ErogameScape -エロゲー批評空間-

peacefulさんのSHINY DAYSの長文感想

ユーザー
peaceful
ゲーム
SHINY DAYS
ブランド
Overflow
得点
82
参照数
2494

一言コメント

伊藤誠が屑やヘタレだとよく言われているが、それが彼のアイデンティティやネタだと思うと、どこか割り切って考えてしまう自分がいました。(長文は軽微なネタバレと伊藤誠に関する駄文です)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

唐突だが、三大ヘタレ主人公というものが存在する。
エロゲ・アニメ等に出てくる主人公で、要するに
『こいつが居なければ皆平和』
『現実に居たらフルボッコ』
『死ねよ!』『出てくんな』『誠死ね』
『貴様の様な奴は屑だ!』『いとうまことしね』etc…………

と叫ぶのに些かの躊躇も戸惑いも無いヘタレ(屑)主人公に捧げられる悪しき称号である。

ご存じない方に紹介するが、この三人が代表格。

【三大ヘタレ主人公】:ここでいうヘタレとは人間の屑と同義語であると私は定義しています。
・鳴海孝之(君が望む永遠)
・藤井冬弥(WHITE ALBUM)
・伊藤誠(School Days)

【次点】西條拓巳(CHAOS;HEAD)、北原春希(WHITE ALBUM2)
【番外】:玖藤奏介(ピアニッシモ)

藤井冬弥はいてもいなくてもどっちでもいいが、鳴海孝之と伊藤誠はもはや伝説クラス。
彼らのヘタレ(屑)ぶりは見ていて決して気分の良いものでは無く、情緒面で多大な悪影響を我々に及ぼしかねない。
それこそ先述した言葉が、無意識の領域で喉から迸るレベルだ。
そのため今作の主人公が伊藤誠である辺り、自然と「SHINY DAYS」の内容が伺え知れるというもの。

そう思っていたのですが、『あれっ?綺麗な誠もちゃんといるじゃん』
と予想を覆すシナリオも用意されている辺り、エンターテイメントがちゃんと分かっている良作に思えます。
勿論、誠の本来の性質であるヘタレ(屑)具合もお約束として組み込まれており、『誠氏ね』の評価は相変わらずといった所(笑)。

また今作はリメイク作品という事もあり、従来のサマデイ√と、
足利いのりを新ヒロインに据えてシナリオを書き直したシャイニー√を加えた豪華ボリューム仕様。
個人的には新√を押しますが、旧√も登場人物達の一部を原画から描き直してイベントやエンディングを新たに付け加えているので、
前作「Summer Days」をプレイしたファンの方にも十分に楽しめる作品だと思います。
しかも今回は流石に製作陣も神経を使ったのか、心配したバグが殆ど見当たらない点も高評価(Ver.1.00dにて)。
しかしフルアニなので容量を多大に食うのは、如何せん仕方ないと割り切るべきでしょうね(約18GB:PCも高スペック要求)。
選択肢の多さによる攻略の面倒さもシリーズ同様で、100%のシーン回収作業は諦めが肝要に思えます。


ところで、話がまた脱線しますが、
今作「SHINY DAYS」にはスペシャルゲストとして、Nitro+の人気キャラ“すーぱーそに子”が出演しています。
ラディッシュのウェイトレス(バイト)として新√にちょくちょく顔を出しては、刹那たちと一緒にお店を盛り上げています。
ちなみに“第一宇宙速度”に加入しているような口ぶりから、本人と見て差し支えないでしょう。
『なんでOverflowの作品にNitro+が関係してくるの?』
と疑問に思った方もいるかと存じますので、私の推測でよければお答えします。

ご存知の方もいるかと思いますが、「ちよれん」という組織があります。
これは1999年に同時期に創立したPCゲームメーカー3社が、同じビルに会社を構えていた縁から、
スタック(Overflowを擁するメーカー)、アシッド(ageなどを擁するメーカー)、ニトロプラスによって結成された組織の通称の事です。
正式名称は「千代田区連合」といい、創設時は「ちよれん」という名前を冠したラジオ番組やイベントなどを共催していました。
流石に時が過ぎるとビルも別々になり、表立った行動はしていませんが、現在も三社の交流は続いているようです。
特にOverflowの社長ぬまきちとニトロの代表取締役でじたろうは仲が良いとの事なので、
今回のそに子の特別出演という流れになったのだと思います(ちなみにEDのテーマ曲も担当)。

こうした“すーぱーそに子”のタイアップは意外と多く、
身近な所では同ブランド作品の「アザナエル」や「鬼哭街(非18禁版)」からも出演。
他にも“しゃんぐりらすまーと”の「恋ではなく――It’s not love, but so where near.」にも友情出演を果たしています。

