シナリオ・絵・テキスト・音楽・演出・声のどれもが最高クラスの出来。シーン回想が全シナリオをカバーしているので、何度でもプレイしたくなる神作。難を言えばオートモードに不便さがあるため減点しているが、そこを考慮しても補えるストーリーは圧巻の一言
アニメが放送されて、萌えゲーアワードで金賞を受賞して以来、再度脚光を浴びる形になった本作ですが、
私としては既に約二年前にプレイ済みで、今でも時折記憶が薄れた時に暇を見つけてはプレイするほどの熱の入れようです。
さてグリザイアは三部作構成なのですが、その記念すべき一作目が果実であり、もっとも量と質が優れた作品に仕上がっています。
簡単に説明すると、5人のヒロインたちの苦悩とトラウマ、現在に忍び寄る魔の手から、
主人公が卓越した能力と行動で現状の打破や過去の清算といった手段で、彼女たちの心の根底に深く関わっていきます。
救済と成長をテーマに、濃厚な死生観を背景として仕上げています。
少し抽象的に説明すると、世界(または社会)という枠組みの木から実、人という果実がある。
そこから崩れ腐り落ちた果実がヒロインにあたります。
物語の題名になっているグリザイアとは、フランス語のグリザイユをもじったもので、
意味は灰色の濃淡・明暗のみで描く美術用語、またはそうした作品であり、直訳して意味を考えると「灰色の果実」となる。
外観が灰色なので人に見向きもされず、味に関ても想像しずらく、結果として売れ残る。
先の例からすると世界から孤立してしまったという意味である(注:私個人の解釈です)。
そうした果実(彼女たち)の世界を築いてゆくために、主人公はいかなる状況でも解決できる万能型になっています。
今時としては珍しいくらいのイケメンですので(内面含めて)、特に不快感なくプレイできました。
ヒロインたちもそれぞれのキャラが立っており、重厚なストーリー展開を飽きることなく続けられる重要なファクターだと感じます。
ネタバレを含む内容はここでは控えさせてもらいますが、やって損のない作品だと私は自信をもって評価します。