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oldreavesさんのCrescendo ~永遠だと思っていたあの頃~ Full Voice Versionの長文感想

ユーザー
oldreaves
ゲーム
Crescendo ~永遠だと思っていたあの頃~ Full Voice Version
ブランド
D.O.(ディーオー)
得点
70
参照数
312

一言コメント

「卒業まであと5日間」というシチュエーションに、自分好みのやつだ!と期待して始めたが、この物語設定は、エロゲのテンプレートがこのわずかな日数のなかに凝縮して詰め込まれている状況を呼び込むものだった。エロゲのテンプレ(お人好しやれやれ一匹狼男主人公が複数のヒロインに初めから惚れられていて、そいつに都合の良いように世界がすべて動く)がひじょーに苦手な自分としては、この作品の魅力的に思えた設定も負の方向に作用する結果となってしまった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

総プレイ時間:31時間
総プレイ日数:11日



※ネタバレ注意!!!



【総評】
「卒業までの5日間」という淡く儚い雰囲気の舞台設定や、文芸部や音楽をライトモチーフとした三人称ビジュアルノベル形式といったコンセプトはめちゃくちゃ自分好みだが、いざやってみると、実際の内容はベタなエロゲを卒業前の5日間に凝縮/圧縮したもので、期待していたものではなかった。

最初にプレイし始めたのが2021年10月なので、実に1年半もかかってしまった。(途中で個別√の内容を忘れて再読したりしていた)
超有名というわけでもない割に評価が高く、卒業前の夢見心地な淡い上品な雰囲気も良さそうだったため、「これは絶対に自分好みのやつじゃん!」と確信してやり始め、じっさい、導入部の印象はすこぶる良かった。男主人公の物語を三人称小説の形式で綴るビジュアルノベル形式を採用している点や、文芸部所属という要素を反映するかのように、その文章もエロゲにしては一般文芸寄りの、やや気取った(罫線「──」も頻用するような)格調高い文体である点も、それからやや古めの画風や静かなピアノ曲のBGMなど、まさに求めていた通りの、理想の淡エモ学園ものだと思った。

しかし、各ヒロインが順に紹介され、各個別√に入る頃には雲行きが変わってきた。これは自分の攻略順も悪さも相当に影響していると思う。素直に、パッケージにも描かれているメインヒロインの歌穂(と杏子)という文芸部の同い年(or後輩)ヒロインから選べばよかったものを、あまりに期待しすぎていたために(杏子に関しては第一印象とラブレターが最高すぎたために)「好きなものは最後にとっておく」精神を優先してしまい、あまりメインじゃなさそうな、あやめ(義姉)と優佳(不良売春クラスメイト)の個別√から読んでしまった。いま振り返れば、これが大いなる間違いだった。というのも、これら2人の設定と物語はとても重い。
あやめはスタンダードな義姉ヒロインかと思いきや、まさかの、3年前に主人公が家庭内近親相姦レイプをしてしまったという衝撃の過去が早々と明らかになり、そこから呪われた血と肉と過去の十字架に雁字搦めになった姉弟の重苦しい物語が(実質3日間という超高密度のハイスピード展開で)繰り出される。えっ、思ってたんとちゃう……と引いてしまっても仕方がないだろう。付言しておけば、やたらと聖人君子がちなエロゲ男主人公の文脈のなかで、大切なヒロインを過去に強姦によって傷付けてしまった加害性を明示的に主人公に与えている設定じたいは、かなり自分好みではある。とはいえ、『Crescendo』で見たいものではなかった。「卒業前の淡く感傷的な雰囲気エロゲ」を期待していて、じっさいに多くの面ではそのような方向性を明らかに目指して作られていることが伝わってくるにも関わらず、個別√の内容の方向性が合っていないことが残念なのだ。
優佳は学校内でも売春をしている不良クラスメイトであり、個別√で詳しくキャラ設定を見てみると、案の定、悲劇的な運命を負わされ、自傷癖もあるくらいには精神的に不安定な「聖女系娼婦」ヒロイン(ドストエフスキーとかでよく出てくる)であった。従兄弟にレイプされたトラウマを優しく解きほぐすために主人公が愛情を注ごうとするが、あやめ√をすでに読んでいるこちらとしては、レイプしたことのある男が、レイプされたことのある女を優しく英雄気取りで救ってあげようとしている状況をどういう顔で見ていればいいのだろうか。馬鹿げている。あと、やっぱり、売春とか両親自殺とかレイプとかリスカとか流産とか、扱う話題が重すぎやしないか? おーい、「卒業前の淡い雰囲気」はどこいった〜。
それから、男主人公:佐々木涼のキャラ設定も非常に苦手だった。簡単にいえば典型的なやれやれ系クール気取り一匹狼(実は優しい)男子であり、要するにエロゲ主人公のド真ん中である。こいつの一人称語りではなく三人称で客観的に描写することで、そのキツさが相対化されていることを期待したが、そんなことはほとんどなかった。べつに、この主人公が特別にキツいわけではなく、ごくごく「普通」のエロゲ主人公である。そう、『Crescendo』というゲームは、表面的な佇まいは、普通のイチャラブポルノなエロゲとは一味違う、「卒業前の数日間」をコンセプトに据えた、文学的で叙情的で静謐で感傷的な、三人称ビジュアルノベルですよ〜みたいな雰囲気を醸し出してはいるものの、中身はどこまでもベッタベタなエロゲであり、それをコンセプトの関係で数日間というタイムスケールに煮詰めているために、結果的にその「ベタなエロゲ」の嫌らしさだけが飛躍的に色濃くなってしまっているのだ。主人公が見てられないくらいキツいのも、物語開始時点で卒業数日前、という設定のうえで6人のヒロインを(あと数日で)攻略してえっちまで漕ぎ着けなければいけないがために、過去にヒロインに対してこんなことをして惚れさせました〜経歴が山盛りで、すでに全員から好意を持たれている、エロゲ主人公のイデアのような存在に成らざるをえないのだ。つまり、「大枠のコンセプトと中身が合っていない」というのは微妙に的を外していて、その中身のこれじゃなさは、あくまで当初のコンセプトを遵守したままに「普通のエロゲ」をやろうとしたがゆえに必然的に発生する矛盾である。だからこそ、なんというか、徒労感を覚えるのだ。いろいろと頑張ってはいる労作であることは間違いないだけに……。
ちなみに、6人目のヒロインは攻略順が固定の隠しヒロインであるが、ここまできて最後になにをやるのかと思ったら、病弱系幽霊少女というKeyの劣化コピーみたいなヒロインだった。最後の最後にリアリズムさえ逸脱してまで「王道のエロゲっぽさ」を周到に回収してくるその姿勢はある種尊敬にすら値する。
ものすごく好みっぽかったので後回しにしていた杏子と歌穂の個別√について。杏子は第一印象〜ラブレターがピークだった。高身長ですぐどこでも眠ってしまうおどおど純情後輩キャラというてんこ盛りの属性じたいは大好きなので、杏子単体では依然として好きだが、涼という男主人公がヒロイックに彼女を攻略するストーリーには魅力を感じなかった。歌穂はいちばん良かった。文芸部の後輩:杏子との三角関係を描き、恋心を諦めて後輩に譲るときも、後輩に譲られるときも、すごく魅力的だった。けっきょくベタな三角関係学園ドラマがいちばん好きなんだよな……。2人のヒロインに取り合われている男がこのいけ好かない主人公である点だけは納得できないが……。
唯一まだ言及していない、学校の保健室の先生ヒロインの香織は、教師と生徒で関係を持つことに拒否反応が出ることを危惧していたが、思っていたより良かった。大人である香織の前では男主人公が相対的に「子供」になり、格好つけるのではなく可愛らしく見えるのが好感ポイントだと思う。大学生時代の知り合いのあやめだけでなく、歌穂や杏子も話に絡んでトンデモ展開をやるのも面白かった。
最後に、このゲームでもっとも凄いと感心したことを挙げる。わたしがプレイしたバージョンには各ヒロインにおまけシナリオとして「アナザーストーリー」計6話が用意されていて、本編とは異なる世界線でのヒロインとの物語が読める。各シナリオに関しては、ふつうにつまらなかったものも、予想外に良かったもの、本編(正史)との位置関係を考えると趣深く思えてくるものなど多様だったが、それらの多くのシナリオでは、過去回想形式でヒロインとの(新規)Hシーンがある。本作では回想部分はすべて画面がセピア色のやや色褪せた演出で統一されているのであるが、なんとHシーンにおいてもセピア色なのは変わらない。これは地味に凄いことだと思う。なにせ、Hシーンというのはエロゲの核であり華、それもおまけシナリオの新規追加Hシーンなんて、本編で気に入ったヒロインとのさらなるイチャイチャをユーザーが求めるからこそ存在しているものだ。そんな大事なシーンを、美麗に映さずに、「回想」であることを遵守してセピア色にしてしまう胆力。これぞ「コンセプト」の徹底だと拍手せざるをえない。「エロゲ」というジャンルそのものへの痛烈な批評ともいえるかもしれないこの演出には感動した。これだよこれ。『Crescendo』に求めていたのはこれなんだよ。




