ねこ信者だからこその評価の難しさ。何て書けばいいのかわかんないけど…
お気に入りのメニューのある定食屋。私の場合はウナギを卵でとじたうな玉なのですが、さてとまた食べに行こうと思って行ってみたらオヤジに「いやね、ちょっと今日はそういうメニューじゃなくて前から勉強してた地中海料理をいっそ出してみようかと思っててねえ。というわけでほら、今日のメニューはコレなんだけど」と渡されて見たものはパスタやパエリアやワインやらで、まあ俺の食いたいのはコレじゃないんだけど、美味けりゃいいか、って食ってみたらまあそこそこ、他のお客さんも概ね美味しいって言ってるし、まあいっかもっと食べよう。うん、コレはコレでいいなあ。アレ?でもなんかおかしいぞ…、そうだ、俺は和食を食いたいんだあ!
こんな感想のゲームでした、よくわからなくて申し訳ないです。
押入れを漁ればねこサントラやまじかるひよりんぬいぐるみや直筆サイン入りラムネが出てくる、そしてHNにねこねこの作りあげた金言「おもち」を名乗るほどにねこ好きな私なのですが、正直このアンバークオーツは他のメーカーが出したとしたら途中で止めていたと思います。色んな意見があるでしょうが、私は基本的に女の子がバトルに参戦するゲームは好きではありません。女の子は恋をするものであり、可愛くあり、エロくある。その三つをいかに融合させてキャラを作り上げ、整合性のあるストーリーと組み合わせて昇華させるか、個人的に私はこの辺がエロゲーの一番大事な要素だと思っており、名作・秀作と呼ばれる作品はそれらが見事に機能しているものであると考えます。(やったことはありませんがfateなどは戦う女の子を見事に描いた素晴らしい大作であるという事は色んな情報を見て聞いてなんとなく知っており、無論それらが一ジャンルを形成しているということは理解しております。)しかし、個人的な嗜好ではありますが、折角綺麗な恋愛や微笑ましく楽しい絡みなどこちらを引き寄せる描写をいくら描けていても、必然性がよくわからないままに女の子にとって非日常性の高い「バトル」に安易にもって行ってしまうことがあると、作品からリアリティが消えてしまうように思うのです。
またこのブランドはその辺の事は十分承知しており、その上であえてこういったまた新しい機軸のゲームを作ったという事も今の時勢ですから勿論理解は出来ます。でもやっぱり餅は餅屋、これはねこはバトルを書くなという意味でなくそういうのは他にまかせておいてもいいんじゃないか、チャレンジも良いけど、得意なものをとことん追求するのがいいのではないかという意味において思うのです。
信者の私がこのゲームがダメだと思った理由は上記と下記の主に三点です。
作品中「既視感」という言葉が2~3度出てきましたが、正直言いましてこのシナリオも大分それを感じさせるものがあったと思います。カマキリの手の異神は寄生獣、これはザコキャラの攻撃方法や形に関するものでありスルー出来るのですが、もう一つ、下の方のエピソードで過去に遡り敵から逃げると言う所で私は「AIR」の既視感をどうしても拭えませんでした。物語の根幹を成すこのシーンでです。様々なエロゲーが氾濫し、まったく目新しいものを作り出すという事が至難の業である事は間違いありません。ですがAIRのあの展開はあまりに有名でまさに作品のキモとなる所であり、知らないエロゲーマーは殆どいないと思いますし、また私はkey信者ではありませんがあのシーンはアレはアレで完成されていると思うのです。平凡な日常を平凡な日常で美しく彩ることが出来る数少ないメーカーのコットンがこのタイミングでこれをやるしかなかったのか、またそういった独自路線を突き進むコットンのスタッフを以ってしても、これしか思いつかなかったのかと。しかもやっぱりあんまり上手じゃないなとかも思っちゃいました。
そしてもう一つ決定的なのはシナリオの繋がりの悪さ。私は最初智をクリアしたのですが、一人クリアしたらなんかアナザーエピソードやらなんやらがぽろぽろ出てきてしまい、続ければいいのかなと思い選んでいってたら、いつの間に最後にとっておこうと思っていたなゆたルートに途中をすっとばしていきなり入ってしまったと言う事です。なんの選択肢も取らないで我慢してきたのに、いきなり主人公とチューをし始めやがったのですから速攻で閉じましたよ。ちょ待てと。
これは私はコットンの今までの最大の大失態だと思いました(みずいろの件を除いて)。今まで、例えば些細な出来事や一見なんでもないようなただの物が二人にとってのキーアイテムとなるような、またキャラにたった一つ口癖を与える事だけで何にも変えがたい魅力を醸し出すような、そんな緻密な描写でユーザーを魅了してきたこのメーカーにおいて、過程を無視してしまうこのような展開が許されるなんて。何故大事な各エピソードの整合性を取らなかったのか。それならば一本道にしてでもお話を繋げなかったのか。あえてそうしたのだとは思いますが、この形をとった事に対する理解がまったく出来ず、折角のゲームを台無しにしてしまう愚策であったと、残念ですがそう思わざるを得ません。
時代は変わるものだとは思うのですが、変わって欲しくないものもあります。作品中に出てきた素晴らしい言葉、「記憶は消えても、想いは消せない」。この言葉、制作者様達は是非反芻して欲しいなと思いました。次回作はのんびりまったりした作品が出るでしょうし、それには可愛らしく楽しい恋愛が見事に描かれる事でしょう。勿論100%買いますし、ココでは高得点を付ける事になります。コットンはまさにそういうゲームを作ってこそ本領が発揮されるという事はみんな知ってる事なのです。だからこそもっともっと期待したい。自分の無くしてしまった時代や思い出を揺さぶるような甘く切なく美しい恋の話をです。