普通レベルの楽しい作品。
前２作、ここのブランドを第一線にのし上げた作品と比べて決定的にないものが、私はシンプルに「かわいさ」であると感じました。勿論大多数の適当なエロゲーと比べれば間違いなく多くのものが高いレベルにあるとは思うのですが、このブランドが持っているトップレベルのテキストの面白さを女の子の様々な魅力と絶妙に融合させ昇華させた前２作と比べると、今回は少しだけ影を潜めてしまったかなという印象を受けます。玉森さんや実咲ちゃんクラスの身悶えしてしまうようなキャラクターは、残念ながら今回いないと私は思いました。
でも私はここの作品はいつも楽しくて本当に大好きです。今までも基本的なテーマや設定を家族や家族愛に置く傾向はあったと思いますが、今作ではこれまで以上にはっきりとそれらに重心を掛けてきました。この家族愛というテーマ、恋愛と並列に進行させようと思えば思うほど色んなものと縁遠くなってしまい、そんな中無理矢理シナリオを作ろうとすれば、リアリティを喪失させたりお話が重くなったりというお決まりのパターンに陥りがちで、ともすればエロゲーにはあまり向いていないカテゴリなのかもしれません。
しかし、それを承知した上で、あえて今回も続けてチャレンジなのでしょう。「うちの描く家族はこういうものだ（もしくはここまででいいのだ）」と独善を貫く姿勢は、変わらず今後の作品とブランドの方向性をしっかりと提示してくれますし、それが今回のようにたまたま作品の印象を若干レベルダウンさせてしまったとしても、一度同調してしまった私のようなファンは基本的には離れられません。掛け合いの楽しさを書ききる力、自信と独善を前面に出し強引に成り立たせたような今作ですが、少なくとも私はつまらない事は決してないと思いました。
注文を付けるとするならば、もっと長く遊ばせて欲しかったという所です。次回もガンバレ。