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oniyukiさんのid[イド] -Rebirth Session-の長文感想

ユーザー
oniyuki
ゲーム
id[イド] -Rebirth Session-
ブランド
root nuko
得点
70
参照数
711

一言コメント

ストーリー自体は非常に楽しめた。ミステリーとしての出来は賛否分かれそう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

無人島に置き去りにされた12人の男女+こっそり潜入した主人公が
奇怪な事件、連続殺人に立ち向かっていくという、
所謂クローズドサークル物ミステリー。

この種のジャンルは、以前プレイした某作品が
攻略サイトと首っ引きでやらなければまともなエンディングを見られないほど
難しかったので敬遠していたが、
本作は公式サイトやCGを見て興味を引かれたので再度手を出す気になった。


ゲームシステムは、選択肢によって分岐していくオーソドックスなタイプ。
ときおり挿入される探偵パートは、「見る・調べる」「移動する」といったコマンドを
数回ずつ選択して条件を満たすとストーリーが先に進むというもので、
大きな分岐やエンディングへの影響は(おそらく)ない。
一部キャラのHシーンで眼鏡あり・なしの変化が起こる程度。

プレイヤー自身が謎を解いて犯人を当てるようなゲーム性ではなく
本格推理ADVを期待すると、かなり物足りない。
反面、難易度は低く、自力でも充分トゥルーエンドに辿り付けると思われるので
ヌルゲーマーな自分にとっては丁度良かった。
島の地図や施設見取り図を活用する場面がないのは寂しかったが。


ストーリーは中盤辺りで、施設を離れて島からの脱出を目指す離脱ルートと
そのまま施設に留まるべきとする残留ルートに分かれる。
どちらに分岐するかのフラグを含んだ選択肢が現れるので、第二の事件が起きた辺りの
セーブデータを残しておくと良い。
(上手くフラグポイントが均等になれば、どちらのルートにするか選ぶ事も可能。)

両方のルートのエンディングを見る事で、トゥルーエンドへのルートが開放されるが、
勘のいい人は、そこまで読む前にオチに気づいてしまうかもしれない。
また、ストーリー自体も、足を銃で撃ち抜かれたのに走って逃げ切れたり、
刃物で刺した筈なのに返り血がどこにもついていない等、
粗が多く不自然な部分がところどころあるのが残念。
ラストのネタばらしも「おおっそうだったのか!」というより「なーんだ・・・」という
感が強かったが、少なくともプレイ中は先の展開が気になり、正体の知れない殺人犯に怯える
恐怖も充分感じられたので、読ませていく力のある内容だったとは思う。

==

Hシーンは、自慰をしているキャラに遭遇してしまい、互いに見せ合ったり
媚薬でムラムラしてしまったキャラの興奮を鎮めてあげる等、
少々強引にねじ込んだ感があるシチュが多かった。
中年女性の辻はともかく、紗江に本番シーンがないのも痛い。
プレイ中は、いつ事件が起こるか解らない不安感と隣りあわせなので、
大抵は一通りプレイし終えてからシーン回想を使うことになると思う。
鏡子の媚薬エッチ等は色っぽくて良かったので個別ルートも欲しかった・・・が
色恋よりもストーリーに重きを置いた作品なので仕方ないかもしれない。

==

最後に自分がプレイしていてよく解らなかった、疑問に思った部分をいくつか。
単に見落としがあったり考察が足りないだけかもしれないが。
ノベルゲームは小説と違い、気になったページをパッと開いて読み返す事もできないし
自分でメモやスクショを保存しないと、いつ誰が何をしたのか忘れてしまう。
よほど親切な解説、補足システムを付けない限り、複雑なミステリーには
向いていないのではという気がしてしまう。

・島に到着した後、クルーザーを運転して帰って行ったのは誰?
(まだ他にも主催者側の人間がいるという事で次回作を匂わせる伏線?)

・残留ルート、森の中の事件現場での探偵パートで、落ちている眼鏡の破片の意味。
「サエ」とダイイングメッセージがあるのに、紗江以外の眼鏡キャラを疑わせる遺留品を残したら
偽装工作だという事がバレバレでは?ますます混乱させるのが目的なのか。
平林が残りの食料を持って逃走した理由、
教会が何者かに荒らされた事件の意味も謎。

・離脱ルート、教会での事件の詳細。
同じ部屋で人が寝ていて、外には見張りが立っている状況で殺すのが謎。
鍵を開けて教会奥の部屋を調べていた理由、
一体どんな方法で正面から心臓を撃ち抜いたのか、
犯行後に投げ込まれた小石は誰がどうやって投げて奥から物音がしたように思わせたのか、
拳銃は紛失したと見せかけてどこかに隠していたのか等。
殺害動機はトゥルーのルートと同じだと思うが、
離脱ルートでは全く違う状況、場所で殺されるので、
自分の読解力では最後までわからずじまいだった。


以上。
2016/11/24にPS VITA版も発売されるようなので、そちらもチェック予定。
新キャラ以外に追加要素、解らない部分のフォローがあるのかどうか、楽しみです。