ツンからデレ、ヤンからデレなど色々ありますが、生意気からデレという新機軸を打ち出すには、志も力量も情熱も、ちょっと足りないかなと思いました。
特に情熱。既にいくつかあるパターンのギャップ萌えの一種に新しい息吹を吹き込まんと謳ったこのタイトルに対して、このくらいでは一体何になるのかと思いました。コンセプトがはっきり示されたこういった作品というのは、制作側にとっても我々にとってもわかりやすく、ある程度作りやすい部類なのではないかと思いますし、過去のそういった作品たちも普通はちゃんと方向性を伴い、表現したいこと、どこにユーザーを刺激するポイントを設定するか、最低でもそのくらいは示せている場合が多いと思うのですが、残念ながらコレはちょっとダメな気がします。仮にそういった落差やギャップではなく、普通の恋愛、普通のイチャラブを楽しもうとする観点で見たとしても、バラバラの話をただ並べただけのシナリオからはいくら後半イチャイチャしてくれようにも整合性が薄く、入り込むことがとても難しい。エッチなCGに背景もキレイと、グラフィック側は相当頑張って仕事をしていると思うのですが、結局残念な出来に仕上がってしまった、そんな作品と言わざるを得ないと思います。
抜きゲーなのかというとこれも微妙な気がします。箱の中にティッシュが入っており、これは一発めの体液くらいはこれで受け止めれというメッセージなのでしょう。確かにCGはとてもエッチです。にゅうりんがおおきくてすごいです。ですが、艶かしさや色気、背徳感などといったセックスにおける内面の描写が殆どなされていないために、ただ絵と声があるだけのようで、抜きを前面に出した作品群と比較してエロスが際立っているとも思えません。尺も枠もそれほど多くはない(各6~7個)と思いますし、ではどこに良さを見出せば良いかを考えましたが、一つだけ私が感じたのは、少なくともユーザーに喜んでもらおうとする意志だけは漠然とながらあったかなとは思います。タペストリーもえっちな色紙もなんかいい感じですし、シナリオではなく書き方、テキストの面では、昨今のバカゲーの良い流れをそれなりに汲み、頑張ったんだろうなと思うラインではあったと思います。ですが全体的にはライターさんの力量、経験が足りていないためにこのくらいになってしまった、もう少し意志や志を持って突き抜けて欲しかったなと私は思いました。
ツンデレの黄金比は一説には7.4:2.6と言います。こういったコンセプトの作品はデレに入った瞬間今までのツン、この作品でいうと生意気成分を一気に失う事がしばしばあるのですが、それはそれでつまらない。ですがこの作品はそこにすら到達出来ていない、狙った方向がよくわからない、ぼやけてしまっている。厳しいですがそう思わざるを得ない出来だと思います。変にシリアスな所があるのもなんかなあって感じですし、何より、到着したその日に感想が書けてしまうのがとても残念です。次は頑張って欲しいです。