改めてエロゲというインターフェースの凄さを思い知らされた。
「エロゲは総合芸術」という言葉を実感した。美麗なCG、印象的な音楽、臨場感のあるボイス、詩的なテキスト、そして何よりこの長大なシナリオ。このすべてでもって生み出される圧倒的な没入感。谷崎潤一郎は『細雪』で、姉妹の生活を微に入り細を穿って描写することで読者を感情移入せしめた。シナリオが長大であるということは当然プレイヤーが登場人物達と向き合う時間が長いということであり、すなわち長大なシナリオはただ長大であるということだけで作品を名作たらしめることがある。しかし、それを先述した要素を高い完成度と両立して為すことは、小説にも、漫画にも、アニメにも、ドラマにも、映画にも、到底できることではない。それができるのは、エロゲのみである。その意味で、私はこの作品にエロゲというインターフェースの極北を見た。