・以下、プレイ中のメモ(各√, アナザーストーリーの詳しい感想あり)



10/23
全画面にテキストが表示される狭義のビジュアルノベル形式だ!
いちいちテキスト非表示にするのに右クリックから選択しないといけないの面倒
三人称!?!?
卒業5日前の三年生たちの物語
主人公とヒロインのウィットに富んだ他愛ない会話から、これまでの2人の過ごした時間と関係が滲むように伝わってくる
こんなにも自分好みの学園青春モノがエロゲにあっていいのか!?と不安になるくらい好みな予感がする
今のところアニメ『Just Because!』っぽい
はじめは「古臭い絵柄だな〜w」とか思ってたが、もう好きになってきた。
過去回想中にも選択肢があるのか……

>「だからよ。無理矢理なのにどうして、って。そんなお人好しには見えなかったもん」そこで歌穂は軽く笑い、つけ加えた。
>「そのときは、だけどさ」

ここすごい!!! 1クリックの1台詞の最中に地の文が割り込んで、それでもボイスは一息で「そのときは、だけどさ」まで再生される。
こんなの初めて出会った!!!おもしろい!!!!!

びっくりした〜〜 ド淫乱ヒロインかと思った

文芸部の2年後輩の高身長黒髪ロング眠り姫おどおど系少女、理想の体現か? こわいこわい。脳内を覗かれてる??
「プレゼントを渡す」という、おそらくこの1回しか使いみちがないであろう立ち絵が用意されていてスゴい。
せっかく三人称なんだから、主人公の涼にもCVあってほしかった。

"居心地のよくない沈黙が、部屋の中でワルツを踊る。" すごい表現だ
『光車よ、まわれ!』 天沢退二郎による実在するファンタジー小説らしい。全然知らなかった
ファッ!?!? さすがに草 びっくりした〜〜
ひょっとして、このゲーム、かなりヤバい?

モブ男子にもCV付いててすごい
「ラクダの背に乗った最後の藁」……「堪忍袋の緒が切れた」的な英語圏のことわざなのね。知らんかった
立ち絵差分が結構多い気がする。表情だけじゃなくて手とかの動作差分もある
いやいや……そのピンク色の手首サポーターは女の子らしさとかじゃなくて絶対に……
下校時間アナウンスまでボイス付き
先生もヒロインにいるのか・・・

>並んで立つと、圧倒的に涼の背のほうが高い。しかし、彼女を前にするといつも、自分の方が小さいような錯覚を覚えるのだ。
>それは、自分がせいぜい授業をサボることしかできない無力なガキであることに対し、彼女は一人の自立した大人である、という引け目から来るものだと、涼は自分の心を分析していた。
>その程度には子供から脱皮しつつある。と、考えることでなんとか劣等感を埋め合わせるしか、今の彼にはできないのだから。

