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pantumanさんのクロウカシス 七憑キノ贄の長文感想

ユーザー
pantuman
ゲーム
クロウカシス 七憑キノ贄
ブランド
Innocent Grey
得点
80
参照数
1359

一言コメント

落ち着きのある雰囲気、音楽グラ文字を総合させたクオリティーの高さは一級品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一応、ネタバレは回避しているはずのレビュー

はじめに言わせてもらうと、私一人の力ではこのゲームをクリアすることは何年かかっても不可能だった。
私からすれば、欠陥品に近いものとなっていたかもしれないことを考えると、クリアのしやすさも大事にしてほしい。
一から十まで導いてくれるゲームにしてくれとまではいわないが、考えれば気づける程度にしてくれないと困る。
だが、クリアしにくいことによる副産物とでもいうのか、エンディングが多いのはうれしかった。一本道ストーリーが多い中でよくやってくれた。
しかし、ちょろっと後日談が変わるためだけに、なんべんも一からプレイしなおしたいと思うプレイヤーはなかなかに稀有だと思う。
Trueルート以外はバッドエンドのようなものであるし、あんまりいい気分になるものではなかったので、
もうすこしハッピーに近い展開のルートを入れてほしかったというと贅沢か。ゲームの構造上厳しいところだろうというのは察しがつくが。

グラフィックや音楽やボイスは特に文句をつけるところが思いつかないのでシナリオの話を。
真犯人は完全に予想外の人だった。最も気に入っていた人だったし、信頼のおける人だと思っていたので。
終盤の終盤まで動機がさっぱりわからないのだから、お手上げだ。
推理物のお決まりは知らないので、実際のところどうだかはわからないが、
殺人の動機っていうのは、作品内の情報でわかるようになっていないといけないんじゃないだろうか。わかるっちゃわかるけど、最後の最後すぎる。途中が無意味に等しい。
後は他の人も散々言っているように、どうやって殺して処理したんだよ、という部分。不可能すぎる。
とはいえ、私は二エンド程プレイして推理を放棄し、ストーリーを追うことに専念していたので偉そうなことはいえないかもしれない。
難解な脱出ゲームのような道具の見つけにくさ、聞き込みの無意味さはどうにかしてほしいところだ。

否定部分が多いが、私はこの作品を良作もしくは名作に値するものだと思っている。
一つは世界観。いわゆる萌えゲー、キャラゲーによく見られる、属性に頼ったキャラ作りをしていないのは、さすがイノグレだと思う。
排他的といってもいい、密室であり赤の他人ばかりである、ある意味、孤独に近い空気感もよくでていたのではないだろうか。
まぁ、これは少々の接触で簡単にHシーンに至れることから、徹底しているとも言い難い部分もあるにはあるが。
後はTrueルートの程よい清涼感。
殺人を犯したものが都合よく許されるのは個人的に、ゲームであっても受け入れにくい部分がある。その点、すごくちょうどいいエンディングであった。
文章だけ見ると、物足りなさを感じなくもないが、絵と音楽があいまると、クライマックスのシーンは良作特有の盛り上がりがあったといっていい。
惜しむらくは推理がいまいち盛り上がらないところか。うみねこのなく頃のように、とまではいかなくてもいいが、
もう少し熱い展開があるとうれしかった。
推理ゲームとしてプレイせず、なおかつサクサクとエンディングを見ることができたのなら、十分楽しかったといえるゲームだろう。
私が、そういうゲームとしてプレイし、余韻に浸ることができたのはひとえに愚者の館のおかげである。感謝したい。
わりと本気で言っているので、これからプレイする人は攻略サイトを見ながらのプレイをおすすめする。
最後に一言、……グロはもういいんじゃないかな?