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pon777さんのそして明日の世界より――の長文感想

ユーザー
pon777
ゲーム
そして明日の世界より――
ブランド
etude
得点
90
参照数
496

一言コメント

綺麗さを徹底的に追求した作品。その統一感が素晴らしい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は、エンディングが5種類用意されており、それぞれ、夕陽、朝陽、青葉、御波、昴に焦点を当てた内容となっている。全てのエンディングを終えるとアフターストーリーがプレイ出来るようになり、そのルートがこの作品の本題となっている。

ヒロインのルートではそれぞれの抱える問題を扱っているが、昔馴染みである、夕陽、朝陽、青葉の抱える問題が、全て日向姉妹の母親の事故に起因しているところが興味深い。また御波のルートでは、昴の名前についての話や、御波と隕石の意外な繋がりが明かされている。

昴に焦点を当てたノーマルルートでは、「グランドフィナーレ『考える葦』」(以下グランドフィナーレ)へと繋がる「ラストシーン『エデンの東』」(以下ラストシーン)が含まれており、グランドフィナーレと並んでこの作品最大の見せ場となっている。他にも、「灯台にて」や「じいちゃんと2人」など魅力的なシーンが多く、最も見所のあるルートといえるだろう。

個人的には、ラストシーンからグランドフィナーレの間の描写を、もう少し入れて欲しかったと思う。蛇足かもしれないが、写真に写っているその瞬間を見てみたかったという思いがある。

また、グラフィック、声、音楽、演出、操作性、いずれも良好で、全体的にレベルの高い作品となっている。ただし、アルバムとメモリーの使い勝手はあまり良くない。CGがループする上に枚数も表示されないので、1シーンに何パターン用意されているかが分からない。メモリーも1つの画面にまとめた方が使いやすい。他には、ショートカットキーが充実していればうれしかったと思う(最も、マウスでの操作だけで快適なので、特に困る事はない)。

テーマ性が強く、設定上雰囲気も暗いので、人を選ぶ作品だとは思う。個人的には世界が滅びるという設定はあまり好きではない。例え幸せな最期を迎えたとしても、やはりやるせなさを感じる。個人的には、同じく健速氏がシナリオを担当した「遥かに仰ぎ、麗しの」や「こなたよりかなたまで」の方が好みだ。「遥かに仰ぎ、麗しの」のような作品のシナリオをまた担当して欲しいと思う。