吸血鬼物の設定に惹かれたことと、官能小説家による美少女ゲームがどういうものか興味があったのでプレイしたのだが、物足りなかった。
グラフィックは美しく、音楽も良い。作品の雰囲気自体はなかなか良い感じに仕上がっている。システムは、文字が小さいので目が疲れる。クイックセーブがなく、セーブ画面の使い勝手もあまり良くない。
シナリオは、オーソドックスな内容で、盛り上がりに欠ける。この作品の設定で重要なのは、ヒロインが堕ちる過程と敵の妨害の2点だと思う。しかし、どちらもあっさりしていて物足りない。ヒロインが堕ちる過程についてだが、吸血鬼の能力とやらで実に簡単に堕ちてしまう。敵の妨害についても大した妨害がなく、実にあっさりとしている。登場人物が、敵、味方ともにおとなしい性格をしていることが根本的な問題だと思う。残念ながら、官能小説家を起用していることが弊害となっているように感じられた。漫画、ライトノベル、美少女ゲームなどに慣れた人だと、おそらく物足りなく感じられると思う。
官能小説は、全てを文章で表現しなければならず、表現力こそが重要だといえる。そして、ストーリー性よりも性描写が重要視される。それに対して美少女ゲームの場合、グラフィック、演出、声、音楽、といった他の要素が加わるので、全てを文章で表現する必要がない。表現力よりもストーリー性やテキストの面白さが重要視される傾向にある。要するに、官能小説家が美少女ゲームのシナリオを担当してもその実力が存分に発揮されることはない、といえる。シチュエーション特化型でノベル形式の作品にでもしない限り、官能小説家の持ち味が活かされることはないように思う。