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oldreavesさんのDARCROWS ~ダークロウズ~の長文感想

ユーザー
oldreaves
ゲーム
DARCROWS ~ダークロウズ~
ブランド
ALICESOFT
得点
75
参照数
1532

一言コメント

「質より量、長さよりバラエティ」な抜きゲー

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


Fanzaサマーセールで500円だったので買った。
アリスソフトの古典的な陵辱調教モノの名作という評判目当て。

見たエンディングはティアリスエンド・デッドエンド・処刑エンドの3つのみで、TRUEすらも見ていないが、回想できるHシーンは100%回収したので一区切り……というか抜きゲーとしてはクリアってことでええやろの精神で感想を書く。


これまでプレイした陵辱調教モノはCLOCKUPの「夏ノ鎖」と「Euphoria」の2作
これらと比べて「ダークロウズ」の大きな相違点は

1. 舞台が現代日本ではなく中世であること
2. ノベルパートのみならずゲーム性があること

だが、2点ともに自分の好みには合っていなかった。
(それは始める前に薄々わかってはいたが、エロゲ初心者として実際にやってみなくちゃわからない大科学実験の精神で挑んだ。というのは建前で、ワンコインで短そうだったのが決め手だ)

前者の舞台設定はともかくとして、後者のゲーム性がかなりキツかった。
基本的な流れは、毎日の「調教」でヒロイン3人のレベルを上げ、毎週末の「仕事」で資金を稼ぎ、その金を使って傭兵を雇って毎月末の「戦闘」に望む──というルーチンが3回(3ヶ月)繰り返されるというものだが、これらいずれのステップにも確率・運の要素が絡んでおり、最効率を目指すにはロードを繰り返さなければならない。ソシャゲでもそうだが、こうした周回作業ゲーが本当に苦手で、やっているうちに虚しくなってくる。

そして、1999年のゲームだから仕方ないのだが、やっぱり現代の水準に照らすとUIがかなり不便だった。
周回前提の作業ゲームなので、UIの貧弱さはクリティカルにゲームの面白さに直結してくる。
セーブできる枠が3個しかないのもキツいし、全体的なローディングも遅い。また、テキストのログを一切さかのぼれないのが本当にキツい。
スキップ機能はあるが、未読部分も並べてスキップしてしまうので、初めて見るイベントも飛ばしてしまうことが頻繁にあった。
また、いちばん嫌だったのは、キャラクターのボイス音量が小さすぎてBGMにほとんどかき消されてしまっていること。音量の調節機能が無く、ボイスとBGMの音量比がいじれない(よね?)ので、せっかくの台詞も聞こえず、楽しみを大幅に減ずることとなった。こんなストレスを感じるくらいならいっそボイス無しのほうが良かったまである。(でもやっぱり台詞が聞きたいよ)

あと、これはゲーム自体の感想ではないが、古いゲームだからなのか、エンディング条件の情報が複数の攻略サイトでバラバラで、しかも自分で実際にやってみるとどの記述にも合わない挙動をしてストレスフルだった。こういうのエロゲあるあるなんですかね。


ここから抜きゲーとしての所感を書く。

まず、 本作を一言でいうと 「質より量、長さよりバラエティ」 これに尽きる。

ロープライスゲーにしては、3人のヒロインそれぞれに50シーン以上とめちゃくちゃ大ボリューム。
といっても、「調教」は「胸愛撫」とか「SM」といった項目ごとに4回ぶんイラスト差分を使いまわしている。
もちろん、同じ調教内容でも徐々に堕ちていく過程が丹念に描かれていれば差分を使い回す意義があるというもので、本作もその過程をそこそこ丁寧に描いてはいるのだが、にしてもやっぱり物足りなさは残った。もっと色んな角度、色んな構図で見たかったという欲が消せない。

そして、全体的に1シーンが非常に短い。特に、街へ繰り出して客の相手をする「特別な仕事」は本作の抜きシーンの目玉だが、これすらも1, 2分で終わってしまう。
単純な長さだけでなく、プレイ内容としても、いよいよ盛り上がってくる──というところで終わってしまい肩透かしをくらうことが何度もあった。
確かにプレイ内容のバラエティはまぁまぁあるのだが、そっちに入れた力を少しでも各シーンの充実にあててほしかった。

ヒロインは、王妃エレーヌ、その娘にして第二皇女ユリーシャ、そして亡くなった前王妃の娘にして第一皇女ティアリスの3名がおり、自分はティアリスが断然好みだった。最初はずっとティアリスしか調教しなかった。
エレーヌは人妻・大人の女性枠、ユリーシャはややロリの可憐で大人しい天使少女枠なのに対してティアリスは正統派の金髪幼馴染姫ヒロイン。
もちろん3名ともに王族であり、高貴な身分ながら娼婦として調教されるギャップはどのヒロインでも見どころだった。