なかなか面白い自己分析の描写

でた〜〜〜〜!!! 「平気で保健室でタバコを吸う養護教諭」概念!!!
「……なるほどな」自分もコーヒーをひとくち含み、続けた。「よくわかった」
台詞のあいだ、ちょうど地の文が入っているところで実際にコーヒーを啜るような効果音まで流れてて丁寧な作り

もしかしてこれ、各ヒロインの紹介パートでの選択肢によってルート分岐するパターン??
23のねーちゃん
血の繋がってない姉!! ということは……
「あんたは男なんだから勉強しないと」とか、「あんたの気持ちはどうあれ、あんたを産んでくれた女性よ? そんな言い方するものじゃないわ」とか、姉ちゃんかなり保守的なひとだけど、この歳で弟を養わなきゃいけない境遇ゆえに仕方ない面もあると言えるのかなぁ
両親が事故で他界したのが5年前(涼が13歳?で姉が18歳, 大学1年時)で、その時すでに涼は自分が養子だったと知っていた。
つまり、涼の「入学手続き」のための戸籍謄本を垣間見て、自分が養子だと知って愕然としたのは5年以上前の両親が生きてた頃のこと……ってことでOK?
ってことは中学校の入学手続きの時のことでいいのかな。
複数の短い回想の時系列がわかりにくい。
さっきまで淡くエモい学園青春モノだったのに、いきなり家族間のめちゃくちゃ重い話になって戸惑っている
姉が二階へ上がってくる足音とかの効果音もすごく丁寧

ドア越しの台詞がちゃんとくぐもっている。音響が全体的に良い。クレッシェンドというだけあってピアノのBGMも良い。
これやっぱり3年前に姉と関係を持とうとしたな……だからそれ以来、手も触れられないし部屋にも入れないと。
主人公の心理描写がかなりちゃんとしている。三人称だからこその描き方
杏子さん・・・・・・・・・・・・・好きだ・・・・・・・・・・・・・・・・
これが理想のラブレター

>卒業まであと4日。
>いろいろなことが重なるにしても、この時期である必要はないだろう。自分勝手とは感じつつ、そんなことも考えてしまう。
>いや──と思い直す。
>この時期だから、なのかもしれない。
>これまでの生活が、がらりと姿を変える。その節目を前にして、さまざまな解決されない想いに答を与えようとする。

「卒業まであと4日」という設定の時点で5億点なんだよな・・・・・・・
焦り、不安、名残惜しさ、諦め……いろんな感情がそれぞれのキャラクターを突き動かして、残り少ないかけがえのない時間を過ごしていく。
そんな青春ストーリー……であってくれたら最高だな♪
お姉さん含めヒロイン5人か。結構多いな……



・あやめ√(NORMAL)

3年前の過去回想にまで選択肢があるのか……

いやぁ・・・・・・ちょっと姉さんルート業が深すぎないか? これ他の学校のヒロインたちとはトーンが全然違うだろうし、そっちでも姉とした過去は変わらないよな・・・・・・いや、「無かったこと」になるのか?
卒業間近の感傷的なエモく儚い雰囲気の作品かと思ったら、初っ端からめちゃくちゃドロドロしたどうしようもない話を読まされていてどうしたらいいんだ。

中3?時に自分だけ血が繋がっていないと知らされてショックを受けて、破滅的な精神状態ともともと密かに抱いていた欲望から姉を強姦してしまったことに罪悪感を抱いている主人公。
しかし、姉自身もまた、その前からずっと弟に執着し、離れ離れになりたくないから養子であることは本人に明かさないよう両親に頼んでいた。そればかりか、強姦されたときも積極的に受け入れ、それ以降も弟を性的対象としてずっと見ていた。そのことに罪悪感を覚え、これ以上自分が抑えられなくなるのを避けるために、弟を実母のもとへ帰そうとしていた。

結果的にものすごく業が深くなってるけど、本作を、プレイヤーが男主人公に感情移入してヒロインとの恋愛を楽しむ媒体として見たときには、身近な愛しの女性をレイプしちゃったけど、実は彼女も自分のことを深く愛していて、自分が彼女に持っている罪悪感とちょうど上手く釣り合う(?)くらいの罪悪感を彼女もまた抱えているから、あとはふたりでよく話し合えば寄りを戻せる大団円にいける……と、単純に都合がいいヒロイン造形の一例でしかない。
(罪悪感に釣り合うとか無いだろうとも思うけど。)
そうは捉えずに、客観的にこの2人を見た場合には、ものすごく愚かな兄妹の物語……ということになる。三人称視点の語りなので、こちらを推奨しているとは思う。ところどころ姉側の視点に近付くし。


終わった〜
「死ぬまで有効よ」怖すぎる。まぁ本人たちが幸せならそれでいいですが……
和姦シーンが無いまま俺たたエンドで終わるのは意外だった。無いほうが良いが。
※1年後追記:これはNORMALエンドしか見ておらず、TRUEエンドを見逃していることに気付いていない状態でのメモ

卒業式後の集合写真、ヒロインたちに何の面識もなくておもろい。このゲームのためだけの写真

あやめルートを最初にやったのは間違いだったかなと思ってたけど、むしろ最初で正しかった気もする。
こんな家庭問題の爆弾の全貌が明らかになってないままで他のルート読むのは気が休まらないから。


挿入まではしないパターンもあるのか。
他は同じ。
あれっ、まだあやめルートに未開放の回想シーンやCGがあるらしい。


・優佳√
流産で救急車に運ばれて妊娠できない身体になった売春ヒロイン(孤児院育ち)……この人もなかなかに重いな……

2ルート連続でほぼ強姦みたいなシーンで草
BAD END..だけど同窓会でちょっと友達としてよりを戻す、希望的な終わり方
No.1キャバ嬢で彼氏持ちだけど、仕事も彼氏も捨ててやり直したいと思っている昔の同級生。男の理想の具現化すぎて引く

両親自殺、従兄弟にレイプ、リスカ、売春、流産……役満だ
まさに風俗女を救い出して添い遂げたいヘテロ男性の願望の結晶といったキャラ。ソーニャ等の典型的な娼婦ヒロイン
いまあなたを抱き締めているこいつも、3年前に家族をレイプしたんだよと教えてあげたい。それに触れずに話が進んでるのがいちばんおもろい
お姉さんの笑顔がこわい・・・

ほんと陵辱多いな・・・・・・

やっときた和姦も、不穏なものにしか思えない。結局彼女の「こんなに幸せならもう死んでもいい」と思う精神性は変わっていないし(まぁそんなに簡単に変わるほうがおかしいが)
このあとで首吊ってても驚かない

Happy end...


