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ponpoko726さんのさくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-の長文感想

ユーザー
ponpoko726
ゲーム
さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-
ブランド
FAVORITE
得点
100
参照数
874

一言コメント

無限の解釈が可能、間違いなく人生最高の作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

4月13日にプレイを終え、少し時間が空きましたが作品の復習も兼ねてレビューを書かせていただきます。
プレイし終わった後は満足感や充実感に満たされるだけでなく大きな喪失感にも襲われました。
それから毎日、一度たりともさくら、もゆ。のことを考えなかった日はありません。
それほどまで、私のこころに残った人生最高の作品。

攻略ヒロインは4人
今までのFAVOはメインヒロインに力を入れていましたが、今作で
決定的に違うのがサブキャラまで含めたすべてのヒロインのシナリオが高水準です。

物語は輪廻転生とたったひとりを生涯愛し続ける唄と受け止めています。
輪廻転生において重要な起点となる夜の国、もとは辛く酷い扱いを受けてきた芸術一族に生まれてきた
才能のない子供たちが夢で唯一安らげる場所。それをあず咲が応用したものがメインとなる夜の国である。
才能は授かったが同時に呪いともいえる未来へ飛ばされ続ける宿命を背負った彼女が最愛の弟にもう一度だけで
いいから会いたい願いをかなえるためにましろとつくりあげたのが現在の夜の国。
つまり時間軸を移動できる列車が行き交う駅のホームみたいなところでしょうか。
とまあ、いきなり夜の国とはなんぞやと書いてしまいましたが、ようは複雑に世界線が絡み合うなかで各ヒロイン
たちの魔法、夢をかなえる物語。誰一人として不幸になっては終わらない無限ループ、魔法につきまとう代償の連鎖から
抜け出せたとき絡み合ったすべての糸は解け、未来へ進める。
それにあたっての大きな舞台となるのが夜の国であり、そこに暮らす生き物たちと人間との関係。
さらには人の人生の意義、大人になるはどういうことなのかも考えさせられる奥が深い作品として解釈しております。

すこしマイナス要素もありますが音楽、演出、キャラ、シナリオ全てにおいて100点



【ボーカルソング】

さくら、もゆ。
一番お気に入りの曲。私が出会った曲のなかで一番好きになった曲です。
時間を超えてうたわれ続ける唄。
作品そのものを象徴する唄であり智仁とあず咲の魔法で完成した曲。そう聞くと智仁の曲のかなと思う方もいるかも
しれませんがこの曲を初めて歌ったのはハルでありハルルートのラストでも流れるため、私にとってはハルのイメージが
強いです。しかし歌詞はすべてのキャラに当てはまるといえるので自身のお気に入りキャラと当てはめて聴くのも
いいでしょう。

花あかりの時
高音のピアノが奏でるイントロが好きです。
歌詞が丁寧でとても優しい。透き通るような歌声で吸い込まれます。まさにクロEDにふさわしい。
ラストのハーモニーは毎回うるっときます。
聞けば聞くほど好きになる曲

輪廻
第2OPですね。
物語終焉の始まり。ましろが登場した後に流れるので感慨深いです。ようやくここまできたのか・・・と思いますよ。
ぜひ台詞付きで。

終わらない物語やさくら、Reincarnationも素敵な曲ですが特に印象に残った3曲を挙げました。

BGMはどれも世界観にマッチしています。
一番すきなのは、はるのあしおと
ハルのイメージ曲なのでしょう。
これはハルが久しぶりに戻ってきた日の翌日に幼馴染のみんな、十夜やあさひさん含めお花見をするシーンで流れます。
本当は恥ずかしがりやな彼女が勇気を出してみんなとの再会を喜ぶとても素敵なシーンで最初に流れた記憶。
十夜とあさひさんはこの時点は千和たちとは会えないので、これは現実ではありませんがこの時のハルの心情描写が
とても印象的に残っています。
他にも十夜のかわいらしい感じをイメージした春はみじかし恋せよおとめは聞くだけでプリチーな十夜が目に浮かびます。
ボーカルソングアレンジも健在で全くべつものとして楽しめるクオリティ。
演出、音楽関連は安心のFAVOですね!




【キャラ・シナリオ】
物語の復習も兼ねて思い出しながら要所要所でおもったことを書きなぐってます。
妄想も強く出ていますがご容赦を。

千和ルート
不死の生き物との家族愛・・・ですかね。
主人公は基本的に空気。
このルートではヒトデナシという存在や夜の国や芸術一家のことに関してかなり説明が入りますので後々の理解のためにも
丁寧にプレイしてほしいです。
千和がメインの話ですがサブキャラのソルとナハトの魅力もかなり強くほんとにこれエロゲなんですかねw
ボリュームも相当なもので他作品のグランドエンドと間違うほどの出来。千和が好きになったひとはなおさらでしょう。
マイナス要素は千和が大雅くんに告白した際にとった大雅くんの行動。
これには苦言を呈するプレーヤーも多いことでしょう。多くは語りませんが恋愛周りにやや不満。
クロ以外のヒロインにも言えるのですが主人公側がヒロインのことを好きになった時の描写がほぼ描かれておらず
相手に告白されたから好きになった(形として)印象がどうも強いです。
もちろん相手から好意を向けられることで徐々に気になっていくこともありますが、その徐々にがまったくない。
幼いころから一緒でしたがそのころにそういった描写はありませんしね。

