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plantagenetさんのナツイロココロログの長文感想

ユーザー
plantagenet
ゲーム
ナツイロココロログ
ブランド
Hearts
得点
95
参照数
390

一言コメント

「しっかり者の妹」と甘えたがりの妹が両方そなわり最強に見える。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイしたルート
久遠(→FDアフター)→小都音(→FDアフター)→鈴(→FDハーレムルート2つ→FDアフター)

まず、序盤にある自宅での兄妹の会話シーン(部活をどうするかの辺り)で心をつかまれた。
鈴の絶妙な心配り、これほどまでに心にすっと染み入っていくことは他のゲームでは無かった。
何故なのか、説得力ある説明はできそうにないが。
もうこの時点でこの先への期待度は否が応にも高まり、そして超えて行ってくれた。
鈴に叱られたりジト目で見られたりするのは至上の幸福にも感じられる。頼まれた買い物は失敗しよう。
リンが徐々に自らの思いをさらけ出していく様に、胸が震えたがこれは一体どう表現したものか。
兄がAIでなかったことに気づく前後の反応は極上である。
その直前の「何言ってるのこの人?」という兄による的確な感情の読み取り、恐れ入る。
こうした描写を支える電脳空間独特の雰囲気やBGMにも非の打ち所がない。
洗濯物、着替え、お風呂、過去の体験など基本をしっかりかつ豊富に押さえてくれたのも感謝しかない。
一人だけ幼少期の立ち絵まで用意されており、まるで頭が上がらない(本編ではなくFDで初出だったかもしれない)。
鈴がずっと秘めていた思い、これを悟らせずにのんきに他のルート(FDのアフターストーリー含む)をプレイできるようになっている心折(hurtful)設計。
タイトル画面のBGMは夏の解放感とこの上なく感傷的な要素を併せ持ち、なんかもうすごい。
先程から本作に対する崇敬を全然上手く表現できていなくて申し訳ないが、プレイから1年以上が経過し記憶がだいぶ薄れているためこれ以上語るのはやめておく。
以前は100点にしていたが、これを超えるゲームを追い求めていくつもりのため満点は避けることにした(全作品で5点引き下げ調整)。

鈴以外のルートについても少し。
久遠:二面的な態度から本心をうかがいながら楽しむというこのゲームの強みが発揮されていたように思う。お父さんは見切りすぎである。
小都音:呪縛が解けるシーンは、世界観と題材を上手く活かした印象に残る良演出。性格の変化には肯定的な感想を持った。

鈴のシナリオを担当したライターは、仙道佳帆さん(本人のツイッターで確認)。
もっと妹について書いてほしい。そう思ってこれまでに手掛けられた作品を調べてみると、全く異なるジャンルのゲームばかりで笑ってしまった。
素晴らしいお話をありがとうございました。