杉菜水姫が描く新たな芸術の境地
パラノイアと狂気を主題として物語を形成したサイコサスペンスミステリィ。
「カルタグラ」を継承した本作は、猟奇殺人を巡る登場人物達の内面や繋がりを繊細なタッチで表現している。
また昭和中期の雰囲気を再現した世界観は、郷愁と悲哀が交互に混ざり合い調和の取れたInnocent Grey独自のスタイルを築き上げた。
そして美麗な絵と胸に響き渡る音楽はあらゆる意味で他の追随を許さない。
主題歌の「瑠璃の鳥」は、前作と引き続き霜月はるかが担当した事により、「殻ノ少女」を一層引きだたせてくれる名曲に仕上がった。
総評すると、言葉で表現する事が叶わないほどのカタルシスを受けることになる。
一種の芸術作品として確立できる作品であり、エロティシズムを必要としないグロテスクにおける18禁という枠に嵌った美少女ゲームである。
それ故、殺伐とした悲壮感と切なさが込み上げてくるので、鬱になる覚悟をもってプレイすることを喚起する。
そしてプレイ後、もしこの結末とは違う未来を見たいたなら、殻ノ少女ドラマCD1~3とアオイトリを買うことをお勧めする。
現在プレミアがついて少し値を張るが、その分の価値は十分にあると思うので。
冬子「捜して欲しんだ。——私を。本当の、ね」
この意味を理解するには、シリーズの結末を見届けるパラノイアに憑りつかれる必要があるのかもしれない。