ErogameScape -エロゲー批評空間-

oldreavesさんのその女性は、父の愛人だった。の長文感想

ユーザー
oldreaves
ゲーム
その女性は、父の愛人だった。
ブランド
ふじきの
得点
69
参照数
200

一言コメント

簡潔な物語のなかに幾つかの深長なテーマとモチーフがうまくまとまっている小品。寝取られではない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・プレイ時間
1時間20分



・プレイ中のメモ
初っ端からまたノクターンで草 レパートリーがなさ過ぎる
宮沢賢治?
父は天才画家。苦手なエロゲの匂いがプンプンする。サク詩、水夏2章……
最初に父が死んでしまうのか。貴重な寝取り役なのに…… 他の男が代替するのか、それとも過去だけを見て進むのか。
「お姉さん」の部屋と同じ背景素材〜〜 使いまわし〜〜
加藤沙織さん。美大生
「僕」も大学生なのか。20歳。沙織さんは21歳。一個上!
お母さん生きとるんかーいw とっくに離婚していたのか別居してただけか。
今度は「絵画」というメディアを経由してヒロインの痴態を目の当たりにする。
実際に裸にしていやらしい姿をモデルに写実的に描くよりも、まったくの想像だけでリアルとしか思えないものを描いてしまうほうが天才画家として格上だと思うけどな。「父の緻密で繊細な筆遣いは、全てが事実であることを物語っていた」って、父の才能への信頼に支えられた台詞なのだろうけれど、同時に父の才の限界をも定めてしまっているような。
ふとももドアップスチルきたあああ ・・・遅かったじゃないか……
ヒロインの口から別の男との行為の子細を聞くパート回収
沙織さんは父とする前にも経験があったと。
「先生はヌードを描いた女性を必ず抱く」……抱いた女性を必ず描くわけではないのかも。
このサークルの作品のヒロインは絶対にほくろがある。全員同じ。でもこのひと、これまででいちばんHに積極的だ。自分からグイグイ求めていく。お金とか契約とかの理由なく、淫らなこと自体を目的にして動いている。これにはカントもニッコリ。
うおおああびっくりしたぁ〜〜 いきなり動くんだもん。簡易アニメスチル。ふとももがプルプル震えるのわろた
画家属性とモデル属性を併せ持つヒロイン。見る主体と見られる客体のどちらにもなりうる。
おそらく沙織さんが描いたであろう星空の絵画が物語の鍵になるのだろうが、客体から再び描く主体に返り咲くパターンか? そのとき描かれるのは……「僕」の裸!?
「ヌードを描いた女性を必ず抱く」という順番どおりに、これからセックスをするのだろうか。。
痴女すぎるなこのひと……
スチルにエロ漫画みたいな擬音オノマトペが付いているのは今作が初めてだ。
びびった〜〜 母乳出たから妊娠してるかと思った(それもいろいろと順序がおかしい) もし孕んで産んだら、腹違いの自分の妹弟になる……。
これまでの作品は純愛とNTRが互いにギャップで引き立てあっていたけれど、今作はあんまりNTRではないな。純愛かつNTRというか、このヒロインのなかでは「父」も「僕」も似た愛人に過ぎず、そこに差はあんまりない。というか、死んだ父の代替として主人公を見て誘っている節がある。そこにマゾヒスティックな寝取られ的快楽を覚える余地はあるんだけど、どちらかというと、NTRモノというよりは故人をふくめた凡庸な三角関係モノってかんじ。
お〜10数枚描いてるなこのアニメーション。力作だ〜〜
やっぱり妊娠してるんかーい!! それで(も)振られて殺したと……。いきなり情報量がすごいな。
もしやマジで父の子供の"父"代わりとして生きていくのか? だとしたら純愛とかよりもっと業が深くていいかも。
妊娠・堕胎・自殺というのがわりと共通のテーマだなぁ……『灰色仔猫』とちょうど裏返しのような作品と読めるか。
あ〜もうすぐ死ぬつもりだから自分を絵に描いてほしがったのか。誰かの思い出のなかで生きたいがためにヌードモデルをしてセックスをする。やっぱり手段としてエロを望んでましたよカント先生……
そもそもセックスの本来の目的が生殖であることを考えると、命を作るためのセックスと、命を無くすためのセックスでちょうど反対の目的になっている。
夜鷹の星モチーフと、「鷹がトンビを産んだ」を掛けている。自死と出生……

おわり!!! すごい簡潔な終わり方だ。しかし最後のほうで色々明らかになる妊娠と自死と夜鷹のモチーフのしっとりとした結び合わせ方はなかなかお洒落でうまいと思う。コンパクトによくまとまっている。夜空の女性。
父は沙織さんのお腹の子を堕ろせと言ったけれども、「僕」を出生させてはいるわけで、母(父の妻)にはそう言わなかった過去がある。その過去から生まれてきた主人公を沙織さんはどう見ていたのだろう。彼を導いて交わっているとき、どんな想いだったろう。そのときの彼女のなかにこそ、嫉妬や憎しみの欠片があったのかもしれない。それでも、彼女は自分の思い出の宿る先として、つまり自分の永遠の未来として彼を選んだのだ。自分ではつくれなかった未来そのものである彼に託して。銀河とは星の生と死の混交に他ならない。彼女は生と死を超越した夜空になった。この高尚ぶったビターな結末、わりと好きだ。


……しかし『灰色仔猫』といい、妊娠とか堕胎とか不妊とか、女性の実存と命の話をされるのに自分は弱いのかもしれない。反出生主義と出生主義は裏表だ。命をとても重いものだと見做すからこそ出生という行為の是非を真剣に考えてしまうのだから。そこに、フェミニズム的な性癖として、女性の内面を描いてくれたり、想像させられたりすると更に好ましくなってしまう。やっぱり反出生主義とフェミニズムの関係ってすごく大事だし興味深いと思うの。
この作品を含め、エロゲの多くは主人公=男性であり、男性の視点で世界を見て切り取って物語を作っていく。だからこそ女性視点のあるエロゲがめっちゃ好み(『すば日々』etc.)なんだけど、一方で、男性視点でヒロインを描くからこそ想像させられる、ヒロインの内面の奥深さ、というものもある。この作品はそういう面白さが如実に出ている。タイトルからして「僕」視点だけれど、「その女性」視点からすれば「その男性は、愛人の息子だった。」わけで、父親と主人公が彼女にとってはかなり同じような存在だからこそ、その親子関係を根幹に据えた本作をヒロインの立場でまなざす観点が浮上する。