シナリオ、思い、全てが繋がる。
登場人物全員が美に対して違った信念をもっており、作中でブレることが一度もないのが素晴らしい。
人と人を対立させることで物語を進展させていくのはお約束展開だと思うが、舞台装置としてのご都合主義な対立ではなく、互いの譲れない思いがぶつかり合って本当の意味でぶつかり合っていたと感じた。
なので先入観で嫌いなキャラクターがいても、そのキャラクターの信念を聞かされると好きになったりする。
実際詩では本間麗華はただの嫌なモブキャラとして認識していたし、長山香奈の魅力も分らなかった。
けれど今作をプレイして、中村麗華の作品が持つ真なる美を愛する思いや、魂を削る芸術家を間近で見てきた経験からでる理解と苦しみに共感したし、長山香奈の凡人を自覚した凡人の辛さ。それでも凡人の強みを考え飛びぬけた天才たちに挑む融資に心を打たれた。
どんなキャラクターも使い捨てせず。すべてがサクラノ刻を作り上げる上で欠かせないパズルのピースだった。
詩では序盤のスロースタートがつらかったが、やはり続編ということもあって序盤からpica-picaの真相解明や雪景鵲図花瓶の回想など、飲み込まれるような話が続きとても満足感が高かった。
また圭回想√にて向日葵を書き続けた圭を見て、2本の向日葵をモチーフとした意味と幼少期と同じ魂を削るような制作方法。すべてがムーアの圭と重なり鳥肌が立った。そして最後にED「桜ト向日葵」だ。この曲はプレイ前から知っていたが、タイトルを見返した瞬間また鳥肌が立った。
そして最後の圭と心鈴が二人でバイクにまたがるシーン。
心鈴の感情があふれ思わず涙を流してしまうシーン。身構えていない感動シーンだったのであそこが一番泣けた。
圭回想√の感情の爆発の仕方は今作随一といってもいいと感じた。
夢水強すぎ問題等シナリオに気になる点がなかったかといわれるとそうではないが、自分の心に訴えてくるような信念を与えてくれた作品であるため、この作品は100点を付けざるを得ないと感じた。