呪われた青春を送る日々。
今作では同盟のメンバーの過去と、宮、央輝、惠、真耶の4人に焦点が当てられ、物語が展開されます。
時系列的には智の愛奴を懸けたレースを終え、しばらく時間の経った頃からです。
各√ごとで視点が変わり、取り組む問題もかなり変わっています。
演出も無印版より強化され、央輝と惠の異能発動時のカットインも追加されていて、細かい部分に凝っているのが良かったです。
無印の時同様に、読み手を引き込む描写が多く、夢中で読み進めました。
【個別√】
まず1章の宮和√では、宮の家庭に関わる問題に立ち向かいました。
無印の頃から、宮のさり気ない智への気遣いが描写されていましたが、今作では更にそれが増え、より魅力的に映ったように感じます。
呪いを持つ智達と、呪いを持たざる普通の人という溝がありながらも、学校での出会いという縁から距離が縮まっていくのは、まさに話の本筋にある"絆"を表現しているものだと思います。
2章の央輝√では大陸系の組織との因縁、また無印では見られなかった央輝の可愛さが描かれていました。
央輝は家庭の事情もあり、家族との関りも皆無で、例え仕事上の関係であっても常務を大切に思っていました。
普段は孤独に生き、周りとの過度な交わりを断ってきた央輝が仲間の存在を受け入れていく、その過程を描いたのがこの章だと思います。
3章は惠の呪いを乗り越える事が話の主題でした。
惠の持つ病気と向き合う中で、人の命の価値について考える葛藤が印象的でした。
特に最後の場面、智が三宅に容赦なく攻撃した場面は、少し恐怖を覚えつつ、覚悟を決めた智の強い意志が伝わってきました。
4章~終章は智と真耶が互いにぶつかる描写が多数あり、互いに想い合っている、そして希望と絶望が紙一重である事を強く描いていました。
惠も智との出会いによって救われ、その事がとても嬉しく思いました。
呪いによって自身の事を離せなかった惠が初めて、本音で智と話し、涙していた場面はこちらにもその想いが伝わってきました。
幾つもの世界を観測し、「そして僕らはまた出逢う──」この言葉に全てが集約されています。
同盟の日々がこれからも続いていく、希望のある締め方で、とても良かったです。
無印で謎だった事も回収し、読後感も最高でした。