ゲームとしての面白さも然ることながら、システムや音楽などの仕事ぶりはまさに匠の領域。
この作品の素晴らしい所は一切の手抜きを感じさせないことである。
まず音楽であるが、各モンスターに専用のテーマ曲が転生前と転生後の2曲ずつ用意されている。
30人近いモンスターの数にも拘わらずに2曲ずつ収録することは、時間と労力を費やしてでも完璧に仕上げようとする姿勢が見受けられる。
もしこれが他メーカーなら、1曲ずつで済ましていることは間違いないであろう。
もちろん2曲ずつ収録することには無駄はなく、それによって各モンスターにより愛着を抱くようになった。
それらを当たり前の仕事のように成し遂げていることに、まずは感嘆である。
そして次に、転生というシステムである。
初め自分はぬるま湯に浸かっているようなこの作品のストーリーに少し嫌気を起こしていた。
ランスシリーズのような痛快さはなく、大シリーズのように主人公に魅力を感じることもない。
ただ女の子を捕まえて囲まれるだけのぬるいRPGだなぁと思っていた。
けれども、転生を目の当たりにしてその気持ちは一変した。
父性をくすぐるこのシステムによって、いつの間にかぬるま湯ストーリーにどっぷり浸かって満足している自分に気が付いた。
転生というスパイスは、この作品により味の深みを生み出している。
そのスパイスを無理なく料理に入れたシェフはまさに一流であろう。
前菜だけで評価してしまいそうだった自分に反省である。
この作品は、よりアリスソフトに対して信頼感を抱ける一作品となった。