ああ。ああ。想いは消えないとも。
これまでと違うのは。同じだけど、違うのは。
それは、登場人物の多くが、すでに死者であるということ。
ニューヨークで死に、更に地下世界で苦しみ、なお強く生きている人たちだということ。
勿論これまでにもそういう人はいた。
黒い人にしても、クリッターにしても、Mも、ヒルドも、レオも。最たる存在がキーアだ。
生きていても、辛いことはある。インガノックの変異した人たちもそうだ。
だから一概には言えないけど、それでも彼等は生きていた。辛くても、生を繋いでいた。
ソナーニルに登場する彼等の多くは、すでに死んでいる。だから、繋がるものなどない。
夢を見ても、愛を語らっても、そこには何もない。意味など、あるはずがないのだから。
その可愛らしい外見とは異なり、中身は、ハードだ。心が軋むのが分かる。
思い出すのは、ANGEL BULLETのセーラとクラウスと、ヒロインの彼女たち。
特にセーラが消えてから。その後の数年は描かれていないけど、それは地獄だったはず。
その絶望とも言える時間をテーマに描いたのが、この作品の彼等の物語だったのかなと。
大事なものを失ってしまった人たち。改めてこのシリーズに共通することだと実感した。
では、本当に意味がなかったのか。
人が生きていること。一人ではなく、誰かと生きること。想いを重ねて生き続けること。
どういう出自か。誰が作ったか。そんなことはどうでもいい。
最終章の畳み掛けは、さすがだった。
エリシアとリリィの言葉を、リリィへ指し伸ばされた手の数々を、僕は忘れないと思う。
彼等は生きていた。5年前のニューヨークでも、地下世界でも。
それだけで十分だ。彼等は生きていたよ。理由なんて要らないんだよ。
彼らの青空が、何時までも続くことを願う。彼らの物語が、何時までも続くことを願う。
閑話休題。
このシリーズは、一貫している部分もある。というより、一貫している部分の方が多い。
世界観が共通しているし、そのバックグラウンドが強固で緻密なものであるのは確かだ。
だけど、その作品毎の色は違う。描かれる内容も、少しずつ異なる所がある。
変わらない大事なもの。何より、大事な誰かに向けて、手を伸ばすこと。諦めないこと。
そこに、僕はどうしても惹かれてしまう。ああ、僕もこんな人間になりたいと強く願う。
と同時に、色々試そうとしていること。描きたいことが、一杯あるのだと思う。
この世界は、まだ終わらないよ。僕は、毎年この時期を、何時までも楽しみに待つんだ。
今年も最高の時間を過ごせたことに、心からの感謝を。本当にありがとう。ありがとう。
また来年もスチームパンクシリーズに触れられることを願って。
雑文。
今回最も驚愕したのは、リリィとAにHシーンがあったこと。
スチームパンクシリーズのファンの方なら、僕がどれだけ驚いたか分かるのではないか。
その内容は、シリーズのファンの方でなくても、必見だと思う。お勧めは出来ないけど。
思わず笑ってしまうやり取り。そして、ことを終えたあとの心温まるやり取り。
この世に数多とあるHシーンでも珠玉の出来ではないか。決してお勧めは出来ないけど。
このシーンを書いた時に桜井氏がどういうテンションだったのかを、今は考えてしまう。