限の義務とか、恋愛できない義務とか、世界から存在を認められない義務とか、
四六時中監視してなければならず、どんだけ手間なんだw
しかも高等人てのは超有能な人たちばかりなんだから、
そいつらをそんな手間のかかることに従事させとくのが国家にとって損失。
まず第一章で遅刻してきたえりが法月に銃殺されるわけだが、
インパクトあるシーンを書き読み手を引き込ませたかったのだろう。
この時点でいくつかの疑問が生じる。
まず、極刑が「世界から存在を認められない義務」である社会、
死ぬより過酷と言われる強制収容所がある社会において、
遅刻程度で銃殺する必要性があったのか?
まあこれは、被更生人の人権や生殺与奪の権利まで自由自在な強い権力をもった特別高等人が、
特別高等人候補生を気まぐれで殺したと考えれば納得はできる。
慢性的に人手不足な高等人の候補生をそんなに簡単に殺すか?
そしてそれを国家は容認するのか?という疑問は残るが。
だが、さらに後の展開まで考えると、法月が賢一だけにはダダ甘で都合よすぎにしか感じられない。
遅刻などより、よほど国家に対する反逆的な行動をとった賢一に対し、
法月はある意味甘い制裁しか加えていない。
たとえば、今年から禁止になった恩赦祭を行ったことに対し、杖で叩く程度。
法典とやらにさちの一日の時間は12時間と書かれ、
申請せずに活動時間を操作してはいけないはずなのに、
特別指導としてさちの活動時間を勝手に削った賢一に警告する程度。
しかも屁理屈でその削られた分の時間を充当し
活動時間の延長を許した賢一やさちに対し、
さんざんさちの腕を折るとか口を縫うとか言った癖に
結局何もせずに去っていく。
まなが南方の国に売られた件に関して、
賢一が法月に対し「ふざけるなっ!」と憤ったのに対し、
説教を垂れる程度。
夏咲を義務に反して抱きしめた賢一に対し、
すぐに殺しはせず、地下牢に捕えておく程度。
そして何より、国家を告発するような演説を行った賢一たちを
すぐには殺さずに、また地下牢に捕えておく程度。
そして最後には、洞窟を登ってきた賢一を見逃す。
FDをやれば、法月は賢一を育て上げたかったことが分かるが、
この作品内だけで見れば法月がヌルくなったようにしか感じられない。
こいつが悪役POV1位?こんな奴より人殺しまくってたりレイプしまくってたりする人が他作品にはいっぱいいるんだがw
正直ゲンハや九鬼先生やクワガタのがよっぽど悪役。
次に第二章。
さちの義務は「生活時間制限の義務」であり、
これは戦争時代に働かないヤクザ達を取り締まるため、
時間の大切さを教えるためにできたとされ、
義務の解消には働いて時間を大切に過ごしていると認められればいい、とされている。
だがさちは働かずラクをしようとしたために、
そのため罰がどんどん重くなり、賢一が担当するころには一日12時間になっている。
そして今でも為替取引なんぞやっている。
ここでまず疑問なのは、いままでの担当高等人はどれだけヌルかったんだ、という話である。
そもそもギャンブルでできた多額の借金を帳消しにする代わりに(この時点で国はどれだけ甘いんだという話だが)、
この義務を負ったのに、ギャンブルの一種である為替をやらせ、罰を重くするだけ、というのは本末転倒。
それこそ銃殺されたり、強制収容所に送られても文句は言えなかったはず。
その後、樋口三郎の残した隠し財宝を探しに行き、見事ダイヤとメモリを見つけるわけだが、
都合よすぎ。
まずダイヤとメモリを三郎が隠したというのは設定として認めるとしても、
正確な隠し場所を指定してない(「山」へ財宝を隠しておく)時点で、
本当にさちと健に見つけさせる気が三郎にあったのか疑問。
しかもそれにもかかわらず結局は見つけてるし。
さらにまなが莫大な金額で南方の国に売り渡される、ていうのがおかしい。
法月がからんでいたとしても、そこらへんを誤魔化してる時点で甘すぎ。
賢一は推測で、
さちに絵を描かせるチャンスを作るため
町にいる適当な外国人を捕まえて、
法月の部屋でわざと状況を話し、それを賢一に盗み聞きさせた。
と言っている。
口座がある銀行の役人が法月だから、億単位の金が動いたのを偽装できたように
書かれている。
でもこれ犯罪なんじゃ?法をつかさどるはずの高等人がそんなことしていいのか?
しかも実際にはいくらで売られたかわからないし。
しかもその後さちエンドでまなが王室付き秘書官とかになってるのは何なの?
さちが絵を描けば、賢一がそれを高い金で買ってやる、
実は賢一はIT会社の社長でそれくらいの金はある、というのも都合よすぎ。
主人公がパーフェクト超人なのは設定として受け入れろ、と言いたいのだろうが、
傍目にはクスリをやっているように見える人間が社長になって、
しかも創業から1年半で上場するような会社にできる、だと?