ティアリスは主人公の将軍クロードに幼い頃から想いを寄せているらしいのだが、クロードは全然その気が無いのが良かった。
クロードは基本的に、親友を死なせ自身を裏切った国王への復讐心(当てつけ)で姫たちを調教しており、ヒロインたちへの直接の執着が無いのが大きな特徴だろう。
またルートによっては、召使いのリゼルや敵国の女将軍レヴァリィに対する複雑な想いを抱えることもあり、メインの姫3人が蚊帳の外であるのが面白い。
メインヒロインが物語上では蚊帳の外、というのはぜんぜん悪いことではなく、ストーリーの根本に参与できないままに娼婦として使われている、というのは調教モノとしての設定にも合致し、彼女らをより魅力的にしているとして十分に評価に値する。
(だから、各ヒロインといい感じの関係に収まるエンディングはまったく好みでない)

前述したように、同一の「調教」項目を何度も繰り返すことで、はじめは初々しく嫌々に調教されていたヒロインが、4回目には "淫乱" になって嬉々として調教を受ける流れは嗜好に合わなかった。・・・・・・せーの、「「可哀想じゃないと抜けない〜〜!」」
(しかし、そうして淫乱に開発された様子を見た後に、「仕事」でかなりアブノーマルなプレイをさせられて悲鳴を上げているのを見るのはなかなかにギャップがそそるのでやっぱり必要かもしれん)

バラエティに富んだプレイ内容で、どれもが非常に好みだったわけではないが、個人的にお気に入りのシーンを幾つか挙げる。


・ティアリス
正統派な気高い姫で、ところどころクロードへの長年の想いを発露させる感じがすき。
調教では、自慰や肛虐(人形)も良いが、「SM」鞭打の2回目、犬真似をさせるところがいちばん好き。仕置調教の看護婦プレイや官能小説の朗読も好き。
仕事では、雌犬放尿・農耕奉仕・娼婦男誘・媚肉出卵・展示人形あたりがこの順で好き

・ユリーシャ
おどおど天使系かと思わせておいて割とHに興味・耐性のある感じだったのがやや残念だった。ただし逆レイプやS女はその性格を逆手に取っていてエロい。
調教では、SMの蝋燭、城内調教のワイングラスと野外プレイの両方、淫乱調教の逆レイプ、処女売却が良かった。
仕事では、操り人形・マゾ男責め・女体灯明・野外交姦・汚獣施薬・愛猫恥戯らへん。

・エレーヌ
一人称が「私(ワタクシ)」の人妻にして現王妃、客観的にエロいのはわかるが性癖どストライクではなかった。
調教では、特殊調教のパイズリ、仕置の囚人姦、場内調教の食卓下プレイと謎の獣姦、ユリーシャとの3P乗馬遊戯が良かった。謎の獣はマジで謎で「えっ、この世界ってそんなガチ異世界ファンタジーなの!?」と世界設定にビビった。魔法とかはないから普通に架空の似非中世モノだと思ってたので、見たことない生物とかが出てくると困惑する。
仕事では、初っ端の関所プレイが意外性もあって良かった。他にウマ娘(縄上)・娼婦教育・体臭プレイも良かった。あと薬剤師との妖虫プレイもマジで謎の虫で「どんな世界観※?」と困惑した。
※誤用

・その他
レヴァリィの奴隷プレイは本作でもいちばん過激でいちばん好きかもしれない。



総評

ゲームのランダムネスと周回性、貧弱なUI(特に音響)と、やっている間はかなりイラついていたが(抜きゲーでイラついたら終わりだと思う. 人として)、それでも使えるシーンはそこそこあったし、アリスソフトの中世陵辱モノの古典をプレイできただけでも割と満足である。
古い(90年代の)エロゲってこういう感じだったんだ〜という教養履修としても良いし、自分はゲーム要素の強い作品が苦手だから、ほとんど読書に近いノベルゲーを好んでいると再確認できたのも収穫だ。

同じアリスソフトの陵辱・娼婦斡旋ゲーの最新作「ドーナドーナ」は主にデザイン面でめちゃくちゃ興味があるが、ゲーム性は本作と近そうなのでやや期待値を下方修正した。
※ドーナドーナに似たアリスソフトの過去作といえば、本作よりむしろ、同じく99年の「大悪司」だろう。実はこっちも500円で同時購入し、ちょっとだけ試しに遊んでみた。確かに、戦略シミュレーションゲームということで本作よりももっとゲーム性の比重が大きく、そして総プレイ時間がめっちゃ長いことから尻込みしている。(あと主人公のマチズモ感がすごくて新鮮だった)

本作の経験を踏まえて、より自分の好みの抜きゲーを選ぶ ""眼"" を養っていきたい。