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pon777さんの死神の接吻は別離の味の長文感想

ユーザー
pon777
ゲーム
死神の接吻は別離の味
ブランド
ALcotシトラス
得点
80
参照数
1056

一言コメント

おるごぅる氏らしい魅力溢れる作品。ただし、物足りなさも感じられた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

攻略可能なヒロインは、ほのか、雫、琥珀の3人。琥珀がメインヒロインで、ほのかと雫を攻略後に琥珀ルートをプレイ出来るようになる。選択が1回しかないので、ストーリーに集中出来るところがうれしい。

ほのかルート
性格の良い可愛らしい同級生。優等生キャラ。少々ズレたところがあり、付き合い出してからが面白い。また、ほのかの父親が良い味を出しており、2人のやり取りが実に微笑ましい。ストーリーは平凡だが、登場人物のやり取りが一番面白いシナリオとなっている。

雫ルート
屈折した妹キャラ。『うちの妹のばあい 純愛版』の優香を髣髴とさせるが、優香と比べると色々な意味で物足りない。ストーリー的にも描写不足な気がする。

琥珀ルート
ミルフィ曰くクーデレキャラ。このルートでは主人公の心情の変化がしっかりと描かれており、なかなか感動的な内容となっている。このルートでの主人公の心情の変化、そして主人公の決意が自分にとって心地よく感じられた。それだけでもこの作品をプレイした価値はあったと思う。ただし、エピローグはもう少しちゃんとした描写が欲しかった。

ミドルプライスなので仕方ないかもしれないが、どのシナリオも話が短く、描写不足が目立つ。特にほのかと雫の告白を主人公が簡単に受け入れている点に違和感を覚えた。この作品の主人公は、子供の時の傷が癒される事なくもがき苦しみ、死を望んでいる。ほのかと雫が、主人公を過去の呪縛から解き放つかけがいのない存在になる為には、もっと強引でかつ強烈なアプローチが必要だったように思われる。

ストーリー的には物足りなさが残るものの、ヒロインの設定におるごぅる氏らしさが滲み出ており、3人とも魅力的だった。登場人物のやり取りも面白く、特にほのかの父親と白猫のミルフィが良い味を出している。おるごぅる氏のテキストが合う人なら問題なく楽しめる作品だと思う。