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pixeliluさんのコンチェルトノートの長文感想

ユーザー
pixelilu
ゲーム
コンチェルトノート
ブランド
あっぷりけ
得点
86
参照数
50

一言コメント

皆で絆を紡ぐ物語。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

元々関わっていた仲、学園で過ごすにつれて深まっていく仲、人との絆が色濃く描かれていた作品です。
暁WORKSの作品のように、日常の中で熱い闘いが繰り広げられる事もあり、それを通して登場人物達も更に成長していく過程も良い物でした。
顔アップで映し出されるカットイン、完全にるい智で能力を使用するシーン、コミュでアバターを召喚するシーンと一致しました。こういう細かい部分が凝っているのは個人的にとてもプラスです。

この作品は特に、登場人物達の個性が強く、日々の出来事を乗り越える中で縁が繋がっていく事が印象的です。
不運な事でも縁があり、複雑的に繋がりが出来ています。

【個別√】
和奏√でのソフトボールの試合、特に生徒会長と理事長の莉都を相手にした戦いは、互いに全力を尽くした印象的な場面でした。
本筋の運気に関する事からは離れ、和奏個人の問題に取り組んでいくこの√も、人との縁を感じられる良いものでした。

白雪√では神凪家、東条家、南条家の関係性が判明し、各家の因縁なども描かれました。
生徒会長が神凪の事を嫌っている理由や、麻里香が白雪の事を避けていた理由も明らかにされました。
他の√と比較して、人間関係の拗れ、経済に関する黒い事が多く、暗い内容だったように感じます。
それでも最後には白雪と麻里香は関係を修復する事が出来、進矢も再開を果たす事が出来たので、読後感はかなり良かったです。

星華√も街の歴史に関わる部分が多く、問題に対処していく中で互いに認め合う姿は清々しいものでした。
この作品屈指の力を持つ星華と、不運ながらも頑張ってきた進矢の2人の姿は良かったです。

莉都√は地中の空洞に閉じ込められ、極限状態に陥っていた場面では、主人公の進矢と莉都が感じる恐怖がこちらにも強く伝わってきました。
BAD ENDでも地中に落ちる事がありましたが、この場面と違い2人であった事が大きかったように思えます。
脱出してからも月光館の小夜璃さん、同じボランティア部のメンバー、そして友人の陽太や上杉、先生も見舞いに来ていて、タイトルにある皆で紡ぐ物語である事を実感しました。
独りでは何かを成し遂げられなくても、2人なら、更に数が増えれば、それは束ねられた折れる事のない矢となり得ます。
主人公の名前も進矢である事から、諦めずに前を向いて進み続ける事を意味していると思いました。

莉都√の半ば、並行世界らしきものを見た時の恐怖はとんでもなかったです。
あの世界でも陽太、上杉、クラウスの3人は良い友人で、深弥先生の生徒を想う心にも胸を撃たれました。
最後の終わり方を考えるに、コンチェルトノートはタマと進矢、莉都の3人を中心とした物語です。
1人でも、2人でもなく、皆で紡ぐ物語、それを描き切っていたと、そう思います。