姫織ルート
姫織は個性が強く共通ルートでも楽しませてもらえた存在です。
ただ、私はマロ眉が苦手でして、これだけはどうしようもないです。
眉が隠れたように見える遊園地でのCGなんかは本当にただの美少女なんですよねw
話の内容もかなり重いテーマですが姫織の蓄積された緩い印象が若干物語に影を指したか。
ナナちゃん含めた掘り下げがあります。ナナちゃんも結構好きなキャラですが姫織ルートでの最後に彼女がどうなったのか
少々わかりづらかった。列車の外に出たからその役目はなくなり次の存在になるんでしたっけ。

そして、姫織ルート本編とも思っておりますこと
本格的に姫織ルートに入る前に描かれる十夜とお友達のショートストーリー(全然ショートじゃない
正直十夜は癒し萌え枠と思ってましたがこの話でがらりと印象が変わった・・・というよりは彼女の新たな一面がみれた
といった感じでしょうか。
夜の生き物である十夜と人間の子供は無情にも人の子が大人になった境に突然の別れが訪れます。
別れを告げることができなかった彼女の葛藤、その繰り返しを恐れ新たに友達をつくることに抵抗が生まれ元気がなくなります。
そんな出会いと別れを描いたお話しです。
ハルルートの次に泣いた話でしょうか、涙がいくらあっても足りません。
十夜の無邪気な可愛さ以外の一面にも気づけて嬉しい限りです。


ハルルート
個人的、今作No1ルート
いろんな思い出ありますのでどこから感想を書こうか迷います。
彼女はCG枠がクロよりも多く、最初見たときは結構期待していたのですが予想をはるかに上回る出来でした。
クロとハルの2大ルートととる人も少なからずいると思います。
物語の進展はハルが大雅くんに魔法をかなえてほしい(正確には最初はあさひさんですが
魔法をかなえるのに難航すると思いきやあっさりとかなえてしまいます。
しかしそこから急展開で魔法をかなえた翌日ハルは桜の木のしたで死んでしまいます。
それを知ってしまった大雅くんは魔法の銃を使い自身を撃ち抜くことで後悔の過去へ戻ろうとします。
ここから世界線が分かれていきますので注意してプレイ推奨。(もともとネタバレですが
しかし過去に戻ったと思ったが不完全な魔法だったせいで後悔の地点より後にしか戻れないと知った時の絶望感や
ハルがあっさりと悪夢に殺される描写はなかなかでした。ハルはおそらく5回死にますがここで初めてヒロインが身近で
死ぬシーンが描かれるので結構攻めてます。
ヒロインが死に、それを追いかけるために主人公も死ぬなんて展開は珍しいものではないのでしょうがそれでも
深く関わった作品(しかもここまでのクオリティ)は初めてなのでくるものがあります。
全ヒロインに言えることなのですがお互い違う時間軸から集められた関係なのも後々ボディーブローのように
効いてきます。
現在ハルの時間軸から未来のはなし、すなわちハルの幼少期時代の悲惨な回想で歳の離れた大雅くんを好きになり
その果てに得た答えは自身は決して彼と結ばれてはいけない。その果てに待つのは・・・
それが彼女の魔法であり夢の真実。また、大雅くんにとって絶対的存在のクロに引け目や嫉妬をする描写もあり
報われない印象がたびたび残ります。しかし報われないヒロインではありません。
ハルは恥かしがりやですが心の強い持ち主でどんなに大雅くんと結ばれないとわかっていても笑顔でありつづけます。
物語終盤にハルを救うためハルは魔法の銃でハル自身の後悔である過去に戻ります。
これは過去でもあり未来でもあります。
そこでたどり着いた過去を克服し終わりへと向かったと思ったのですがびっくりなことにまだ終わりませんでした。
ここまででもかなりの出来だったのですがこの後の展開について・・・
たどり着いた後悔の地点では大雅くんが娘を誘拐していはハルの母からハルを連れ出し、世界中から逃げ回った先で
エンドと思ったのですがハルは突然頭の病気を患います。(おそらくアルツハイマー型認知症でしょう
これは遺伝的なものでハルの母がおかしくなったのもこのせい。
幸せのさなかに一瞬で人生の底に転落した描写が生々しく現実をつきつけられます。
これは現実世界にも起こりうることで介護していた人も疲弊の果てに自殺や注意散漫で事故死することもあります。
それでハルを残しあっさりこの世を去った主人公。残されたハルはこれでよかった、ようやくクロとの物語が始まると
願うのです。最愛の人と結ばれた人生の果てに待っていた絶望さえも強い心で支えようとしますがクロと大雅くんがみえ
なくなったところでひとりになりたくない、自分も幸せになりたいといった感情が一気に押し寄せます。
おいていかないでと願うシーンは私自身どうにかなりそうでした。

