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omochiさんの夏雪 ~summer_snow~の長文感想

ユーザー
omochi
ゲーム
夏雪 ~summer_snow~
ブランド
Silver Bullet
得点
85
参照数
1166

一言コメント

女の子のからだのすごいをちょっとだけ見られたので満足です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

子供の頃から成長を共にし、やがて成熟し恋になる。随分前なのですが似たような作品に「夏少女」というものがありました。年代ごとに立ち絵があり、ゆっくりと時間をかけ大人になっていくさまがしっかりと描写されていて、彼女らの恋愛が成就することをまるで自分の悦びのように感じることが出来るというなかなか珍しい作品でした。私はこの手法こそ幼馴染みゲーにおける王道にして唯一の真実であると思っており、人間関係が希薄になって久しい昨今において、無くしてしまった繋がりや思い出を補填しようと止まない、幼馴染み属性=迷子とも言えるのでしょうか、かような我々に対する決定的な手法であると思わせて頂いております。

その夏少女も、この夏雪も、作品のスケール的に少し言い過ぎだとは思うのですが、幼馴染みとはこういうものだという一つの答えのような良作であると思いました。夏少女になくてこの作品にあるのは遠い過去の因縁なのですが、代わりに夏少女には純粋な成長を楽しむ事が出来るという、ある意味「何も無さ」がありどちらかというと私は後者の方が好みです。ただ、この夏雪においては過去の因縁についてはさほど大きな比重はないように感じます。必要なかったんじゃないかなというか、それ以上に、同じ時間を共有し、またいかにして助け合ってきたかという繋がりやエピソードの方にボリュームは割かれており、最後の方で若干暗めの話になった時も私はあまり重さを感じませんでした。むしろそんなよくわからない事よりも、徐々に膨らんでいくおむねや、むちむちと色気を増していく太ももやにのうでを、成長という名の下に礼賛するという、とても崇高な視点で楽しむことが出来たのではないかと思っております。

昨今のエロゲにおいては、まるで符号のように「幼馴染みである」という設定だけを付加している作品が非常に多くみられます。少年少女だった二人がいかにして男と女になり、やがて惹かれあっていくか。例えば性別に由来する発育のギャップや、大人になる事に対して戸惑いを感じつつも、抗えない成長の波に飲み込まれていくという思春期特有の精神の不安定さ。無意識のうちにそれを乗り切った後にいつの間に見えるようになっている「男女」という関係性。そこでやっと始まるか始まらないかという二人の恋。この辺りの多感な時期をいかに説得力のあるものにするか、こここそ幼馴染みとの恋愛を決定付ける要因であろうかというのに適当なものが多すぎるのが現状だと思います。そのおざなりの設定は結局、幼馴染みという絆を持つ者同士が惹かれあったという、我々にとって当たり前と言うべき必然性を感じさせられずに、「幼馴染みなんだ、そっか」というただの認識で終わらせてしまいます。エロゲーを制作する事が出来るラヴハンターがこの属性の重要性を理解していないはずがないのに、日々に忙殺されその程度の幼馴染み描写で妥協してしまうなんて志が低すぎるのです。幼馴染みを作り上げるならば、それが一体何なのかという事を深く落とし込み追求して行って頂きたいものです。

この夏雪には、女の子の成長って不思議だなと、別に性徴がテーマでないにも関わらず暗に魅せるという高度な技が隠されております。純葉ちゃんのおむねが露呈してしまった所などはまさに中学生の青春のワンシーン。ありがとうございますという気持ちが溢れました。