コラボやスマホ企画、曲を担当したりと幅広く活躍の場を設けているので、
彼女が出演している作品を探してみるのも面白いかも知れません(^^)。




それではそろそろ【総評】と言いたいところですが、今回は【伊藤誠に関しての駄文】で締めさせて頂きます。

「School Days」そして本作「SHINY DAYS」の主人公である伊藤誠は、
生粋のヘタレ人間で駄目(屑)主人公の代表格と世間で称されています。

『ですがこの世間一般的見解は果たして本当に正しいのか?』
『なぜ彼はそこまで嫌われているのか?もう少し見方を変えるべきなのでは?』

といった疑問(主に私が思い浮かべている)に応えるべく、
誠の弁護論?もとい検証と考察を兼ねた私の駄文をこれから綴ろうと思います。
(ここからシリーズ作品の極度のネタバレが発生しますので、どうかご注意下さい)








この文章を読んでいる方は、おおよそご存じだと思いますが、一応“彼”の説明をします。

【伊藤誠】
心根は優しく見え、面倒見が良いように表面的に見えるためか、女性に理不尽なまでにモテる男。
その守備範囲は広く、幼女から熟女まで枚挙に暇がない。
だが、その場の雰囲気に流され易い優柔不断な性格の為、女性関係は非常にだらしなく修羅場に陥る事もしばしば。
また何事にも無気力で面倒な事からは徹底的に逃避したり、無責任で何か問題が起こると他人に責任を転嫁しようとする言動も目立つ。
しかし最も酷いのは、脳内下半身と揶揄されるほど理性よりも何よりも先に性欲を優先する事であろう。
これには多くのプレイヤーを混乱・不快にさせ、ヘタレ(屑)主人公の代表格として今日まで君臨する事になったと云えます。

だけど、ちょっと待って欲しいのは、誠のそうした負の面ばかりでなく、
正の面もちゃんと存在する事を我々はもっと直視するべきに思える。

例えば前作「School Days」では、言葉を乙女たちの虐めから救ったり、
今作では、勘違いして仲違いした刹那をフランスまで追いかける男らしい一面もある。
また、神輿の修理などの頼まれた仕事を真面目に行ったり、妹の止には優しい兄の一面も見せるなど年下には慕われている。
母子家庭で母親が多忙なため、家事スキルが異様に高いのも良い一面の一つだろう。

だが、そうした良い面が悉くマイナスイメージで塗り固められて忘れさられているのが今日の現状である。
自業自得な面も確かに強いが、ここまで非難される主人公に幾分同情の念を感じました。

また、彼の父親が数え切れないほどの女性と関係を持っており(祖父も同様)、
その血を引いたことによる外的(遺伝的)要因が関係している可能性も否定できない。

それと誠自身も「自分でもしょうがないヤツだと思ってる」
「あっちこっち色んな女の子を好きになったり振られたり忙しいヤツ」

と作中で語っており、自覚症状が有るだけまだマシな方だろう。

そもそも伊藤誠以上のヘタレ・屑主人公は、エロゲー内では腐るほどいます。
先述した鳴海孝之しかり、鬼畜・凌辱ゲーというジャンルでは、それはもう跋扈しており、
一種の下種(屑)具合がテンプレとして、扱われているのが現状な程です。
それが三大ヘタレ主人公として称されるほどに、世間から嫌われる事になったのは、
偏に彼の知名度が関係しているのだと考えます。


フルアニやバグ、そして衝撃なシーンで評判を博した“スクイズ”は、
アニメ化やコンシューマ化といった様々なメディア展開が可能と認知され、世間の目を浴びる事になった。
それ故”スクイズ”はシナリオ(鬱)ゲーという枠に収まり、鬼畜・凌辱という作品群から一線を画す事になったといえる。
(あくまでシナリオゲーという枠内で、主人公としての負の側面が際立っていた事により、三大ヘタレに挙げられたと仮定する)
その結果、彼の屑ぶりが強調されるように製作側が扱った事により、
多くのユーザー・視聴者に非難の矛先が集中して、誠=屑のイメージが定着したのだろう。

それにのっかたのが、ライターであり社長の“ぬまきち”である。
ユーザーが望んでいる伊藤誠像を壊さぬように、シリーズ作品に「綺麗な誠」を極力出さないシナリオを心掛けたと見えます。
それは我々が“改心した誠”よりも“屑な誠”を潜在的に望んでいるために、それが後の作品に投影された結果とも考えられる。
この影響が現在の伊藤誠を築き上げているとしたら、最初はどうあれ作中では加害者ながらも、別視点では被害者とも見て取れます。
これが発展した形が「誠死ね」というネットスラング。
あくまでネタやお約束なのだろうが、彼以外の実際に居る伊藤誠さんたちに
迷惑が及ばない配慮が必要である点から鑑みるに、あまり何度も口に出すのは憚るべきであろう。
(私もこれ以降は、この言葉を一切使いません)

