これは…。惜しい。実に、非常に惜しい。
シナリオに関しては、まあこんなものでしょう。そう考えられればそれほど目くじら立てる問題ではなさそうです。個人的にはこのような韜晦型（？）な主人公はとても好みなため、結構満足しています。まあ、構成や見せ方の問題でそんな主人公の魅力が十分に描写しきれていないと感じるところもありますが、これ以上主人公を前面に押し出すと、逆にいやみになってしまうような感じも受けます。これはこれで。
テキストは。誤字、誤植多し。いささか多すぎる。間違い探しかというくらいに。スタッフの国語力が問題なのか、それとも面倒臭くなったのか？とにかく、一遍見直せばすぐにわかるような誤字の山を築くのはいかがなものか。ちゃんと変換しろといいたいです。
エロは、よかったです。いいねー。非常に濃い。久々に”エロゲー”やったなーという感じがしました。ヒロイン全員若向けなのがいささか残念でしたが、まあよしとしましょう。あと、某中の人が、エロ部分だけ異常に力が入っていたのは笑えました。もう絶叫でしたからね。なんにせよ、がんばることはよいことです。お疲れ様でした。
そして問題のゲーム部分。惜しいです、実に。まず、攻略性が結構低いということ。苦手な人には大変かもしれませんが、簡単すぎて物足りませんでした。そして、マップ数も足りないような気がします。攻略ヒロインの数が四（五）人なのに二周でフルコンプ出来てしまうのはいささかもったいないですね。さらに細かいことを言えば、あまり意味の無いパラメータが多すぎるということ、装備品としてパラメータに影響を与える以外、ほぼ用途の無いアイテム群、多分メモリ不足だと思うのですが、512Mでいきなり挙動不審になるシステムなど、数え上げれば枚挙に暇がありません。ただ、本当に問題なのは、このゲーム部分がADV部分とほほ切り離されてしまっているということです。
一応、各ヒロインを攻略するためにクリアしなければならない遺跡、というものは存在します。しかし、遺跡とヒロインの間にはほぼ何の関係も無く、ヒロイン用の１～３個の遺跡さえ攻略すればあとは必要ないというのであれば、遺跡潜りはまさにただのつけたし、必要の無い作業に成り下がってしまいます。作業に楽しみを見出せればそれはそれで結構ですが、上記のようにいささか問題の多いつくりになっていますので、心から楽しめるとは言いがたいのも切ないところです。
余談になりますが、少し前にEushullyの”峰深き瀬にたゆたう唄”というゲームをプレイしました。あのゲームは一周目以降（一周目からでも）ある意味強烈な作業というところがありましたが、それでも、ADV部分と迷宮潜りはあくまで連動していましたし、意味の無い、と感じる余地などどこにもみあたりませんでした。まあ、あのゲームに関してはあくまでメインはRPG部分ということもあるのでしょうが、二つの部分が高度に融合していたという意味では、比較対象としてなかなかに凄みを感じます。
べつに”たゆ唄”ほどに力をいれてSLG部分を作れとは言っていません（出来ればそれに越したことは無いでしょうが）。ゲームの方向性も違いますし、SLGとADVのどちらがメインでサブかという位置付けの違いでもあるでしょう。ただ、この”連動”というところにおいては、見本とするところもあり、また、ひとつの完成品のゲームとして、メーカーさんにはもう少しだけ、考えてほしかったというところです。
とまれ、エロを売りとするエロゲーとしてはなかなかにクオリティが高いですし、絵も声も結構がんばっていますのでSLG部分をADV部分の箸休め程度に考えるのならば、一度試してみてもよろしいのではないかと愚考いたします。