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pi-toroHcさんのアマカノ2の長文感想

ユーザー
pi-toroHc
ゲーム
アマカノ2
ブランド
あざらしそふと
得点
85
参照数
1919

一言コメント

特定ルートの前半以外ほとんど緩急がないが、丁寧に味わえばヒロインの特徴に沿って少しずつ変化していくのを楽しめる良い作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず公式HPで見どころとして挙げられてる各種機能について

・E-mote
いろんな作品でもうすっかり慣れ親しんで、当たり前になって来てる感は否めない。
そこまで動かしているかと言われると…目パチ、口パクくらいならまぁ普通では?

・アマカノグラフ
前作から引き続きのようだが、前作未プレイのため比較はできない。
しかし、それぞれのタイミングでヒロインが主人公のことをどう意識したがが分かりやすい。
同時に結灯のような娘の場合、一体何が起こっているんだ!?と引き込ませるエッセンスとしても効果的だと感じた。
ちなみにこれのおかげで結灯を真っ先に攻略。
あと付き合い始めてからもぐんぐん上がる数値を見てどこまで上がるのか、その時どんな心境を語ってくれるのかと楽しみにしてしまった。

・おあずけモード
辛抱たまらん。修行僧向けのとても罪作りな機能。

・朗読機能
実況者のツッコミが入らない実況プレイ動画を見ているようだ。私には不要と感じた。




各ヒロインについて(攻略順)

・黒姫結灯
正直いきなりな展開に唖然とした。
しかし、主人公はよくぞめげずに追っかけ続けたなぁと感心した。(選び続けたのは私だが)
好きと嫌いは表裏一体で、真に好きの反対は無関心というが、まさにその通りで拒絶から恋に落ちるまでがなかなかハイスピードで見ごたえがあった。
アマカノグラフで甘え度100%になった時のセリフを聞いた時はガッツポーズを決めたほどに、心の動きがドラマティックでとても面白い。
さらにその後放置したらどうなるんだろうと様子を見ていたら、まさかの逆告白。
この時2通りの告白パターンがあることを知らなかったので、驚きとともに謎のしてやってたり感があった。
告白シーンのクライマックス演出も申し分ない。

彼女のお話はとってもわかりやすく、付き合うまでは、彼女自身が嫌悪する本当の彼女を主人公が受け止められるか、そして付き合い始めてからは、本当の彼女を彼女自身が受け入れ、さらけ出せるかというもの。
その目的に従って話が進むが、付き合い始めるまでの前半は感情の動きが目まぐるしく、緩急があったのに対して後半は変化が少しずつなので、1回目は少し退屈に感じたほどだった。
しかし、下記2ルートをクリア後に改めて主人公から告白するパターンから後半を読み直してみると、その少しずつの変化が心地よく感じた。
秋→冬への変化の急さの対比にもなってるのかな?

分かりやすいテーマと前半のドラマティックな展開、そして後半のゆっくりと着実な変化、なかなか読みごたえがあり、良かったのではないかと感じた。
あとやはり、糖度は非常に高い。もちろんこれは全ヒロインに共通しているが、お気に入りヒロインとのイチャラブは特に甘く感じるもので、そういう点からも私は結灯をこの作品における特別なヒロインとして見ていたんだなと感じた。


・蔦町ちとせ
このルートは本当に物語の起伏が少なく、適当に読み飛ばしてしまうと後に何も残らないお話しだなと感じた。
幼馴染が否応なく訪れる関係の変化を目の前にしたとき恋に気付く展開は結構使い古されたモノであると思われると同時に、卒業によって訪れる関係の変化に対する不安というのもとてもありふれているため、いろんな作品でいろんな経験を積んでいるほど、読み進めるうちに退屈感に苛まれるのではないかと感じた。

ちとせというキャラクター自体に特別な魅力を感じられれば、ある種このありふれた展開も、王道だからこそ良いと言えるのかもしれない。
私は残念ながらそこまでの満足感を得られなかった。
しかしながらこの初めから終わりまで少ない変化を少しずつ追っていく展開を知ったからこそ結灯ルートをもう一度やり直してみようという気持ちになれたので、そういう意味では良かった気がする。


・氷見山玲
まず、立ち絵のデザインだが、ちょっと陰方向に寄せすぎなのでは?と感じた。
クールと陰は似て非なるもので、少し味付けを間違えると魅力を大きく損なうことになってしまいかねない。
一枚絵ではそこまで違和感を感じることがなかったが、作中一番多く見るであろう立ち絵で違和感を感じてしまったのはちょっといただけないなと感じた。

お話としては、このルートも主人公がとても頑張った。
かなりのマイペースで感情表現に乏しいヒロインに積極的に語り掛けて徐々にその気にさせる高難易度ミッションに果敢に挑んでくれたおかげで無関心→興味→恋までもっていくことができた。
もちろん家族として関われたからできた部分もあるが。

このルートは無関心から恋まで駆け上がるので変化という点ではそれなりに大きいはずなのだが、いかんせんヒロインがとてもクールなのであまり起伏がないように感じる。
付き合い始めてからは、変わっていく自分と周囲の関係のお話しになり、ネガティブ要素として弱くなった自分の話が出るが、いかんせんクールなので大した問題にならずあっさり主人公が「新しい自分」という答えを用意して終わる。
おかしいな、もうちょっとドラマティックに話を作れそうなテーマなのにと少し残念に感じた。

しかし、玲で特筆すべき点があるとすれば、なんといってもエロい。普段クールな分そう感じるのかもしれないがめちゃめちゃエロい。
修行僧モードならぬおあずけモードでプレイしていたので、回想モードでいろいろ爆発した。



総括

どのヒロインもモラトリアム特有の感情の動きをメインに据えており、主人公の言動も良い意味でなかなか若さ溢れる感じだったので学園モノでしか成立しえない、この作品に合ったストーリーだなと感じた。

それにしても、主人公はいろんな意味で頑張った。
拒絶された結灯を執拗に追いかけ、捉え方によってはめちゃめちゃ塩対応な玲に必死に語り掛け、恋愛の進め方に戸惑うちとせとのセックスを限界まで我慢し、物語上のネガティブ展開を生みやすいコミュニケーション齟齬が生まれないように細やかに気を使い、スキのないクサセリフを随所に挟む。
なかなかここまでの主人公はいないと思われる。
少々真面目が過ぎて笑いがないところが玉に瑕だが。

まぁそんな冗談は置いておくとして、気になるのはやはり、起伏の少なさであると思う。良く言うとHPの見どころの通り丁寧なのだが。
車の運転で高速道路を長距離運転したのちに一般道を走ると60kmがとても遅く感じるように、いきなりのドラマティック展開に体が適応したことでその後の展開、他ヒロインの物語の起伏の少なさが一層気になってしまったのかもしれない。
しかし、逆にこの少ないながらも確実に少しずつ変化、前進していく関係、物語を丁寧味わえばとても満足できる、あるいはもっと続きが欲しくなるのではと思われる。
そして、いわゆるイチャラブゲーは元来ヒロインとの甘い日々を唯々堪能するものであるので、そういう意味においてこの作品はコンセプト通りに作られたとても良い作品だと思われる。

最後に、結灯の存在を無視できるほど他ヒロインに入れ込んだ場合は別だが、いわゆるイチャラブゲーというジャンルにおける黒姫結灯のキャラクター性を受け入れられるかどうかでこの作品に対する評価は大きく変わるのではないかと感じた。