また別の切り口で考察すると、彼の異常なモテ具合に、
多くの男性ユーザーからの羨望と醜い嫉妬の感情が、八つ当たりと化して、マイナスイメージの拡大に繋がったとも考えられる。
これらの要素が折重なり合って、世間の嫌われ者として捲し立てられる存在にされたのは、いささか不条理に感じるのが私の考えです。


だがそれとは別によく見受けられる意見に、伊藤誠に感情移入してその在り方が許せないと考える人が多いという点だ。
だが良く考えて欲しいのは、このシリーズに登場する男性キャラは澤永しかり誠以上に屑なのが多い。
特に今回は“間瞬”という病原菌(根本の原因)や、“花山院恭一”というロリコン屑塾講師の存在が確認できる。
こいつらと比べたら、まだ今作の誠は可愛い方といえるだろう(最も彼の今までの罪状が消える事は無いが……)。
また他にも、世界や加藤姉妹等の女性キャラの腹黒さと嫌らしさも大概である。
刹那に関しても勘違いさせる言動や行動をし、父親である真実を誠に伝えなかった点は同罪に私は思ってしまう。
要するに、誠だけを責める対象にするのは間違った図式であり、他のキャラも同様に批判するべきだという意見を挟みたい。
最も心の方が誘惑してきたとはいえ、小○ロリにレイプしようとし、実際に実行する破天荒な鬼畜行為は流石にいただけないが………。

あとは感情移入という点で、本作限定で話をするが、もう少し私の駄文に付き合ってほしい。

本作品を評価するにあたり、ジャンルという物を考えてみたい。
つまりこの作品はシナリオゲーが抜きゲーか、はたまたキャラゲー、いやギャグゲーとも見て取れる。
前作「Schhol Days」は鬱ゲーと称される事が多かったが、今回は血生臭い要素は無いのでそれは当てはまらない。

『ならば実際に本作のジャンルは何なのか?』

これに関しては確たる答えは見つける事ができませんでした。
おそらく個々のユーザーの見方で「SHINY DAYS」は○○ゲーであると、勝手に考えていただいていいだろう。
ちなみに私は先述したジャンルが全て含まれた、所謂“闇鍋”っぽいゲームだなぁと思いました。
真面目な印象は感じられないので、「君が望む永遠」や「WHITE ALBUM2」といったシリアス的思考はこの際放棄して、
約束された伊藤誠像を肩の力を抜いて鑑賞するのが良いのではないでしょうか。

例えば、
『本当に誠はしょうがない奴だなぁ。でももっとヤレ(笑)』
『おい!強姦はダメだろ和姦は良いが(えっ)。心ちゃんに謝れ!というかよく頭無事だよな』

こんな風に思うと、もうなんか真剣に感情移入するのが馬鹿らしくなりませんか?
膨大な選択肢で動く伊藤誠はかなり自由奔放で、時間制によりプレイヤーの手から離れる事も度々起こります。
感情移入しようとも予測不可能な展開に困惑するというか、素直に追いつけなくなるといいますか……
これは既に一言感想で述べましたが、浮雲のように掴み所のない様を見せつけられると、
一つの個性やネタとして割り切って考えてしまう自分が居ます。
なので私から言えることは、
『伊藤誠に感情移入してはいけない!あれは我々とは違う種類の人間だ』
とそんな感じでまとめられる事柄であり、気にせずエンタメとして楽しむ事がこの作品、ひいてはシリーズの醍醐味なのだと思います。

まぁ普通のエロゲーと違って、主人公視点ではなく演劇鑑賞視点、所謂TVアニメを見ている感覚に近い作品なので、
主人公=プレイヤーという感情移入の図式が素直に成り立ちにくい事も、関係してくるかもしれませんが………。



とまぁ、後半あたり自分でも何書いてるか分からなくなったので、切りの良いここらにて締めさせてもらいます。
ちなみに今回「Cross Days」の作品は除外して感想を綴ってます。
私が未プレイなのもそうですが、BL属性ではないので流石にネタとしても厳しく、到底受け入れられないと思いますので(^^;)。

それではここまでご観覧の皆様、文体もバラバラで、内容も支離滅裂気味でしたが(笑)、
私の長文と駄文にお付き合いくださりありがとうございましたm(_ _)m