悪業には悪業をもって返される因果応報の世界を、寝取られを使って即時的に描いた作品。
この作品は、主人公とその恋人であるメインヒロインとの関係が、最初から固まっている作品である。
ただ、それと同時に魅惑的なサブヒロインが、主人公の周りに数名登場するという作品でもある。
エロゲというのは、基本的に男性中心の妄想の塊であり、
上記のような設定であれば、出てくるヒロイン達をつまみ食いして入院生活満喫しました~
なんてのは、エロ主体の作品ではよくある話だ。
その一方で、恋人であるヒロインが他の男をつまみ食いしようものなら、
ビッチだの裏切りだのと叩かれてしまうわけである。
この作品は、そんな妄想世界の不条理に切り込んだ作品であり、手っ取り早く言ってしまえば、
・不倫は悪業
・ヒロインの気持ちを踏みにじるのは悪業
という価値観を元にした世界である。
ただ、そんな貞操観念そのままではエロ主体作品としては成り立たないので、
因果応報の考えに則り、悪業には悪業=大事な恋人が寝取られる、となっている。
よってこの作品は、主人公が不倫なりヒロインを邪険にしなければ、
主人公に災いはなく、無事退院まで漕ぎ着ける事が出来るのである。
つまり、作品の目的は寝取られでありながら、主人公の目的は寝取られを回避する事であり、
この目的のズレが、作中の展開に様々なバリエーションをもたらして、これが面白さを引き出しているように思う。
この作りは、凌辱系古典作品『脅迫』の寝取られ版といった印象で、
寝取られシーンに至るまでの、主人公を含めた様々な人の思惑が入り交じる展開が、各シーンを盛り上げている。
ただ、そんな因果応報が根底にある作品だからこそ、気になる点がある。
それは、主人公が悪業をしていないにも関わらず、恋人であるヒロインが奪われる展開が2つあり、
その際に主人公は復讐を心に決めるわけだが、その場面が描かれていないのだ。
悪業には悪業をもって返す。
ヒロインを拉致強姦した不良達には、凄惨な死を遂げさせる。
別の男と不倫してしまったヒロインには、その妹を犯し尽くす。
誰得と言われようが、主人公が復讐として思い描いたこれらの行為を描ききってこそ、
この作品の因果応報ぶりは、より際立ったものになっただろう。
そこを徹底できなかったのが、この作品の非常に勿体無い部分だと思う。