丁寧な作りの良作。キャラの魅力が高め。キャラや設定を活かし切れていないストーリーが残念だった。
北都南さん演じるヒロインと世界観に惹かれて購入。その設定から冒険物としてのストーリー展開に期待していたのだが、いざプレイしてみるとあくまでも恋愛がメインだった。ジャンルが「4人の姫が入り乱れるファンタジー学園ラブコメディADV」となっているので間違ってはいないのだが、何だか勿体無い気がする。
共通ルートに関してはかなり良い出来。全体的にあっさり目ではあるが、仲間との触れ合いや賢竜大祭を巡る陰謀などが丁寧に描かれている。ストーリー的魅力もキャラ的魅力も高く、ダレる事無くプレイ出来る。
ただしストーリー的に期待通りだったのは共通ルートまでで、個別ルートに入ると後日談的な内容になってしまう。賢竜大祭の事件が一段落付いた後、更なる大事件に巻き込まれていく事を期待していただけに、拍子抜けしてしまった。
ジルルート
身分違いの恋の話。他のルートにも言える事だが、本筋を投げ出して唐突に恋愛話になった感じ。目当てのヒロインだったので最初にプレイした事が裏目に出た模様で、失望感が大きかった。恋愛物語としては悪くない出来だが、全体にあっさりしていた気がする。キャラ的には期待通りだったのでその点は満足。
マリールート
母娘の絆の話。元々物語の中心に関係のないキャラなせいか、一番外伝っぽい内容。何でメインヒロインにしたのかが謎。ライカの方がヒロインに相応しいし、別に他の3人だけでも構わなかった気がする。とか言いつつ、話自体は結構お気に入り。正しいかどうかはともかく、マリーの決断にはグッとくるものがあった。
レンルート
父娘の絆の話。個別ルートに入ってからの犬っ娘ぶりにびっくり。ぬいぐるみにもびっくり。そして両親の話にじんわり。共通ルートで期待していた路線とは全然違うが、これはこれで楽しめた。老師と父親が良い味を出している。
珠姫ルート
神竜の話。唯一設定を活かした内容。ヒロインとの恋愛物語としては一番盛り上がる展開だが、作品全体のフィナーレとしてはちと弱い。レンの出生の秘密とかジルの能力の覚醒とかが、メインストーリーへの伏線だと思っていたので肩透かしを食らった気分。集大成的な内容のトゥルーストーリーを別に用意して欲しかった。
あくまでも勝手な想像に過ぎないが、当初の構想とは全然違う物に仕上がっているのだろうと思われる内容だった。共通ルートの路線のまま最後まで突っ切ればかなり面白そうだっただけに、個別ルートで単なる恋愛物になっているのが残念でならない。
もっともどのルートもキャラ的魅力は高く、じんわりくるシーンのあるところが魅力的だった。特にマキナさんとおかみさんのキャラは素晴らしいと思う。マキナさん辺りはファンディスクで対応して欲しかっただけに、活動休止が惜しまれる。
Hシーンは1人3回ずつ。オーソドックスな内容で、最近のイチャラブゲーとかと比べると大分大人しい。フェチ要素や強烈なバカップルぶりに期待すると物足りないかもしれないが、作風にはよく合っていたと思う。
他の部分はとても良い出来。独特の絵柄に加えて塗りも丁寧。声は豪華だし、音楽も良い感じ。挿入歌がイベントシーンを効果的に盛り上げている。システムも快適で、オートとショートカットキーの使いやすさが抜群。設定項目の豊富さも素晴らしい。
全体的な感想としては、シナリオゲーとしては大分物足りない出来ではあるものの、キャラゲーとしてはかなり上質な部類に入ると思う。心の暖かいキャラが多く、雰囲気がとても魅力的だった。キャラ目当てにプレイする分には楽しめる作品だと思う。