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otakuさんの太陽のプロミアの長文感想

ユーザー
otaku
ゲーム
太陽のプロミア
ブランド
SEVEN WONDER
得点
92
参照数
652

一言コメント

ぷぅ様マジ太陽神!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

とりあえず「ぷぅ」というキャラクターの存在がこの作品を語る上では欠かせない。
記憶喪失の主人公と切れない・解けない紐で結ばれたこの幼児。
自然と守るべき存在として、保護者としての振る舞いが主人公には求められ、まるでコブつきの男やもめのような印象を受ける。
これが主人公という物語の主観キャラクターに他の作品には無い色を与えている。

それになによりこの「ぷぅ」というキャラクターそのものの魅力。
「ぷぅ」とか「ぷぃお」とかまともな言葉を喋れないキャラクターでありながら声優の演技と多彩な表情から十分な感情をプレイヤーに読み取らせ、
幼児のポジティブな部分を凝縮したような性格は「太陽神」という設定を与える事で不自然さをなくし、シリアスな物語における清涼剤というかマスコットキャラとしての存在を際立たせ、
「ぷぅ」がいるだけで物語の中に「これ以上悪くならない」という安心感というか、プレイヤーのストレスへのセーフティネットのような役割も果たしている。

「ぷぅ」が存在するだけで物語にはさながら陽光のごとき温かさが与えられる。
まさに「ぷぅ様マジ太陽神」というヤツである。

それに「ぷぅ」という幼児が常にコダマの傍にいることでヒロインに自然と母性というものが求められるという事。
みな、それぞれに「ぷぅ」と関わり、彼女への扱いに「ヒロインとして」ではなく「女性としての魅力」を見せてくれる中、一人圧倒的に嫌われるヒロインが・・・・(笑)
彼女が「ぷぅ」と起源を同じくする存在というのが意味深なのか、はたまたただの偶然か。



そして面白いことにこの「作品」の主人公は「コダマ」であるが、この「物語」の主人公は「コダマ」ではなく「エコー」であるということ。
エコーとコダマは同一の存在のようでいて異なるものである以上、「コダマ」はこの「物語」においては主人公になり得ない。
あくまで、ただの「主観キャラクターとしての主人公」であり、「主体キャラクター」ではないのだ。
それは「ぷぅの乗り物」「太陽神の守護者」という呼ばれ方を作中するように、「『コダマたち』に似た存在」というあくまで付属物としての役しか与えられないという事からも明らかであり、
彼はヒロインとの関係においてのみ初めて「主体」となれるが、そのヒロインごとの問題に関してさえ「主体」になれない。
あくまで「コダマ」とは「主観キャラクター」であり「傍観者」でしかない。
かつての「コダマたち」がミルサントの影の支配者として、ミルサントを外から俯瞰するように情理を外に置き、このミルサントという街を作り上げたように。
あくまで「コダマ」とはミルサントを取り巻く「物語」の外側にいる人間でしかいられない。
唯一「エコー」を除いて。



この物語にはルート制限がかかっているが、最後の制限解除でようやくジゼルとリノ=レノ、この「作品」の始まりの鐘を鳴らした二人の長年胸に秘めた想いは報われる。
「エコーとの再会」であり、「エコーに認められる事」だ。
しかし一方で、この「物語」の始まりを紡ぎ、1000年に渡りミルサントを見守ってきた二人の賢者の「願い」は叶わなかった。
無論、二人の賢者に何も幸いが訪れなかったわけではない。
そもそも二人の1000年に渡る献身はある意味で贖罪であり、また雌伏でしかなかったのかもしれない。
それでも1000年をミルサントに捧げた二人の功績に対してこの二人の最期はどうなのだろう。
ルディナスに命の灯火を。せめてその芽を。
自らが作り上げた街で、自らが見つけた家族と、すべての義務やしがらみから解き放たれた特別で無い日々を。
彼女らにそんな幸いを与えられるルートは作れなかったのか。

この「物語」の全てを読み終えて、心に残る哀しさに似た感情はきっとそんな二人の賢者への哀悼に端を発しているのだろう。

願わくば、FDでそれが叶えられる事を。




最も印象に残っているのはリノ=レノルート。
何故かというと、足コキCGにエロゲをやっていて初めて心臓を鷲掴みにされるような衝撃を味わったからッ!だ!!
あ、それと、コダマが負傷して気を失うシーンでぷぅが初めて大泣きするシーンにエロゲ歴10年でも5指に入るくらい胸を締め付けられた、ってのもありますよ?

ただ一番「好き」なのはエレガノルートですかね。
ジゼルとリノ=レノにとってこの作品で最高の幸いが訪れたルートですし。
ジゼルがエコーに抱きつくシーンは最高に泣けます。
あとぷぅも魅力振りまきまくりですしね。
傷ついたコダマを守ろうと頭にしがみついたり、ジョージちゃんの中に入ったのに気付かずに見失ったと思って不安そうにしたり、挙句に泣き出したり。
カシェットをあっさりと救うチートっぷりは「さすが太陽神様!おれたちにできないことを平然とやってのける!そこにシビれるあこがれるぅッ!」ってヤツです。

件の足コキ筆頭にエレガノ・フレアにも衝撃度の高いCGがあってエロ方面も数の割りに充実ですし、デフォルメCGも可愛いし、少しずつ明かされていく星の物語も満足。

良い作品に出会えました。


ただ一つだけわからなかったことが。
北天姫が「コダマ」を「裏切り者」と呼び憎む理由。
これだけイマイチわからなかたんですけど、作中でそれらしい説明ありましたっけ?