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persueさんのDiaboLiQuE(デアボリカ)の長文感想

ユーザー
persue
ゲーム
DiaboLiQuE(デアボリカ)
ブランド
ALICESOFT
得点
90
参照数
1535

一言コメント

時を超えひたすら一途に求めあう、正に純愛物語。複数人『攻略』の場当たり的なカップリングストーリーに飽き飽きしている人に特にお勧め。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

≪総評≫
 圧倒的な力を背景に人間の上に君臨する、人々から常に恐れられる『デアボリカ』の世界における、一人のデアボリカと一人の少女の、一途でひたむきな純愛物語。純愛物語といっても、甘い蜜月のようなストーリーではなく、ハードな展開によるシリアスで退廃的な雰囲気の中で綴られるストーリーであり、死別という概念は無視できない構成となっています。しかし、そんな影を落とす中、主人公のアズライトと想い人レティシアを中心とした、本当に純粋で一途な愛情が、物語全体を心温まるものにしてくれています。エロゲーというより18禁ゲーであり、プレイ後には溜飲が下がり、劣情を忘れ、オレもこんな恋をしてみてー、とそう思えるような作品です。個人的には、純愛物語として名作。

≪シナリオ≫
 まず独特の世界観や用語の慣れが必要になり、次第に世界観が開けるまでは伏線として処理せざるを得ないやりとりが多かったような気がします(私が全て理解できたのが最終章でした)。そういう意味ではストーリーの背景を知っている2週目の方がより理解できる構成と言えるかもしれません。
 しかし、あくまで『理解』です。このシナリオは、輪廻転生を上手く使ったダイナミズムのある構成とその場面場面における一途な思いからくる共感、つまり情緒的な側面をフィーリングで感じることができるものなので、特に気になりませんでした。ちなみに3EDの一本道です。

 コマンド形式のADV風ノベルだと思います(ADVとノベルの厳密な区別はよくわからないです)。『見る、話す、考える、移動』などを選び本筋に合った選択肢が物語を進めていく一昔前の懐かしいやり方。古いといっても、『見る』では話し相手の様子の変化が伺え、『考える』では主人公(主人公でないことも多いが)のその時々の心情を覗けますし、この形式は結構味があってよかったです。特に、3章では『移動』が絶妙な間を作っていたと思います。しかし、戦闘におけるコマンドは、プレイヤーは立ち絵と背景だけでは何していいか基本分からないので、堂々巡りとなりやすく、作業感が否めませんので、この部分が少し物語の足を引っ張っていたように個人的に思います。
 
 『デアボリカ』はフランス語で『悪魔のような、残酷な』という意味であり、公式サイトのゲーム紹介でも「殺戮、怠惰、殺戮、怠惰....それがお前だアズライト」という表現がなされており、ダークな展開が予想される第一印象を受けます。しかし、そういった雰囲気を持つシリアスな展開を基調としながらも、どこか夢の中でされるような純粋な(どなたかの感想の中では少女マンがのようなという表現がありましたが、確かに同感です)恋慕の情が、すれた大人の感覚に清涼剤としてしみ込んでくるような純愛物語が主なウエイトを占めています。なので、そこまで身構えてプレイする内容ではなく、結構短めのストーリーでですし、何か心が乾いてきたなと思ったときに比較的気軽にプレイできるものではないかと思います。
 
 あと、印象に残ったシーンを幾つか。

・主人公とレティシアの幾つもの時を超えようやく恋人としての一歩を踏み出したシーン。言葉はいらない、さあ抱いて抱かれよう、というイメージで、静かにビジュアルのみでその過程を追います。SEXをしたというより『結ばれた』という印象が残ります。

