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ot02070さんの紫影のソナーニル ~What a beautiful memories~の長文感想

ユーザー
ot02070
ゲーム
紫影のソナーニル ~What a beautiful memories~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
90

一言コメント

ああ。ああ。想いは消えないとも。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

これまでと違うのは。同じだけど、違うのは。
それは、登場人物の多くが、すでに死者であるということ。
ニューヨークで死に、更に地下世界で苦しみ、なお強く生きている人たちだということ。
勿論これまでにもそういう人はいた。
黒い人にしても、クリッターにしても、Mも、ヒルドも、レオも。最たる存在がキーアだ。
生きていても、辛いことはある。インガノックの変異した人たちもそうだ。
だから一概には言えないけど、それでも彼等は生きていた。辛くても、生を繋いでいた。
ソナーニルに登場する彼等の多くは、すでに死んでいる。だから、繋がるものなどない。
夢を見ても、愛を語らっても、そこには何もない。意味など、あるはずがないのだから。
その可愛らしい外見とは異なり、中身は、ハードだ。心が軋むのが分かる。
思い出すのは、ANGEL BULLETのセーラとクラウスと、ヒロインの彼女たち。
特にセーラが消えてから。その後の数年は描かれていないけど、それは地獄だったはず。
その絶望とも言える時間をテーマに描いたのが、この作品の彼等の物語だったのかなと。
大事なものを失ってしまった人たち。改めてこのシリーズに共通することだと実感した。

では、本当に意味がなかったのか。
人が生きていること。一人ではなく、誰かと生きること。想いを重ねて生き続けること。
どういう出自か。誰が作ったか。そんなことはどうでもいい。
最終章の畳み掛けは、さすがだった。
エリシアとリリィの言葉を、リリィへ指し伸ばされた手の数々を、僕は忘れないと思う。
彼等は生きていた。5年前のニューヨークでも、地下世界でも。
それだけで十分だ。彼等は生きていたよ。理由なんて要らないんだよ。
彼らの青空が、何時までも続くことを願う。彼らの物語が、何時までも続くことを願う。

閑話休題。
このシリーズは、一貫している部分もある。というより、一貫している部分の方が多い。
世界観が共通しているし、そのバックグラウンドが強固で緻密なものであるのは確かだ。
だけど、その作品毎の色は違う。描かれる内容も、少しずつ異なる所がある。
変わらない大事なもの。何より、大事な誰かに向けて、手を伸ばすこと。諦めないこと。
そこに、僕はどうしても惹かれてしまう。ああ、僕もこんな人間になりたいと強く願う。
と同時に、色々試そうとしていること。描きたいことが、一杯あるのだと思う。
この世界は、まだ終わらないよ。僕は、毎年この時期を、何時までも楽しみに待つんだ。
今年も最高の時間を過ごせたことに、心からの感謝を。本当にありがとう。ありがとう。
また来年もスチームパンクシリーズに触れられることを願って。

雑文。
今回最も驚愕したのは、リリィとAにHシーンがあったこと。
スチームパンクシリーズのファンの方なら、僕がどれだけ驚いたか分かるのではないか。
その内容は、シリーズのファンの方でなくても、必見だと思う。お勧めは出来ないけど。
思わず笑ってしまうやり取り。そして、ことを終えたあとの心温まるやり取り。
この世に数多とあるHシーンでも珠玉の出来ではないか。決してお勧めは出来ないけど。
このシーンを書いた時に桜井氏がどういうテンションだったのかを、今は考えてしまう。