まだ未開放CGがある
https://www.2dfan.com/topics/5192
このサイトによれば、全部回収してそうだけど・・・(姉はまだ未回収ルートがある)

「おまけ」からアナザーストーリーが選べるようになってる!!!
なるほど〜〜それのCGだったのね。了解



約1年ぶりに再開
杏子(きょうこ)ルートを目指して最初から。

・杏子√
やっぱ杏子さん好き…… 文芸部の3人のハーレム三角関係の雰囲気は良いなぁ…… 2つ下の高身長眠り姫女子、属性詰まってて最高。(同じ人が好きだと察している)先輩の歌穂に対して強くいくところも良い。女子同士の鍔迫り合い(男の取り合い)ではなくて、互いに相手を尊重して身を引いてしまうことを追及するかたちの駆け引き。
主人公、付き合う前の杏子の頭の上に手を乗せた! 伝統的なエロゲ主人公ムーブ。お前らほんと……
杏子、お前も家庭問題を抱えてたのかよ!w まったく、家族とかシリアスなことを入れないと話が作れないのか……この作品はそういう方向じゃないほうが良くないか? 卒業間近という淡く浮ついた切ない雰囲気のまま押し切ればよかったのに。他の普通のギャルゲーみたいなシリアス展開挟んでこないでよろしい。

歌穂の現在の彼氏:杉村くんいいヤツ過ぎるのを通り越して、主人公に都合良すぎて引くわ。この話ぜんぶがぜんぶそうじゃん……それが典型的な「ギャルゲー」なのだとしても、わたしはそれを楽しめはしない……もっと物語に、キャラクターに、強度をもたせてほしい。
いちおう杉村くんも歌穂が好きなのは本当なのね。
歌穂と杉村、そして杏子が図書室で重要な会話をするパートは主人公不在のまま描かれる。もともと三人称ということもあり、そんなに違和感はない。
歌穂も図書室の机で後輩の杏子の頭を撫でる。高身長に悩む杏子にとっては確かに誰かに頭を撫でてもらう行為は嬉しくて尊いものなのかもしれない。
卒業数日前から始まるため、とにかくセピア色の回想が多い。「あの頃」をサブタイトルに関する通り、このストーリーテリングとデザインが本作の特色だろう。

佐々木涼、典型的なエロゲ主人公の造形なんだよなぁ…… 「裏切りたくないから頼ってほしくない。そのくせ、頼られたらどんなことをしてでもそれに応えようとする」「ぶっきらぼうで、他人から誤解されても平気なふりして、強がって。そんな素直じゃないところも。すごく優しいところも。……大好き」
男の形骸的なダンディズム。マッチョイズム。それに惚れてくれる理想的な美少女。きもいきもい。こういうタイプを主人公にしたエロゲがいちばん苦手。(だからサクラノ詩も……あっちは主人公だけじゃなくその父親も、親子二代でこれをしつこくやってくるからなぁ……)
主人公が受け入れがたいと、それに惚れるヒロインたちまで、いくら魅力的であっても、残念に思えてしまうのだよなぁ……
歌穂さん、佐々木に振られても気にするな! 杉村くんのほうがずっと良い奴だぞ!(もちろん彼氏を作ることが幸せになることの必須条件でもないし)
歌穂視点でいくと、3年前と今とで、「好きな男子への恋が叶わなかった直後に別の男に優しくされて胸を借りて泣き、その男のことを好きになる」というまったく同じことを繰り返しているんだなこの子は。それが悪いってわけじゃないけど、歌穂にとっても「都合のいい」世界ではあるのか。

杏子との両想い確認即セックス。杏子は自分が「女の子らしくない」と思い卑下しまくっていて、その思い込みを解消するために性行為をする。ジェンダーとセックスが無批判に「結合」している典型的な例ですね〜〜
湿った下着(パンツ)を自分で脱いだあとに後手に適当に放ったあとで、慌てて布団の下に押し込む杏子ちゃんかわいい。
後背座位のときに、先輩に自分の快感に悶える「女の顔」を見られることがないのがせめてもの救いだと思う杏子。ここでも、「男性に挿入されて快楽を覚えているときが、女がもっとも「女」らしくある瞬間である」というエグいイデオロギーがあらわになっている。全裸だからね。イデオロギーも隠せずに曝け出しちゃうんだよね。(ところで、後輩キャラだから後背位ってことですか?(激寒ギャグ))
カップル1日目に一発やっただけでもう卒業式か。5人のヒロインとの集合写真何度見ても訳わからなくておもろい。ギャルゲの「いびつさ」がこの写真に凝縮されている感じがして逆に好き。
先輩の追い出しコンパでも当然のように寝てる杏子ちゃん草。好き
24:50 杏子√おわり!!! 高身長コンプレックスを紳士のキスで解消してEND.
杏子ちゃんは可愛くてとても好きなキャラクターだけど、主人公を中心とした世界の成り立ちが苦手なのでシナリオは楽しめなかった。歌穂との三角関係(杉村も入れて四角関係)も読みどころの1つで、歌穂と杏子の関係はまぁ悪くはないが、やはり主人公を取り合う展開はキツい。

「卒業まであと5日間」というシチュエーションに、自分好みのやつだ!と期待して始めたが、この物語設定は、一般のギャルゲ/エロゲのテンプレートがこのわずかな日数のなかに凝縮して詰め込まれている状況を呼び込んでいることに気付いた。ギャルゲ/エロゲのテンプレ(お人好しやれやれ一匹狼男主人公が複数のヒロインに初めから惚れられていて、そいつに都合の良いように世界がすべて動く)がひじょーに苦手な自分としては、この作品の魅力的に思えた設定も負の方向に作用する結果となってしまった……。


