生きるというのは、天使のように無垢な心を傷つけられ、汚されていくということ。
ゲーム展開は、主人公の初恋相手、安芸紗倉が、高校生の時にレイプされてから
心と身体のバランスを崩し、破滅への道を辿っていく様が描かれる回想がメインになっている。
「彼女はあまりにもお人好しで不用心過ぎる、こうなるのも仕方ない」という見方もできるが、
陵辱シーンから日常生活のシーンに至るまで、担当声優、桃也みなみさんの熱演も相まって、
紗倉の痛み、苦しみが生々しく伝わってくる描写がされていて
「どうにかしてあげたい」「助けられないのだろうか」と深く感情移入してしまった。
だが「どうすれば彼女は救われるのか?」という考えもプレイ中頭をよぎる。
身も心もボロボロになり生活に困窮している紗倉を、まっとうに社会復帰して生きながらえるまで
援助し続けるのは、主人公のような普通の大学生には難しいし、
援助できる時だけ援助するというのも、される側にとって過酷すぎる。
また、紗倉に関わるサブキャラ達の、表面的な励ましや慰めの言葉、辛辣な正論も
彼女を立ち直らせるどころか余計に追い詰めていくだけだった。
結局、劇中で榊樹里が言っているように、どんな過酷な境遇にも対応し生きていける強さ、
柔軟性を本人が身に付けるしかないのだろうか・・・などと、色々考えさせられる内容だった。
どの選択肢を選んでも既に手遅れで、悲しい結末を迎えてしまう鬱ゲーだが、
だからこそ強く印象に残る作品となっていると思う。