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peacefulさんのしろのぴかぴかお星さまの長文感想

ユーザー
peaceful
ゲーム
しろのぴかぴかお星さま
ブランド
Sweet light
得点
76
参照数
585

一言コメント

原画も違い姉妹ブランドのため分かり難いですが、本作はlightの名作『タペストリー』の続編にあたる物語です

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・『タペストリー』のネタバレが本感想に幾分含まれていますので、ご覧になる方はその点をご注意下さい
・『lightBOX The Great 15th』の同梱作品としてプレイしています


十年前に天に召された愛犬が、可愛い人間の女の子の姿で飼い主の元へ戻ってくる物語。
タイトルや絵から想像できると思いますが、何ともメルヘンファンタジーな世界観が用意されていました。

大切な人の為にどこまでも一生懸命に頑張れる、エロゲー内でも屈指のイケメン主人公を始め、
ヒロインの誰もが魅力的で、心優しく思いやりに溢れている印象を強く受けます。
特に犬の“しろ”と猫の“アウロラ”には、ケモノッ娘属性を今まで嫌厭した自分が恥ずかしく思えるくらい癒されました。
「可愛いは正義!」と心の内で掲げる程、彼女たちの一挙一動に自然と頬がにやけてしまいます。←キモいですね(^^;)
それに声優さんが同じで性格も何処か似ている為か、私の中で『恋姫✝無双』の“月”と“詠”がデジャブりましたので尚更でした(笑)。

そんなこんなで言ってしまえば本作はペットの擬人化モノなのですが、絵がエロゲーに似つかわしく可愛いらしいため何処か和みますし、
シナリオも何だか優しい気持ちになれる内容で、プレイ中にふと心暖まる感触を抱けるストーリーに仕上がっています。
それと一部BGMには犬(動物)の鳴き声が聞こえてくる仕掛けが施されており、細かな部分で雰囲気作りがされているのも好印象。
総じて丁寧な作り込みが為されており、キャラの心情面も良く描かれてた良質なラブコメだと思いました。
(ですが同時に問題点が多いのも事実で、その件に関しては後述の【総評】にて記載します)

ところで一言感想で、本作は『タペストリー』の続編であると書きましたが、ライターは勿論同じ人(佐野晋一朗氏+α)が担当。
『タペストリー』の世界観と同期しており、メインヒロインの一人である“吾妻愛鈴”が“吾妻はじめ”の娘にあたります。
難病で父親(はじめ)が早くに亡くなって約20年後の世界が舞台となりますが、相も変わらず喫茶店MANAは健在。
愛鈴の母親はその喫茶店のマスターをしており、表立って物語には登場しませんが、話から人当たりの良い人であんこ魔人とのこと。
MANAの看板メニューがこしあんトーストな上、娘の部屋にひよこのぬいぐるみが有ることから、“潮見ひかり”で間違いありません。
『タペストリー』におけるひかり√のラストで彼女の娘が描かれましたが、髪の色がほぼ同じなのもその証左でしょう。
何より愛鈴にもこしあん遺伝子がしっかりと受け継がれていますからね(笑)。
その他BGMにも『タペストリー』の曲が採用されているので、どこか前作を彷彿とされる懐かしさを感じられました。

さて、そろそろ本作の肝要である個別ルートに関して感想を書いていきますが、各√毎でかなり出来・不出来が激しいです。
とりあえず私個人の順位では、しろ≧愛鈴>アウロラ>>>>>姫花になります。
良かった順に感想を記述していきますが、読み返すと姫花√はかなり辛辣な感想に為ってしまいました(汗)。
それでは以降本格的なネタバレになりますので、未プレイの方はくれぐれもご注意を。
また『タペストリー』関連は【愛鈴】√にて記載しています。





【しろ】
「わふっー!」と元気一杯の掛け声で、天真爛漫なイヌ耳少女しろによるペットと飼い主の愛を巡る奇跡の物語。
神様の奇跡で生まれ変わった彼女(飼い犬)は純真で素直の美少女に!?
偶にドジするけど許せる癒しの対象で、多くのユーザーが保護欲に駆られたのではないでしょうか?
そんな可愛らしい“しろ”を主人公は異性として意識し、己への葛藤や背徳感に悩みながらも種族を超えた愛を築き上げます。
どちらも思春期特有の恋の悩みに触れ、初々しくてこっちが恥ずかしくなるくらい見ていて微笑ましいです。
特にしろはどんどん心が人間の女の子になっていき、恥じらう姿がとても印象的に映りました。

