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pon777さんの世界でいちばんNG(ダメ)な恋の長文感想

ユーザー
pon777
ゲーム
世界でいちばんNG(ダメ)な恋
ブランド
HERMIT
得点
90
参照数
533

一言コメント

良質のホームコメディ。個人的にはかなりお気に入りの作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

攻略可能なヒロインは、夏夜、姫緒、麻実、美都子の4人。美都子のシナリオが本筋となっており、他のヒロインのシナリオはその途中で派生していく構成となっている。夏夜、姫緒、麻実の3人は、美都子にとっての障害として扱われ、主人公がその障害に引っ掛かった場合に美都子以外のルートに突入する、という形になっている点が面白い。しかし、その構成上、先に分岐していくヒロインほど物足りなさを感じる内容となっているのも事実である。良くも悪くも、美都子のための作品だといえる。

夏夜ルートは、主人公が不運なダメ男のまま終わり、ある意味バッドエンド的ともいえる内容になっている。魅力的なキャラなのでかなり勿体無い。姫緒ルートは、主人公が一転して超人的な男になり、丸戸史明氏の戯画での作品が好きな人が楽しめそうな内容となっている。ただし、話が短いので物足りない。麻実ルートは、美都子の最後にして最大のライバルなだけに充実した内容となっている。ただし、丸戸史明氏の過去作品の二番煎じ的な内容であり、一番納まりが良い内容となっている分面白みがないのも事実である。美都子ルートは、美都子に感情移入出来るかどうかが全てだと思う。様々な障害を乗り越えて主人公を手に入れた、その美都子の心情描写に魅力を感じれば、その人にとってこの作品はとても魅力的な作品になると思う。

グラフィック、声、音楽、システム、いずれも良好だと思う。ただし、自分は丸戸史明氏=ねこにゃん氏のイメージが強く、絵柄に違和感があった。また、立ちキャラ、演出、設定項目なども物足りなさを覚えた。充分なレベルだとは思うが、『この青空に約束を―』の後にプレイすると物足りなく感じるかも知れない。

この作品は、主人公とヒロインにそれぞれダメな要素を用意しており、その要素を強烈に、そしてユーモラスに描かれているのが面白い。また、タイトル通りNGな恋を描いているのも面白い。自分は美都子の年齢設定に途中まで気付いておらず、社会的にNGな恋だと知った時は笑った。いわゆるロリコン三十路前男の恋愛物語なわけだが、それをここまで魅力的な話に仕立て上げることの出来る丸戸史明氏はやはり凄いと思う。『パルフェ』や『この青空に約束を―』と比べると地味な印象は拭えないが、自分にとってはかなりお気に入りの作品となっている。