・杏子アナザーストーリー
アナザーストーリーって後日談とか補完エピじゃなくて、Ifエピソードなの!?
卒業間近にではなく、わりと早い時期から涼が杏子と付き合い出した世界線の卒業までのダイジェストシナリオ。しかも、どうやら杏子宅での文芸部3人の飲み会で歌穂が帰ったあとに、酔った(?)2人がヤッちゃってから翌日告白し合って付き合い出す、という流れ。(杏子は飲み会で吐いたらしい)
Ifといっても、歌穂も涼のことが好きなのは変わんないし、涼の仲介で杉村が歌穂に告白して、お試しで付き合い出すのも変わらない。ダブルデートのくだりとかあるけど、基本的なキャラ設定と関係性は本編と同じなので、なんでわざわざこれをアナザーストーリーとして描くのか理解できないと思ったが、「卒業間近」という本編の設定を本質的に重要なものだと位置づけているからこそ、キャラの関係性・流れはそのままに、「卒業間近」設定だけを外してアナザーストーリーをわざわざ書く価値があるのかもしれない。上で書いたように、卒業直前設定から、その数日間に告白して付き合ってヤッて……という流れを詰め込まなくてはいけないのが本編だとしたら、それを1年間に希釈したものがこのアナザーストーリーであるという解釈は出来る。ギャルゲテンプレの希釈具合・密度の異なる2パターンをご用意してみました。
とはいっても、アナザーストーリーでも現在時制は卒業式の日で、ほとんどは回想シーンになっている。それゆえに、本編含めて2回しかない杏子とのHシーンも、あのセピア色で描かれているのに衝撃を受けた。エロゲとしての大事なところを決定的に損ねてまで、「回想」というコンセプトを貫く姿勢、嫌いじゃない。(主人公とヒロインとの和姦シーンがどうでもいいから、というのもある。)
あと、このアナザーストーリーは、実質的に歌穂がメインとなっていた。歌穂と杉村、いいカップルだと思った。佐々木涼よりも杉村と歌穂のHシーンを見せてくれよ。



・歌穂√

シャツのボタンを縫い直しながら「スカボロー・フェア」を歌う歌穂に杉村は惚れる。歌穂と杉村の関係やっぱ良いなぁ……
また佐々木がヒロインの頭を撫でた! エロゲ主人公はそれしか能/脳がないのか……
2年前の文芸部卒業生追い出しコンパのあと、恋破れて、自分に好意を持っていると知っているからこそ佐々木に頼った歌穂。そのことを悔やみ、今では佐々木も正直に「確かにあの頃お前に憧れてた」と告白する佐々木。こういう、恋人までいかない、3年間ふたりきりで文芸部をやってきた仲間/友人関係としての歌穂と佐々木の関係はけっこう良いなと思った。それをキスで歌穂が壊してしまう。そのことで更に自責する。
色んな面で罪悪感を覚えまくる歌穂と、優しすぎる杉村。どちらもすごく好き。佐々木とかいう男に歌穂が惚れているのは残念だけど、そのおかげで自責の念に懊悩する歌穂と、振られ方までカッコ良すぎる杉村の姿を見ることが出来るので、しょうがないかな、という気持ち。
うわーー 杏子√とは違い、歌穂と杉村の別れ話を図書室で盗み聞きしてしまった杏子は、歌穂に怒って責めるのか。性格変わりすぎだろ。ビンタ2回までするとは…… しかし、歌穂の内面に寄り添った脚本はとても好き。ヒロインが自責の念でぐちゃぐちゃボロボロになるのが好きなので。(ヒロインに限らず男でも誰でもそうだけど)
うおおお 歌穂√に半ば入ってるのに「杏子が好き」を選択したら、杏子にふられるのか……歌穂先輩を傷つけないために…… すげぇ。細かくエンディング分岐が作られている。結局2人どちらとも結ばれずに卒業するENDいいな。歌穂と杏子との、複雑な同性の先輩後輩関係が良い。想い合って、だからこそ相手を尊重して自分をないがしろにして、そのことで責められて…… こういう関係が見れるんなら、その2人共に惚れられている佐々木の存在もちょっとは赦せる。テンプレのエロゲ主人公って、周りのキャラクター達やその関係を魅力的にするための触媒としての存在意義があるのかもしれない。少なくとも本作では自分はそう思えば結構楽しめる。
追い出しコンパで杏子がスピーチして歌穂と抱き合ったあとの「あとはお祭りだった。」というフレーズがなんか印象深くて好き。聞き覚えあると思ったらあれだ、パヴェーゼ『美しい夏』の書き出し「あのころはいつもお祭りだった。」だ。
杏子に教室で詰められて「……」という実質的な「歌穂が好き」告白をすると、フラれた杏子が涼にキスをするのか! このゲーム、フラれた奴がここぞとばかりに別れのキスをしまくるな……いいぞ…… ヒロインも主人公も男友達もフラれるパターンを用意している福利厚生が行き届いたノベルゲームだ……
杉村「いちばんおいしい役、芦原さんに取られちゃったよ」草。こいつ、本気でヒロインの座を獲ろうとしてやがる……(好き)
うおおおおww マジでヒロイン並に良い主人公とのツーショットスチル展開が用意されてるじゃねえかw 杉村ほんと良い奴(キャラ)だよお前……
で、フラれた同士、杉村と杏子のツーショットスチルもあるのか…… 主人公も、その√でのヒロインも映ってないスチルって珍しくね?と思ったけど、『サクラノ詩』の優美と彼女のことだ好きだった男子が丘で座っているスチルとかも当てはまるな。
ここで杉村も杏子の頭に手を乗せて撫でてるんだけど、ここはフラれた者同士であって、杏子の頭を撫でることで自分をも慰めてるんだよな。だから、苦手な頭撫での中ではまだ許容できる。(単に杉村だから許しちゃってるだけかも) ここで、杉村がバスケ部キャプテンで180cm以上ある長身設定も地味に効いてくる。杏子の身長が目立たないくらいに「普通の」頭撫でになっているから。
保健室の香織先生のナイスアシスト(お節介)によってめでたく結ばれた歌穂と涼。色々言ってきたけど、Hシーンでの歌穂めっちゃ可愛いしエロいし魅力的だな…… これまで自分を責め続けてきた反作用としてなのか、吹っ切れて涼に積極的にすがって「私をどうしてもいいから」と迫る姿はやや心配にもなるけど。
おっ! 卒業式後の集合写真に杏子だけいない! 不自然に一人分空いているのがなんともいえない印象を与える。

