主人公の一人であるエチカ(CV.あじ秋刀魚)の豪胆でいたずら猫みたいな性格と、チェーンソー振り回しながらリビングデッドを屠る存在感は凄まじいものがありました。その所為か他の攻略ヒロイン(の魅力)を軒並み喰っている気がしますが……。勿論本作の一推しキャラです。ちなみに彼女が男だったとしても、シナリオ構成やエロゲー的に何ら問題ないと思いました(笑)。
深見真の原案、バイオのシナリオ、大崎シンヤのキャラデザ、ZIZZのBGM、
そして最強のニトロスタッフと豪華声優陣が作り出した2199年の凍京。
作中にて、その世界観と雰囲気を醸し出すために、多くの要素を注ぎ込んで作り上げた苦労が目に浮かびます。
システム面の工夫も然ることながら、
何と言っても特筆すべきは3DCGの圧倒的表現力と技術力の高さ。
正直エロゲーでここまで出来るブランドはニトロ以外難しいでしょう。
特に戦闘シーンやそれに付随する背景演出はアニメーションの様でもあって、
AVGの一つの完成形を私に魅せてくれました。(流石Nitro15周年作品)
起動場面のウザさや若干カクカクの動き(低スペックPCはキツい)を差し置いても、
エロゲーでPS3レベルの映像美を確保できたのは驚愕でしかありません。
一方で『装甲悪鬼村正』に匹敵する、生と死をテーマにした正しく挑戦的な作品ですが、
生者にとって死者を悼むモラトリアムが強く印象付けられた作品でした。
ですが物語の要ともなるリビングデッドの仕組みを曖昧に暈したり、
いくら科学技術が衰退しても、約200年後の世界で銃弾を使用するのは趣味丸出しだなと、
設定的に無理がある点がちらほら散在するのが気にはなりましたね。
あと物語の性質上、死の価値が暴落しており、あまり感情が揺さぶられないところでしょうか?
また映像を主眼に置いたことで、読み物として文章の役割が疎かになりがちな節があります。
要するに今までテキストと何枚かの挿絵で補完された世界を、全部映像によって補われた結果、
私たちの想像力の感性(=楽しみ)が失われる結果になりました。
紙芝居を脱却しても、そこにはメリットとデメリットの住み分けがはっきりしていることが分かります。
平たく言うと、「ここまでやればコンシューマー(Z指定)のFPSでもいいじゃね?」
という考えになってしまうでしょう。
それも含めて今後の課題ですが、終始プレイ中は燃えゲーとして有意義な時間を過ごすことが出来ました。
総じて下倉バイオの代表作として相応しく思います。