でも、しろに起きた奇跡は有限でした。これはどのルートでも同じですが、しろは永遠に生きられるわけじゃないのです。
今を悔いなき生きられるように。しろと別れるまで精一杯楽しく過ごそうと主人公は決意することに……。

と、ここまでの話は『タペストリー』に共通する事ですが、ここからが本作の醍醐味と云えるでしょう。
その後、納得するために、心の奥底からの笑顔を浮かべたいために、主人公は奇跡をもう一度起こそうとします。
言わば、これまでの悲劇をハッピーエンドに変える卓袱台返しです。
我儘ですが諦めたらそこで終了です。
そんなご都合主義がまかり通る可能な世界観を用意したのは、偏に悲恋ではなく幸福な恋をライターが求めたが為でしょうね。
最後は涙ではなく本当の笑顔で終われるようになった点は、前作と対比が為されており興味深く思いました。


【愛鈴】
天然でマイペース、優しくておおらかな愛鈴は家族思いな女の子として描かれています。
それ故、生まれる前に亡くなった父親に会いたい気持ちが人一倍強く、
主人公と恋仲になった後も、無意識下で彼に父性を求める様子が見受けられました。
ですがこれには主人公がはじめと同じ声優さんであり、公表はされていませんが、
主人公がはじめの生まれ変わり?という描写があったので、愛鈴自身何かを感じ取っていたかも知れませんね。
そうなると、何とも運命的でロマンチックな二人という印象が強く表現され、
愛鈴という愛娘を残し、死後も見守りながら、彼女に素敵な出会いをもたらした事は、彼(はじめ)の起こした奇跡と云えます。
そう解釈すると、吾妻はじめが残した「生まれた意味」はちゃんと引き継がれている事にちょっぴり感動した自分がいました。

それと、今作の一つのテーマに前回から引き続き「大切な人との別れ」があると私は踏んでいます。
これは二つの作品に共通していえる事ですが、全てが有限の時間だという事を強く意識することで、
大切な人たちと精一杯に過ごし、今この瞬間を大事にしたいと心から思えることの大切さを説いています。
そして、いなくなることを受け入れること。
かつて『タペストリー』の陽子さんは、「別れの時、泣きながら笑えることが、お互いにとって一番良いことだから」と語っているように、
涙ではなくせめて笑顔で別れを告げる意義を本作でも明確に表現しています。
人に気を遣いすぎの主人公が、自分の幸せをかみしめる笑顔でいる事こそが、皆の幸せに繋がる事に気付けたように、
素敵な思い出を運んでくれたしろに感謝をしつつ、その辛さを愛鈴とお互いに共有して受け止められる関係の理想像を垣間見えた気がします。


【アウロラ】
ツンデレ猫ロリ娘で、偶に見せる“にゃー”言葉でのデレは爆弾です!
語尾に猫言葉のニャアはベタでテンプレだけど、青山ゆかりボイスだと相乗効果も相まって格段に良くなりますね。
特にマタタビで酔っ払った時の甘えた仕草は、昇天するほどに我々を悶え死にさせる威力を秘めていると推測します。←書いていてよく分からなくなってきました(笑)

さて√に突入すると主人公とアウロラは、お互いが初めての恋に翻弄されながらも、彼女の恥じらう姿は愛らしく印象的に映ります。
特にアウロラのデレたくても素直になれないツンな気持ちが良く表現されており、純愛特有の初心で色ボケ感も主人公を通じて感じ取れました。

ただ結ばれてからのその後のストーリーには少々苦言があります。
シナリオは奇しくも『タペストリー』の美那(青山ボイス)と同じ彼女の心を救う展開なのですが、ちょっとやっつけ感があるように思えました。
設定も他よりも世界観を飛翔し過ぎて、当初のSweetというブランドのコンセプトを見失ったシリアスな雰囲気。
さらに主人公はアウロラの為に全てを犠牲にしておとぎの国の住人になるというが、普通に考えて無責任では?
駆け落ち同然で、育てて貰った家族や掛け替えの無い友人達に対して言伝も何一つなく、人間世界から居なくなったわけですから。
「愛している」という一つの感情を拡大したエゴとも云うべき独善的思考回路に違和感を覚えました。
最終的に親も親で反対もせずに普通に受け入れている所も可笑しいですし、
心配をかけた友人に対して、主人公が少しも悪いと思っていないのは、どこか頭のねじが二・三本抜けている気がしてなりません。
恋人の為に全てを捨てる覚悟は勇ましいですが、もう少し理想的なビジョンをライターは用意してあげるべきだったと思えました。