歌穂true√おわり! 図書室で2人で向き合ってそれぞれ本を読みながら、涼が歌穂に好きだと言葉で気持ちを伝えて〆。ベッタベタにロマンチックだが、良い終わり方。
3日目に歌穂と帰って告白すると、そこでは断られて、翌日に杉村や杏子から後押しされてようやく歌穂も付き合う決心が固まるのか。そしてHシーン無しのままにエンディングへ。最後に図書室でふたりでする会話も少し異なる。
細かい分岐/エンディングが多いから回収が大変だ。CG回収だけならまだしも、未読テキストを無くそうとするとキツい。し、セーブ/ロードを繰り返しすぎて肝心の話の繋がりがだんだんよく分からなくなってくる。いまどういう世界線だっけ?と。
ともかく、歌穂√なかなか良かった。四角関係いいですね。自分で全ての罪を背負おうとして、そういうところが余計に周りの人を傷つけるのだと自覚していてもなお自責行為をやめられない苦悩系ヒロイン大好き。小木曽雪菜タイプともいう。


・歌穂アナザーストーリー
杉村が歌穂に一目惚れして、佐々木に「伝えておいてくれないか」と頼むも、佐々木がちゃんと(?)それを断れていたIf世界線の話。その後、杉村は普通に自分で歌穂に告白するがフラれ、その後で佐々木を殴ることで暗に歌穂の思いを伝え、佐々木もそこで決心して歌穂に告白できた──という、全てが本編のようにこじれずにトントン拍子にうまく行ったパターン。
佐々木に告白されて、杏子との約束があるので保留する歌穂を、杏子は本編と同じくあっさりと許す。そこで杏子が歌穂の頭を撫でた!!! 激アツ。
これで、佐々木→歌穂, 佐々木→歌穂, 歌穂→杏子, 杉村→杏子に引き続いて、5個目の「頭撫で」が成立した。それも、初めて、これまでの撫でる/撫でられる関係を逆転した関係。長身の後輩女子が、自分より背が低く、尊敬する先輩女子を泣き止ますために頭を撫でる……というシチュエーションも最高。歌穂と杏子の関係ほんと良い。
両想いで成就した男女カップルが卒業式の門出の日に、自分たちを想って後押ししてくれた周りの人達の献身のうえに自分たちの関係が成り立っていることを自覚して「感謝」しなくては、と確認するのは、恋愛に人間的成長とか意識の高さを求めるような匂いがしてちょっと苦手だけど。まぁ実際、こいつらは周りの人間に恵まれすぎているというのは事実だしな……。
相変わらずアナザーストーリーではHCGもセピア色になっている。途中、三人称の語りが歌穂視点にかなり寄り添っていた(2回戦で涼に戻った)


・香織√
年長組の姉ちゃんと香織先生、どちらもこんなガキに惚れているなんてどういうことだよ(エロゲヒロインだからです)という身も蓋もないことを思ってしまう。
香織先生とのドライブデート、これまで別ヒロイン√ではクールぶっていた涼の、背伸びしようとして失敗する幼く無様でかわいらしい側面が見れるのはそこそこ良い。
BAD END終わり。ラブホで偶然に香織のパスケースの少年の写真を見てしまい、ショックを受けた涼はそのまま愛のない初体験(双方にとって)を済ませてしまう。翌日、少年の事情を軽く聞いて、怒る気も無くし、2人はそのまま波風を立てないようにして別れる。卒業式の集合写真に香織はいない。2人はそれぞれ互いを想いながらひとりで煙草を吸う。ビターエンド…… 愛のないセックス中に、香織視点で、快楽に溺れている自分を俯瞰して冷静に見下す「もうひとりの自分」があらわれて自分同士で会話しててワロタ。
TRUE ENDへ。ヤる前に写真の少年のことを話してもらい、そのままお流れに。なるほど、そういう事情か。……マジで香織先生が過去から何も学んでいないだけでは? それで少年に顔向けできるのか。
選択肢「ぶち壊す」草 トゥルーエンドへの解決のきっかけは歌穂なんかい! やっぱ歌穂しか勝たん……
えっ、歌穂もお見合いに乗り込むの!? 結婚式に男が乗り込んで奪い去る展開じゃなくて!? まさかの斜め上/下のハチャメチャコメディ展開でわろた。お見合い相手の男可哀想過ぎるw 
一緒に馬鹿やったことであやめが歌穂と杏子と仲良くなって、打ち上げしにふたりの肩を抱く(長身の杏子には縋り付くようになる)の良いな。
香織TRUE ENDおわり! なんで翌日には学校中に知れ渡ったんだろう。ぶち壊されたお見合い相手側が真相を知ってチクったのか、カーセックスを生徒か先生に見られたのか。辞表を出したというから、そこで本人がすべて話した可能性もあるのか。ともかく、養護教諭じたいを辞めることになるとは。そこの責任はちゃんと取るのね。
そもそも写真の少年のことが香織は好きだったわけではないので、「過去から学んでいない」という話ではなかった。むしろ、生徒と親密な関係になって惚れさせたことではなく、相手の告白を真正面から受け止めずに「大人」ぶっていなしてしまったことを後悔している(なぜならそれが自死の直接の原因だから)ので、今度は涼の想いに対して「大人」ぶらずに自分の気持ちに正直に従うこと、相手の気持ちを受け止めることこそが、過去から学び、一生背負っていく後悔に少しは決着をつけることになる、というロジックか。

