杉菜水姫がInnocent Greyを立ち上げる前の初期作。それだけでもファンならプレイする価値があります
(杉菜水姫Art Tableau Collection『MEMOIRE』の同梱作品としてプレイ)
処女作『蒐集者』を経て、この業界に現れた奇才“杉菜水姫”。
当時から絵の素質はずば抜けており、オタク受けするビジュアルをしっかり掴んだエロスを表現。
美少女ゲームらしく“萌え”を前面に押し出して、読み手が好感を持てる形に調えた作風に仕上がっていました。
ですが、もしこのスタイルを維持し続けたならば、おそらく多くの原画家と同様に彼の個性は埋没していた事でしょう。
それを嫌ってか、個性の確立に努めた二年間。
杉菜水姫特有の絵面の大まかな輪郭を掴んだ作品が、本作の『英才狂育』になります。
これは後の『カルタグラ』『ピアニッシモ』の下地にも繋がり、
繊細なタッチで“萌え”の表現技法と真っ向から対立した形に仕上げた意欲作ともいえます。
特にエロゲーの定番でもある調教・凌辱をテーマとした本作は、
彼の作品では珍しい部類に属するので、現在と比べるとかなり新鮮に映るのではないでしょうか。
ちなみに絵はとても綺麗で繊細ですが、表情に若干幼さが垣間見えるあたり、
見る側の視点を鑑みて若干媚びた印象を私は抱きました。
(試行錯誤の痕跡が見受けられると思います)
それがほとんど見受けられなくなり、「萌えなど不要!」
と美少女ゲーム業界の根幹を揺るがすビジュアルを完成させたのが、ご存じ『殻ノ少女』です。
この作品にて、杉菜水姫特有の絵面がほぼ完成されたといっても過言では無いでしょう。
なにより『殻ノ少女』にて、淡く透き通りながらも写実主義絵画を彷彿とさせる芸術的画風を確立させた事で、
彼の作品が我々が抱く固定概念を覆す二次元と三次元の中間領域である二.五次元の新芸術として昇華されたと思います。
それは後の『FLOWERS』に引き継がれ、水彩画の表現技法のように、
より一層の透明感が増した中で、柔らかで親しみがあるタッチによる新境地に至りました。
この画法の進化により”杉菜水姫”という確固たるブランドを築き上げ、一般層の方にも知られる切っ掛けになったといえるでしょう。
その主な特徴として、堂々と部屋に彼の絵を飾っても全く恥ずかしさを感じることなく、
むしろ洋画と並べても全く遜色ない芸術性を発揮する事から、今なお多くのファンを魅了せしめる要因にもなっています。
本作はそんな彼の作風を知る方ならば、シナリオよりも原画の方に興味を向いてしまう人も多いのではないでしょか?
そんな訳で話が初っ端から脱線しましたが、本編の内容に関してはネタバレを交えぬよう簡単に綴っていこうと思います。
一言でいえば、定番の学園調教・凌辱物です。
嫌よ嫌よも好きのうち。
だんだんと快楽に堕ちていきながらも、理性的に行動するように調教を仕向けるのが本作の醍醐味といった所。
特徴として飲尿・浣腸によるスカ要素が若干含まれます(他にもマニアックなのが少々)。
特殊な性癖以外の方は受け入れづらい場面もあるので、そこはご注意を。
システム面では古い作品ともあってか、全体的に雑な作りです。
特にスキップが遅く、しかも途中で頻繁に止まるため、シーン回収の際には不便を強いました。
またCG・シーンの使い回しも過多で、テキストの透過率、クッリク時の音声カットoffもありません。
そしてゲーム性を考慮したためか、攻略が非常に面倒くさく、作業ゲーとして中だるみするマイナス要素も備えてます。
(プレイを考えてる方は、攻略サイトを閲覧しながらやる事を強くお勧めします)
ただ絵師が優秀な点と、杉菜水姫らしさが随所に見られるバッドエンドは必見かと。
(特に麻生柚月はイノグレファンなら絶対です!)
調教・凌辱ゲーなので主人公が屑属性ですが、絵のおかげ(沸き立つエロス)で普通の抜きゲーよりも実用性の高さがみられる佳作だと思います。
ちなみに声優さんの癖のある演技は、好き嫌いが分かれそうだが個人的に文句なしの出来。