喝采せよ!喝采せよ!おお、おお、素晴らしきかな。
前作とは一新して原画に力を入れており、世界背景についても細かく説明されている印象を受ける。
連合という国の中の一都市インガノックを舞台に、隔離された都市の中に蔓延る病や怪物、薬といった負の連鎖とどうしようもない不条理が10年続いたと考えると、狂わずにいられる人ほど珍しいといえる。
そうした中でもキーアを癒しの存在として、物語の中枢に置いたことは価値観の相違を浮き彫りにし、ギーたちの人間らしさを取り戻してゆくきっかけを与えてくれたと思います。
また今作ではスチームパンクらしく空が灰色に染まり、蒸気技術が発達したり、クラッキングなどといった特殊な能力や異形化が進んだりと、
独特の雰囲気を加味しだすインガノックの世界観を構築するのに役立っており、背景描写も良く描かれている。
さらにゲームパートでは、内面の心理や過去の出来事などを詳しく説明させる方式をとった珍しい形で、
順序良くキャラの心理を紐解かないとバッドエンドの選択につながるため、なかなか頭を悩ませました。
総括として、今作は物語の雰囲気を楽しむ雰囲気ゲーであるが、過去の出来事に関してほぼテキストのみで、描写がなかったのはマイナス点。
またシナリオがところどころで省略して、過程を無視して結論ありきな形は前作と変わらず、ぜひ修正して欲しい点である。
そして最終話のその後どうなったのかは気になるところで、そうした所も各キャラずつ(特にアティやギー)説明が欲しかったです。
ですが全体的に惹きこまれるシナリオと世界観であり、CG・音楽・声とも良くできている良作であると判断します。
【追記】(2018:7/13)
前回から数年かけて、ようやく2週目を終えました。やっぱり名作だよ!(何よりキーアとアティが可愛い)
1週目はとにかく訳が分からなくて、その場の雰囲気に浸りながら想像力で物語を楽しんだ覚えがあります。
ですがスチパンシリーズ(灰燼のカルシェールまで)を一通り終えた現在となっては、
知識量とプレイ済みの記憶を頼りに前回より物語を多面的に捉える事ができました。
そうした意味で本作は2週目推奨作品に相応しく、1週目とは異なる趣を味わうことが出来ると思います。
(ネタバレ覚悟で桜井光作品@ウィキを閲覧しながらプレイするとよりわかりやすいかと・・・・・)
其に本作は私にとってシリーズ中最も琴線に触れた作品であり、何よりこの退廃的な雰囲気が良いですよね♪
10年の間世界から隔絶され、狂気が蔓延し絶望的な状況に晒され続ける都市インガノック。
貧しく弱い者達から先に潰えていく命に対して、零れ落ちる手の平から何とか掬おうともがき続ける主人公:ギー。
キーアというロリ天使を通じて、微笑みや枯れ落ちた涙といった人間性を徐々に取り戻してゆきながら、
危機的状況に対しても華麗に回避し、『遅い。喚くな。』で無双するチートぶりに相変わらず惚れ惚れします(笑)。
様々な事象が交差して絡み合いながらも一つの道筋へと収束していく構成に喝采(おお、素晴らしきかな)しながら、
彼らの願いの果てをもう一度余すことなく体験することが出来て個人的に満足しています。
最後にギー先生が生きていることを願いつつ、我慢強い子ポルシオンやアティがいつか彼と出会うことを夢想しながらこの辺りで失礼します。