・香織アナザーストーリー
1年のときに涼が告白し、香織は前の学校の少年の事情を話し、卒業するまで返答は待ってくれという。おお、本編より倫理観がちゃんとしている、と思ったら、本編と同じく卒業式前日になぜか自宅へ招いてOKしてセックスする……おいおい、ゴール直前で痺れを切らして諦めたら3年待った意味なくない?
おそらくこれは、本作の「卒業直前」というコンセプトを貫徹するためだろう。他ヒロインのアナザーストーリーでも、やっぱり現在時制は卒業式の日なので、卒業"後"を描くわけにはいかない。 あるいは、卒業式前日というのを、このシナリオでは「学園生活の最後」ではなく「学園生活が終わったあとの新たな日々の始まり」と捉えている? 実際、養護教諭の香織は「卒業」しないわけで、涼が卒業してからのほうが対等にしがらみなく関わっていけるという点で、寂寥感が薄いのは確かだ。

・優佳アナザーストーリー
これは……なるほど。。
出会って順当に恋人になったが、初めて自分を性欲のはけ口としてではなくひとりの人間として見て大切にしてくれる相手が得られたことから、優佳がかえって依存し過ぎてしまい、その過干渉の重さに耐えられなくなり、涼から振る。2年後の卒業式、すでに優佳は冷静に気持ちの整理をつけていて別の彼氏ができている。あの頃の自分は幼く迷惑だった、自分が愛されることだけでなく、相手を思いやることが必要だったと気付かせてくれた涼に謝罪と感謝を伝えて優佳は去っていく。
恋愛譚としてはものすごく凡庸なんだけど、可哀想な生育環境のヒロインが恋人になってめちゃくちゃ依存してきて男側から振る展開ってエロゲではあんまり見たことがなかったので、エロゲ文脈のなかではそこそこ価値はありそう。加えて、この作品全体のバランスを取るためのシナリオ、という観点と、もちろん本編の優佳√に対する「アナザーストーリー」としての立ち位置を踏まえると、なんやかんやで興味深く思えてくる。ここまでド直球のビターエンドは今のところ他のヒロインのアナザーストーリーでは無いし、本編の「悲惨な境遇のヒロインを救う」あるいは「大人になって同窓会で人気キャバ嬢として再会する」という2つの分岐に対して、ちょうど中間というかいい塩梅の話ではある。つまり、可哀想なヒロインを受け入れることの崇高さの裏側にある困難(男側としても、そして彼女自身にとっても悪い側面があるという視点)を描いている。また、大人になってからではなく、あくまで現在時制を卒業の日に設定する(それに伴い、付き合うのを1年生時にする)ことで、凡庸な別れ話が「若さ」つまりほろ苦い青春の1ページとして象徴化し、それから2年経って、あの頃のことを冗談として話せるくらいには大人になってしまった2人を描くことで本作のメインテーマ(卒業シーズンのエモさ)に貢献している。
だが、別れてヒロインが別のモブ男と幸せになる疑似NTR味のあるビターエンドとはいえ、結局はヒロインを「成長させてやった」「大切なことを教えてやった」という佐々木涼の英雄譚としての側面は確かに残っており(というか普通の成就エンドよりも更にその面が強いとも言える)、本編での父権的な気持ち悪さ・傲慢さを完全に相対化しきっているとは思えない。


・あやめ√
1年前にも読んだ気がするけどもう忘れているので再読。やっぱ文章が上手いことは認めざるを得ない。文学的かはともかく、エロゲらしからぬ、"文芸的" にわりとしっかりしているテキストが良い。
あやめルートは話がとにかく重いなぁ……それは何度読んでも変わらない。これを最初にやってしまったのは完全に失敗だった。他の4ヒロインは生徒or養護教諭で学校関係者だが、あやめだけ家族なので家が主な舞台となる。また、3年前、両親の交通事故死のきっかけともなった強姦事件の罪・トラウマをお互いに抱えているという、とんでもなく重い設定を投下してくる。これら諸々のために、このルートは、「卒業前の数日間」というこのゲームの淡いコンセプトに対してどう考えても浮いており、収まりが悪い。いちおう、死んだ両親の代わりに保護者になってくれていた姉との関係の再考という筋書きは、子供から大人になっていく主人公:涼の境界性やモラトリアムといったテーマを暗に含み、それが高校卒業という人生の節目と繋がっているとは言えるが……。
姉ヒロインとの近親相姦への葛藤を扱うシナリオとしては、まぁありふれたものではある。血は繋がっていないし、3年前に強姦していたという衝撃の設定から主人公が自身の加害性・罪に思い悩む内容ではあれど、けっきょく姉側も主人公=弟のことが性的にも恋愛的にも好きで、被虐体験もむしろ都合の良いものであると認識しており、こちらも自責の念を抱いているために、重い "罪" を描くわりには、お互いに相思相愛な気持ちを吐露しあってすぐにハッピーエンドになれる(涼を引き取ろうとしている産みの母もあっさり引いてくれるし)ので、ストーリーそのものは虚仮威し感がある。
とはいえ、上述の通り文章が上手いので読ませるし、特に最初のHシーンでは涼ではなくあやめ側の主観に寄った三人称の文体で、複雑な情愛と罪悪感がないまぜになった感情の官能的な表現により、かなり感動した。ライトグリーンの上下お揃いの下着姿のスチルが美しい。

・あやめアナザーストーリー
大学の1つ上の気のいい先輩、飯島里美さんとかいう新キャラ好き。彼氏持ちだしショートボブ眼鏡だし。
おわり!!
お〜〜 優佳アナザーと似て、こっちもバッドエンド気味の内容なんだ。
えーと、今のところやった5ヒロインのアナザーストーリーでは多分ゆいいつ、時系列が高校時代ではなく、本編Trueルートの未来(の1つの可能世界)として位置付けることもできる。本編とは少し異なるifの世界線の話をやるのがアナザーストーリーだと思っていたので、そうでないことに驚いた。しかし、最後まで読んで、その内容が、共依存関係に開き直って2人でただれた人生に堕ちていく……というインモラル自己陶酔的な茶番だったのを鑑みるに、やはりこれは本編の正式な続編ということではなく、逆に正史ではこうはなりませんよ、ということをプレイヤーに婉曲的に伝えるためのシナリオであると思った。恋人にあまり依存し過ぎずに、自立した健全な人生を送ろう、というまっとうな価値観を前提として、あえてその真反対の物語を外伝として描く。こういうアナザーストーリーの使い方もあるんだなぁとやや感心はした。
追加Hシーンも回想の中で行われるわけではないため、セピア色演出にはなっていない。アナザーストーリーだから……ASって……コト!?