法月がからんでいたとしても、後付けご都合設定な感が否めない。
マスコミが、さちがまなのために懸命に絵を描くのを取り上げる。
さらにそれには盗作まがいの傷を負っているドラマ性があり
世間は感動しさちの絵は実力以上に評価され絵画ブームになる。
とか法月言ってるんだが。
んな状況になったらまなを南方に売った国の責任が問われる。
そして何より、結局絵は完成しなかったのに、さちの義務が解消されているのには絶句。
次に第三章。
まず「大人になれない義務」と親権者適正研修。これがそもそもありえない。
なんで適正研修は、死人が出るほど過酷?この義務は政府関係者や大企業の上役に重宝されているそうだが、
そんなお偉方を簡単に殺していいの?バッドエンドで京子を殺したい、
3章の中間でダレるのをふせぎたい、がための手段として設定されたとしか思えない。
しかも研修は子供に義務を押し付ける資格があるのか問うもので、
どれだけ国家に役立つ子供を育成できるのか、がスローガン。
認知証明書を子供が書けば免除。
資格があるか否か心配するほど、国は子供の人権を尊重してるのに、
結局国家に役立つ子供を育てられる親を、死者が出る過酷な研修で選別する。
人権の面でもおかしい。
さらに国は、結局子供を国家の役に立つようにしたいのか、
子供を尊重したいのか、何がしたいのかわからない。
前者なら認知証明書なんぞの制度作る必要ないし、
後者ならこんな義務をそもそも制定するのがおかしい。
京子が研修に行くのを賢一が止めるシーン。
賢一は、京子がナイフをもってるので軽犯罪で尋問するとむちゃくちゃな理由をつけ、
ケムリ中毒どうのこうので役人どもに凄む。
それだけで役人は何もできない。
任務を妨害した場合は拘束、またはその場で射殺していいと
法月からお達しを受けているのに役人ヌルすぎ。
さっさと射殺すればいいじゃん。
一番この作品でイライラしたのは、灯花が変貌してシチューを差し出し続けるシーン。
どっちの両親か選べず賢一に決めてもらおうとした意志薄弱な灯花が、
いきなり子供でいい!とか言ってるのはひたすら笑ったw
「その横顔を見つめてしまう」でもいきなり主人公の態度が変貌してイライラしたが、
こっちはさらにイライラ。
何のきっかけもなくキャラの態度が変わるのが不自然すぎ。人間としてあり得ない。
次に第四章。
さちの変貌と同じく、夏咲の態度の変貌には笑った。
暴力的な取り調べと寮の管理人に襲われかけたことで人間不信になった夏咲が、
賢一に抱きしめられた程度で「ケンちゃんが、大好きだよっ!」と法月の前で宣言。
ただただ人間として不自然、としか思えなかった。
最後に第五章。
まず極刑が「世界から存在を認められない義務」なのが意味不明。
多くの人が指摘しているが、国家への反逆を行った人間が主に負わされる義務らしいが、
こんな義務じゃ合法的になんでもかんでも出来てしまうことになる。
ほんとにこの国は犯罪者を取り締まる気があるのか?
あの伏線のために作ったんだろうけど、これが最も矛盾してる。
誰とも目を合わせられず、
人前で言葉を発することも、
人に触れるのも禁止。
目線を合わせた者、
話しかけた者、
触れた者も
同罪で強制収容所送り。
これ監視するのに何人必要なわけだよ。
目線とか監視者の死角で合わせてるかもしれないじゃん。
しかも通行人とか極刑のマーク見つけられずにちらっと目線合わせちゃったらどうすんの?
あんた、っていう呼びかけもだから何?て感じだった。
Ever17とかのトリックには遠く及ばない。
クスリ中毒のトリックに関してもおかしい。
いくら油断したといっても、まともに飯も食べていない人間に倒されるほど法月先生は弱いんですか?
あとさちエンド。まなが王室付き秘書官とかになってて笑えたw
お姉ちゃんエンドに関しても極刑だった姉が秘書の大統領選挙とかワロスw身分隠してwww
一番ムカついたのはキャラの態度が変貌すること。
その理由のない変貌にはヒューマンドラマというよりコメディとしか思えなかった。
考えるんじゃなく感じるんだ、とか言われてるが、
感じるだけでも最後の法月のマヌケっぷり、灯花と夏咲の変貌、
極刑が世界から存在を認められない義務であることには違和感がぬぐえない。
細かいことはあまり気にしない方だが、ヒロインの成長の過程を描かず
唐突にパワーアップしたのはこの作品だけ。
しかもさちが個人的にエロゲー史上まれにみるほどウザかった。
Fateが20万本売れてデータ数3000、クラナドが10万本売れてデータ数2000なのに、
1万本しか売れていないのに(累計では2.5万本位は売れてるんだろうが。ちなみにC†Cは累計5万本)データ数2500ってのは圧巻の一言。
でもまああかべぇ信者は本当にすげえな。
その信者ぷりは尊敬に値するw
暁は時間たってから中央値3も上がったしWLOも1上がったし。
暁なんか管理人さんのテコ入れとか、アンチが先に低得点入れまくった以外で、こんなに安定的に中央値上がったゲーム見たことないわ。
WLOFDに100点が2人、90点以上が9人とかもうね。
2009年作品じゃ、アンクォとかフライアブルハートとかスマガSPとか巨乳ファンタジーとか、データ数150以上なのに100点まだ一人もいない状態なんだけど。
ベストエロゲ2008の2、3、4位独占もすごいな。
しかもLBEX5位、ハルカ6位、戦女神ZERO15位、ef24位とか売り上げも上位、評価も割と上位のを抜いて。暁が23位でefより上てのもすごいが。
このままだとベストエロゲ2010ではRewriteやホワルバ2抜いて、
太陽の子、終末論、置き場、シンセミア辺りで5位以内独占しそうだなw