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pon777さんのWHITE ALBUM2 ~closing chapter~の長文感想

ユーザー
pon777
ゲーム
WHITE ALBUM2 ~closing chapter~
ブランド
Leaf
得点
90
参照数
1066

一言コメント

冬の訪れから雪解けまでを描いた、長くつらい冬の物語。雪菜の長くてつらくせつない恋が報われた瞬間はまさに感無量。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

攻略対象のヒロインは、麻理、小春、千晶、かずさ、雪菜の5人。
雪菜が本妻的な位置づけとなっており、そこから他のヒロインに浮気する形になっているのが特徴。

シーン回想は、麻理が4、小春が3、千晶が3、かずさが8、雪菜が6(セット版)。
感極まったような、あるいは相手に溺れるようなエッチシーンが多く、あえぎ声が目立つ。
設定出来るので大した問題ではないが、ヒロインよりも主人公のあえぎ声がやかましいのは正直どうかという気がする。

シナリオ的には一長一短あるものの、涙腺を刺激する感動的なシーンがやたらと多いのはさすが。
号泣の妙手、めんどくさい女を扱えば業界随一の丸戸氏の面目躍如といったところかと。

麻理、小春、千晶に関しては、春希の逃避相手という形なのが残念。
千晶はともかくとして、あとの2人は自分を取り戻してからの春希と恋愛させて欲しかった。
まあその場合はかずさと雪菜以外にブレることはないので仕方ないだろうが。

本筋となる雪菜との関係修復の物語は、丸戸氏ならではの優しさ溢れる内容で名シーンが満載。
依緖の携帯での雪菜へのメッセージからコンサートまでの流れはまことに素晴らしい。

そして本題となる最終章ではやっと真打かずさが登場。
しかし時すでに遅く、春希が自らの恋心を優先することは許されない状況になってしまっている。
それ故に、かずさを過去のものに出来ず、雪菜と離れることも出来なかった春希は、報いを受けることとなる。
春希の行為は最低だが、2人の想いは純粋ゆえにつよく、それだけに時機を逸した再会しか出来なかった2人が憐れでならない。

その辺りの状況作りこそが見どころといえるだろうが、かずさを選ぶことが間違いでない展開も用意して欲しかった。
もしラストに、冬馬曜子のコンサートで再会出来るシナリオが用意されていれば歓喜したことだろう。

個人的には、優しい世界を堪能出来る「パルフェ」「この青空に約束を-」「世界でいちばんNGな恋」の方が好み。
けれども物語への引き込まれ具合、作品的な凄みでいえば、まぎれもなく丸戸氏作品ナンバーワンだと思う。


ヒロインについて

麻理
仕事の出来る格好よい女性だが、恋愛ごとでは乙女していて可愛らしい女性。
春希が大切な人と大切になった人のどちらをも裏切り傷つけてしまう展開の話。
丸戸氏の年上ヒロインでは、「ままらぶ」の涼子さんに次ぐ魅力的なキャラだと思う。
それだけに春樹の逃避相手という扱いなのが惜しまれる。

小春
かつての春希にそっくりな性格で、かなりのお節介焼き。
大切な人を裏切った者同士が傷を舐め合う展開の話。
いつもの丸戸氏主人公と違い、主人公が積極的に行動しないことにやきもきさせられる。
願わくば、このキャラは「パルフェ」的な作品に出演させて欲しかった。
マイナスから始まる恋のヒロインとして、「パルフェ」の玲愛に匹敵するキャラになったと思う。

千晶
雪菜とかずさも大概厄介な女だが、それに勝るとも劣らないぐらい厄介な女。
春希が大切な人を裏切り、大切になった人に裏切られる展開の話。
一切の前情報なしでプレイすれば、その展開と「もしも」を夢想する余地がないほどのハマリ具合に驚かされると思う。
あと「痕-きずあと-」プレイ済みだとうれしいシーンがあるかも。

かずさ
春希にとってのナンバーワンで、放っておけないめんどくさい女。
逃避行する展開の話と、かずさのために春希がほかを犠牲にする破滅的な展開の話がある。
逃避行する方はありふれた悲恋モノの内容だが、場面場面の描写が見事。
かずさとの別れからコンサートまでのシーンはまことに素晴らしい。
ただしエピローグが飛びすぎており、プレイ後の余韻はいまひとつなのが惜しい。
壊れた春希が立ち直るきっかけとなる、雪菜の言葉に春希が号泣するシーンで締め括られていれば最高だったと思う。
破滅的な方は、春希が今まで築き上げてきたものを自ら壊していく様が実に痛々しい。
雪菜の大団円の後にプレイするとその落差が衝撃的。
願わくば、かずさとの完全無欠のハッピーエンドシナリオも用意して欲しかった。

雪菜
いつまでたっても春希のオンリーワンになれない気の毒なヒロイン。
めんどくさい女を放っておけない極度のお節介焼きに惚れたことが運のつきといえなくもない。
雪菜が親友との絆を取り戻そうと奮闘する展開の話で、作品唯一の完全無欠のハッピーエンドを迎えるシナリオ。
ラストで春希に本音でぶつかり、長年に渡る、つらくせつない恋が報われるシーンはまさに感無量。
大団円で締めくくりたい人は最後にプレイがオススメ。