これは実際はハルが夜の国で後悔の地点へ戻る際に選択してしまいそうになった世界線でひとまずほっとできました。(ダメージ
はかなりのもの)
その後ハルはいろいろな扉の前で未来を選ぼうとしますがどれも絶望で、ハルが報われる世界はないとあきらめかけたときに
ハルの母が登場します。登場といっても形そのものはなく、まだ母が病気になる前、ハルを正しく愛していたころに
どうしても伝えたかった想いがこれだけはハルに伝えなければならないとタイムリミットを過ぎた後も夜のなかに残り続けた
ものであった。
ここでさくら、もゆ。が流れたが最後。もう私のライフは0でした。ハルルートが私の中で揺るがない存在になった決定的な
瞬間でした。
母との会話を終え、自身の後悔が変わったハルは最善の未来を選ぶことができエンディングへ

たったひとりを生涯愛し続けると誓ったさくら、もゆ。に相応しい完成度でした。
憎まれやくで終わると思った母の印象ががらりと変わったり、母と娘の親子愛、どんなときにも代償はつきまとい
それを背負い合う優しくも辛い話。
つくづくハルには幸せな未来を送ってほしいと思いました。


実はレビュー書き終わったら全部消えたので2回目なんですよねw
一番書きたいハルの魅力が書けたのでどうしようか迷いましたがやっぱりクロについて書こうかと思います。
ましろもいますもんね!

クロ
彼女以外のすべてを幸せにした果てに最後に残った最愛の相棒を幸せにするルート。物語の集大成です。
クロを幸せにして大団円。
そんなクロルートなのですがハルルートに劣った唯一の欠点。
というより私のミスなのですが、主人公の認識なんですよね。
詳しい説明は省きますが奏大雅は2人存在していて
元祖奏大雅はましろ
今まで私が大雅くんと書いてきたのが後から名乗るようになった少年
大雅くんは千和、姫織、ハル、クロが結ばれる対象なのですが

クロルート冒頭の電話のシーンでクロと電話していたのは後に大雅くんを救うために彼の人生をなぞることになった
元祖奏大雅です。当然このネタバレは後なので当然奏大雅は一人と思いますし
その後のましろとのやりやりとりを見るうちにそっちに引き込まれ彼女との未来をみてみたかったんですよね。
それは大雅が外に連れ出したましろを迎えに行く際に助け出した名もなき少年。その過程で大雅は通り魔に殺されましろとの
未来が絶たれ、名もなき少年とましろのやりとりが続きます。
作中の描写にもありますがぽっと出のモブが偶然にもその場に居合わせたがゆえに大雅とましろの未来が絶たれたと表現されます。
その少年に明らかに女性とわかるCVが突然ついたのも大きくマイナス。
その後名もなき少年は奏大雅と名乗るに至った過程が描かれ、今まで見てきた感動的なルートの数々にいた主人公はぽっと出の
モブであり、それでも彼本人という真実は揺るぎません。
ここの認識の遅れや感情のコントロールがうまくできず大雅&ましろ>大雅くん&クロ
になっちゃんですよね。
クロがましろたちのことを罪として背負い続けず自分の未来を歩んでほしいと願ったところは複雑な気持ちでした。
共通ルートや各ルートでクロはとてもかわいらしく儚い存在で応援したい気持ちでいっぱいだったのですがこの認識のずれの
せいでプレイ当時のクロルートに対する評価が落ちてしまいました。
代わりにましろが大好きになったんですけどね。

それでも大雅くん本人に変わりはないし大きな代償や夜の王、女王などもろもろの伏線を回収しつつ物語は終焉へ
幸せの外に最後に残ったクロを助け出すためにすべての登場人物が協力し合い大雅くんは大きな代償を背負います。
そうです、クロルートの本幹はこの代償も大きなテーマになっていると思います。
何かを得るにはそれ相応の代償を支払う必要がある。クロはいつも代償を肩代わりしていました。そう言った
助け合いの心、なぜそこまでできるのかなど考えることもありましたが、大好きな人のためには当然のとも言える
行為なのかもしれません。ここらへんから大人になり欲望にくるっていた芸術一族だけならず私たちの世界でも大人になる
につれて変わっていく思考と純粋な心を持つ子供との対比を強く感じました。

かなり私の妄想が強く出てしまいましたが・・・

クロに気づいているのに気づかずに一生を終えるという代償を支払い終え物語は大団円へ
とてもつらいことですがクロの9つの命が消える1つ1つの描写をもっと丁寧に書いてもよかったかもしれません。



【まとめ】
なによりも物語のキャラクターたちにお疲れさまという気持ちでいっぱいです。
複雑に絡み合った糸、代償の負の連鎖から抜け出してたどり着いた幸せな最後をみれて本当によかった。

あとこれだけは言わせてほしい。
ましろママ可愛すぎ。
至急、いちゃらぶルートを求む。

多くの人物の一生を圧縮されてぶつけられたような感じでした。それほどまでに内容が濃く、
受け取り方次第で無限の解釈が可能。



この作品に出会えたことに感謝しかないです。間違いなく人生最高の作品に出会えました。
ありがとうございました。