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peacefulさんの虚ノ少女の長文感想

ユーザー
peaceful
ゲーム
虚ノ少女
ブランド
Innocent Grey
得点
96
参照数
782

一言コメント

『殻ノ少女』の続編。狂気の面が若干薄らぎましたが、シナリオの秀逸さと演出/構成、人物描写は向上しており、昭和中期の世界観を存分に醸し出す素晴らしい出来になっています

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今作では2人主人公制と過去と現在の二つが混じり合いながら、物語が展開するアクロバットな方式だったのですが、
ほとんど違和感もなく読み進めることができ、虚実と妄執をテーマによく組まれたシナリオには舌を巻くほどです。

また、過去作に例を見ないとても多くのキャラクターが登場し、それぞれが複雑に絡み合いながらも一本の線に繋がってゆく人物相関図は、
まさかこのような繋がりがあるのかと、話を読み進むにつれて分かる真相に驚きを隠せずに感心しました。
現代では当たり前のDNA鑑定が存在しない上での、血液型判定も面白かったです。

さらに、前作はドラマCDのみの時坂玲人がフルボイス化し、より臨場感溢れ、真崎との掛け合いも楽しみながら聴くことが出来ました。
演出面でも二週目からの新OPにて力の入れようを感じ、BGM、CGともに世界観をより鮮明に彩ることができたのではないでしょうか。

難を挙げれば、今作のメインヒロインである茅原雪子と砂月ですが、あまりにも印象が薄かったと思え(特に雪子)、
前作の冬子ほど強く心に刻むことができませんでした。
犯人の狂気についても理解しやすいように、ロジックが薄らいでいたのは若干残念です。
システム面では言わずもがなの、2週前提の作品故スキップの遅さが目立ちます。

最後に玲人が冬子との「本当の私を見つけてほしい」という依頼をこなせたかどうかは、プレイヤーの判断にゆだねますが、
終了後のタイトル画面での演出には涙を誘うものがありましたね。

【追記】
ドラマCD『虚ノ少女-天に結ぶ夢-』で本編の補完(雪子の過去話)ができます。
ファンなら買いの一手ですね。
それとある意味、高城秋吾<真崎智之の方が探偵の資質があるような気がします(笑)。