【姫花】
姫花は客観的に見て、面倒見の良いできた幼馴染です。
底抜けに優しいのは美徳ではありますが、他のヒロインと比べると、どうしても個性の面で見劣りしてしまうのでは?
そんな姫花と主人公の恋は、今の関係の心地よさが壊れる不安や、近すぎる距離故の嫉妬にも似た好きの辛さに悩まされます。
主人公は姫花に告白したのに散々友人らに非難されるし、行動しようにも姫花には無視して逃げられるのには流石に同情しました。
さらに他の男連中に色々邪魔されるはで、傍から見ると何とも歯がゆい気持ちに駆られます。
ただし気持ちが通じ合った後はバカップルぶりを発揮。
二人に好感が持てるのでそれ程不快ではないですが、もうお腹いっぱいでご馳走様といったところ。

ですがここで終わっていたら、本当にどんなに良かっただろうか。
この後の蛇姫による雨の話は必要性が全く感じられず、蛇足以外の何物でもありませんでした。

蛇姫の主人公に対する敵意は逆恨みも甚だしく、単に理屈を並べて主人公達に嫌がらせするだけ。
それだけじゃなく女の僻みが現実世界に影響まで及ぼす迷惑ぶり。昔のことに何時までも執着する粘着体質に嫌気が差してくる。
そして主人公も途端にヘタレて情けなくなり、はっきり言って優柔不断し過ぎて不快!
この影響は姫花や他のキャラにも及び、しろがいつにも増して駄犬になり、姫花も臆病になり過ぎてヘタレる始末。

というよりライターが意図的にそう仕向けている演出自体がイラつきを助長する一番の原因です。
無理して盛り場を作る必要性も無いし、シナリオの都合で不自然に性格が歪められる登場人物達が不憫で仕方がありません。
其れと言うのも、この話自体がこれまで書いていた佐野晋一朗氏ではなく、もう一人のライター(太田優)が書いたものだからです。
細かな設定・会話の節々に矛盾が見受けられ、整合性が無いところは両者の連携が出来ていない事の証明でもあります。
このグダグダ感は本当に読み手である私を含め、多くの方の嫌悪感や不快感を助長したのでは?と思えてなりません。
要するに「人の恋路にズカズカ物言ってんじゃねえっ!」と蛇姫とこのライターに強く言いたい。
最後の嵐のシーンは読みに堪えない程むかついたのでクリック連打して終わらせました。
また終わっても全然反省してない蛇は丸焼きにして殺したいほどです。
だけど終了時にしろが姫花の子供に転生のくだりは、それだけは良い結末だと思いました。(ただ蛇姫の子は絶対にいらない)




【総評】
結構直情的に感想を書いてしまいましたが、概ね最初に記述した良質なラブコメという評価は変わりません。
タイトル名もしっかりと意味(ゆきの笑顔)が込められている点も興味深かったです。
ただ拭えぬ問題点も多かったのも事実でして……
それらは箇条書きにして(個別での不満を除いて)以下にまとめてみました。

・ライターを佐野氏に統一して欲しかった。
・個別√毎で登場人物の性格に差がありすぎる(特に姫花√)。
・所々CGに乱れがあるのはちょっと気になった。
・テキスト以外に耳や尻尾の動きによるエフェクトが欲しかった。
・アウロラの猫から人(または逆)、おとぎの国に出入りのエフェクトは簡略化、それか直ぐにスキップ可能にして貰いたかった。
・主人公含めた主要キャラに自己完結型が多く見受けられる。
・しろとアウロラの耳と尻尾に対して他の人のツッコミは?→普通の人は認識できない←それを序盤から説明して欲しかった。

こんな所でしょうか。
あとエロに関しては絵が絵だけに使えませんでした。
愛でる分には良いですが、獣耳ロリキャラは私にとって性的対象外なのはやはり大きかったので…(^^)。