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peacefulさんの真・恋姫†夢想 -革命- 孫呉の血脈の長文感想

ユーザー
peaceful
ゲーム
真・恋姫†夢想 -革命- 孫呉の血脈
ブランド
BaseSon
得点
95
参照数
911

一言コメント

シナリオの質は恋姫随一。ヒロインも皆、愛すべき短所を含めて尊い。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

革命と云う名のリメイクだけど、『蒼天の覇王』よりは挑戦しており玄人向き。
真名ルールも何時にも増して厳格化しており、戸惑いも大きいが、
黄巾党からスタートし、孫呉三代に渡る天下の流れを丁寧に描いているのは高評価。
重厚なシナリオもそうだが、やはり至高のキャラゲーとしても本領発揮しているので、
本感想は個人的に気に入っているヒロインに焦点を当てて綴ろうかと思う。

【太史慈(梨妟)】CV. 榊原ゆい
孫堅を除くと、呉における太史慈最強説を個人的に主張する。
武に関しては孫策と互角だが、彼女の真価は単なる戦狂いではなく、用兵と戦略に優れている点。
これは守勢(籠城)や山岳戦にも秀でていることからも伺える。(終盤戦の突破力も見事)
何より人の良さと忠義の厚さが兵の士気を向上している節があり、理(実直)と情(律儀)を兼ね備えた勇将と断言。
最も近い敵将だと張遼がそうだが、どちらも人望厚いお姉さんでムードメーカー。
味方に付けば兵を安心させ、敵にすれば畏怖させる対象。
さらに弓の名手というから、才能溢れる聖人のような人。
唯一の欠点は男性経験の無さで、見栄を張りたがるところか。
でも性に初心な癖に、経験あるようにお姉さんぶって振る舞おうとする様は、何とも微笑ましく見える。
綺麗で明るく、優しい上に、恋人に依存するタイプで、ベタベタする彼女が、呉ヒロイン中で一番好き。

【魯粛(包)】CV. 卯衣
彼女には大いに笑わせて貰いました。歯に衣着せない言動全てが面白過ぎる。
お師さんである雷火先生(張昭)との掛け合いでも、自然と楽しくなってくる会話の連なりはお見事。
(亜莎との正反対軍師コンビも捨てがたい)
声優もベストチョイスのひゃわわ軍師。自信過剰である意味無敵の自己完結フリークでナルシスト。
能力高いけど、感情のアップダウンが激しく、色々裏目に出るポンコツヒロイン。
・・・だけど、その欠点の全てが愛しく思える。バカな子ほど可愛いとは改めて至言だと感じさせた。
妄想厨の変態であり、結婚w宣言がお気に入りの、呉ヒロイン陣で2番目に好きなキャラ。

【孫権(蓮華)】CV. 風音
正ヒロインかつ皆の嫁である蓮華。
主君としての重圧とそれに応えようと努力する姿が何とも健気。
もはや魅力に関しては多くを語らないけど、蓮華(と一刀)の成長こそが本作の醍醐味と云える。
堂々と3番目に好きなヒロイン。

【呂蒙(亜莎)】CV. 犬山遊々
例え無自覚に黒くなろうとも、雛里に通じる癒しキャラ。
素直で可愛いのは相変わらずで、メイド姿は月と恋姫2強。
特に恥ずかしがっている姿が萌えます。
念願のメイド奉仕もあるが、僅差で好きなヒロイン4位。

【北郷一刀】我らが主人公
序盤の一刀はいつにも増して半端者。甘えがあり、魏編よりも幼い印象。
そのため空気読めないガキ気質で、カタカナ(天の言葉)が必要以上に多く、テンポ停滞で苦痛。
半端な未来知識(毒)を振り回し、ネタバレする奴にはイラっとくる。正に想像力の欠如。
また呉の種馬という名目が危機感を失くし、戦の暴走がプレッシャーとなって自身を押しつぶしていく。

けれど、それらはシナリオ上、後の成長を見せる演出効果を狙ったものと解釈。
冥琳曰く向上心の塊であり、努力家。
後に文官・軍師補佐としての英才教育を施されながら、
呉の一員(重臣)として呉に報いる覚悟を固め、孫呉の遺志を継いでいくまでに精神的に成長していく。
また蜀侵攻で劉備の考えを読むなど、能力的にも確実に洞察力が上がっている事はその証左となる。
そして蓮華の相談役として心の支えとなりつつ、皆の全力フォローを惜しまないのは流石。
人の心を掴み、良い所を引き出す才能がここに来て開花し、未来の大都督もまんざら夢物語ではないだろう。

【その他(一言感想)】
小蓮:影薄いロリ。
明命:空気読めなさは通常運転。でも何か弱体化してない?武力84(一刀推定)とか……
祭さん:苦肉の策の説得力が凄い事になっている。身と心を削る姿に感服。
魏延:マジでアホの子。文醜と同レベル。
炎蓮:傍若無人ながらも豪胆で柔軟な采配を振るう。また臣下を良く見て気遣っている良き王。


【総評】
呉が持つ人の力、つまり絆を描いた本作は、他よりも死闘の多さと死生観が重厚なシナリオを補っている。
特に冥琳墓参りシーンは印象的で、命は重い、しかし他人事であると語る。
「残された者達は悲しみや怒りを乗り越え、死んだ友の遺志を継ぎ為さなければならない。
いかに名を(生きた証)残すか、其れだけを考え、皆生き、死んで逝くのだ。
割り切れない想いを胸に死してなお生きる火を消さぬ為に。」その言葉が胸を打つ。
雪蓮の『あさひゆめみし』に見られる壮絶な生き様と死に様から垣間見える様に、
炎蓮の大望、雪蓮の夢、そして冥琳の願い。
孫家の魂(誇り)を蓮華と供に背負って歩む一刀の姿に共感し、感情移入も容易かったストーリー。

その上で魏は完全にヒール役に徹する。孫策暗殺はストッパー一刀不在の弊害もあるだろう。
考えると最初に『蒼天の覇王』発売はスタッフの妙だ。反感意識もある程度抑えられる。
また魏の弔問の使者も筋が通っており、良リメイクの一端と言える。
終盤の盛り上がりである赤壁では、祭を受け入れる孫策への侘びと、孫策超えの華琳の心情が伺え満足感も高い一方で、
ラストにおいて落としどころが難しいのは理解するが、卑弥呼の介入はやはり白けてしまう。
それが少し点数を下げる要因となったのは否めない。