……分岐があったのを忘れていた。上で書いたことナシで。こっちが外伝のTrueエンドっぽいな。やっぱり休学関連と赤本が鍵だったのか。退学ではなく一応休学にしてから休学期間の限度が来て除籍になるお姉さんには親近感湧くな。恋人関係にも自分がやりたいことを作って精神的に依存せず自立しよう、という価値観をそのままやるか完全に背くか、ちょうど分岐2ルートで対照的な結末。
主人公を事故に遭わせて、死んじゃったかと思わせてヒロインが本心をさらけ出す展開にもっていくパターンはもういいです……。まぁお幸せに〜〜


・隠しヒロイン・静原美夢√
ああ、いちばん最初のシーンのスチルでもう登場してた子か。
これまでずっと鳴っていたBGMのピアノ曲を弾いていたのが彼女だと、ここで初めて明かされるッ……!
涼と同学年だが1年半入院していて、留年するそう。卒業がテーマの作品の最後に、卒業できないヒロインを持ってくるのか……
タイトル画面やアイキャッチ時の音楽はスコット・ジョプリン「ジ・エンターテイナー」。ラグタイムというピアノ曲のジャンルの有名曲。映画「スティング」でも使われているらしい。
おい、これもう死んでる幽霊パターンか? ここにきてファンタジー要素をぶっ込んでくるのか。演奏者がいなくなっても鳴り続ける自動演奏のピアノってそういうことか? 美夢ってそういうことか? うーん……そっかぁ……
!!! 夜の学校の音楽室のカーテンで自分の裸体を隠す。『おおかみこども』ポイントが入ります。
ピアノの上でヤるのか…… ちょくちょく音楽用語を交えながら行為を描写するの笑っちゃう。
エロゲには亡霊ヒロインがわんさかいるけど、思えば生でヤッても妊娠させる危険性もないし、自分の記憶からも向こう側で勝手に消えてくれる。男側にとってすげぇ無責任で都合の良い存在だからこそ重宝されるのだろうなぁ。(もちろん感動ドラマを作りやすい、というのも大きな理由だろうけれど)
おわり! はい……まぁ……面白くなかったです……
回想、記憶というテーマはいちおう作品の根幹と通じてはいるんだな。夜の音楽室でヤッたときの涼は、そもそもが昏睡状態の美夢の夢想であった可能性も暗示することで、回想する側とされる側、という関係を反転可能な、双方向的なものとして位置付けている。
とはいえ、これが5ヒロイン攻略したあとに開放される隠しヒロインの話としてなぜ相応しいのかはまったくわからん。コレ自体がおまけとかFDとか、アナザーストーリー的なポジションならギリ許容できたかもしれないが。。。
そもそも幽霊とか病弱とか死に属性以前に、美夢さんのような無垢で純情で儚い天使系のヒロイン──それも、ほぼ最初から男主人公に好意を持っているヒロイン──がとても苦手である。『ぬきたし』のグランドヒロインのあの子とか(名前忘れた)。美夢は同学年だけど、最初は涼に対して敬語で丁寧に接するし、年下っぽい面が強い。(だからこそデートイベント時にタメ口に切り替わるのが魅力的である、という節もあるが。)
BAD ENDを読む。あっさりとした終わりだが、卒業写真に丸い囲いで合成されて写り込んだ姿、という描写で、あのヒロイン5人&涼の例の集合写真からも疎外されているヒロインとしての美夢、というところは少し考えさせられる。そういう意味での「隠し」ヒロイン。一緒に卒業できなかった/しなかっただけなら後輩とか先生とか姉とかも同じだが、写真は生者しか写さない。(去年、歌穂が撮った写真のときの美夢はまだちゃんと生きていて写り込み、だから最後に涼はそれを見て思い出すことができる。) とすると、非現実的な夢想が生身の姿として映し出されていた、このビジュアルノベルのカメラ・スチルは「写真」ではない、ということになろう。特に美夢√は過去回想パートだけでなく、現在時制パートすらも涼あるいは美夢の夢想として曖昧な位相に置かれているために、そのカメラ自体が非現実的な様相を帯びる。実際のカメラは撮った対象を「過去」の回想されるものに強制的に変えてしまう装置であるが、このノベルの視点は、現実ならざるものを写す/映すことによって「過去」そのものを書き換える。さらに、美夢が「忘れて」と願うように、その擬-カメラは対象を「回想される」ものへ変えるのではなく、むしろその反対の忘却を促す作用がある。忘却装置としての擬-カメラ=ノベルゲームの視点。この観点は本作以外にもちょっと適用できそうな、面白い話題かもしれない。


・美夢アナザーストーリー
本編(正史)では病身幽霊ヒロインだった子のアナザーストーリーは当然、ちゃんと手術が成功した世界線だよなぁ……にしても、成功の要因が「主人公が見事に徴候に気付いて速やかな脳神経外科の受診を勧めたから」なのはワロタ。そんなことまでできなきゃエロゲ主人公にはなれないのか(⇔エロゲ主人公ならそんなこともできるのか)…… 本編ではがんとだけ言及されていたが、脳腫瘍だった。「あとすこしでも見つかるのが遅かったら、手遅れだったそうです」
なんかもういろいろと、ヒーロー願望を満たしたい男のためのド直球のポルノ・フィクションって感じでむず痒くなりますわね。。