・『消える』シーン。正直、喪失感ゆえの鳥肌が立ちました。いい演出です。

・影のトゥルーED。スタッフコメント欄で本当はトゥルーにしようと思っていたとされている、ハッピーじゃないほうのED。この作品の雰囲気に合っていました。

≪音楽・声≫
 BGMで印象に残ったのは、背景にマッチしていたパイプオルガン系のアリアのテーマ。声は冒頭に火炎王の(イメージとは合わない)声がある他は声なし。Voice付きだと確かにキャラクターが印象に残りやすいし、エロいですけど、無しでも小説を読む時みたいに脳内で充分補完していけるものですし、無いなら無いでこのゲームのように楽しめるし、そこまで必要なものとは思えません、個人的に。(コストがかかる、シナリオ変更等の融通が効かなくなるまたはスケジュール調整が大変、など製作者側の負担もいくつか思いつきますし、個人的には今の『Voiceはあって当たり前』の風潮には懐疑的です。)

≪システム≫
基本気にしない箇所だが、バックログがないことは辛かったです。また「辞書」という項目があるものの、説明文はなく難しい(もしくは普通の読みをしない)漢字の読み方しかのっていないのが残念。物語進行と同時に説明が付される形にすればよかったな、と思ったり。

≪グラフィック≫
たまに顔のバランスが崩れているような立ち絵が見受けられましたが、あまり気になりませんでした。また、なんとなく女性より男性の方に力が入っているような気がしました。それにしても、この頃のどこかぼやけたかんじのする柔らかな色遣いが好きです。今は主流が、くっきりはっきりテッカテカな感じの色遣いのような感じがするので、グラフィックに関しては懐古主義に最近なっています。

≪キャラクター≫
 5章構成の中多くの登場人物が出ますが、中心はアズライトとレティシアの物語なので、アリア、ロードデアボリカ達以外は上の二人のために消化された感があります。それでも、ライターさんの描き方が上手いからでしょう、魅せ方としてはそれぞれ印象に残りますし、会話のやり取りでそれぞれのキャラの魅力が引出せていると思います。

レティシア:華奢な身体にフワフワな金髪ロングという西洋人形のような少女(基本的容姿は)。基本悲劇のヒロインとも言える扱い。アズライトに負けず劣らずの一途でひたきな思いを持っており、特に、擦れていない純粋なところが個人的に良かったです(最近何かしら癖のあるヒロインが多いので特にそう思えました)。

アズライト:『基本的に』礼儀正しく心優しい、個人的には珍しいと思える純情な主人公。ぱっと見線の細いうらなり君ですが、この世界の最強種であるロードデアボリカの一人ですので、頼りになります。少しウジウジと弱気になりがちですが、しかしそれは優しさの裏返しであることが言葉の節々から滲み出ていますし、結構頑固な意志を持っているので、不快に思うことはなかったです。何より、レティシアへの思いが、『強烈なまでに一途』でその純粋な心意気に、同性ながらも惚れそうになりました、正直。ただ、桜姫に関してはヘタレたという印象が残りました。

アリア:個人的には目新しいネイティブ・アメリカンを彷彿させるような服装を纏う娘。菜の花畑での和解シーンは、アリアお前というやつは・・・という感じです。最終章において出番をもっと増やしてほしかったと悔やまれる好キャラ。

ロード・デアボリカ達:どこか同性愛の匂いもしますが(もしデアボリカに異性というものがあるなら)、個人的には気にしない方なので問題なし。火炎王はイマイチ行動に一貫性がなかったように感じたのと、モテモテの所以があまり描かれていなかったのが残念。あまりキャラの把握ができなくて、彼らの考え方を理解しているかが試された時には、はじめ2問しか正解しなかったという覚えがあります。

その他:3章における、ティアラの扱いはあんまりかと。彼女はあの後どう生きていくのか気がかりで、プレイ後もどこかすっきりしないものがありました。

≪最後に≫
制作当時ストーカーという言葉が一般に認識されるようになりはじめたころだそうで、アズライトがストーカーに見えないように苦心したという内容がスタッフコメントにありました。確かに、見ようによっては、生まれ変わっても追ってくるので、しつこいを遥かに超えた究極のストーカーとなってしまうかもしれません。あくまで、見ようによってはですが。