王道のロープライス変身ヒロイン悪堕ち洗脳物
総プレイ時間:4時間40分
実プレイ日数:6日
サイトの短時間セールで格安だったので買った。
まだあまりこのジャンルの抜きゲーをプレイしたことはないのだけれど、本作はおそらく、ロープライスの変身ヒロイン悪堕ちモノ/洗脳モノとしてスタンダードな内容であると初心者の私でも想像ができるような作品だった。
街を脅かす宇宙人に立ち向かう正義のヒロインの正体は、学園の美人(巨乳)風紀委員だった。
彼女には幼馴染で同級生の彼氏がいて、やっと最近付き合い始めたばかり。
彼とともに街を守っていた主人公だったが、策略によって敵幹部(テブのおっさん)に囚われてしまう。
彼女の戦闘スーツの力を欲し、そして彼女を自身の忠実な奴隷とすることを企んだ敵幹部は、入念な洗脳を開始する………
──と、このように導入部のあらすじをわざわざ書き出す必要がないほどに、そのプロットはありふれている。こちらの予想を越えるような要素はほとんど皆無だ。新規性も物語の強度も何もない、形骸的な作品だ。
もしこれがシナリオゲーならば最低評価となろうが、本作は抜きゲーに分類される。ある種の抜きゲーにおいては、形骸的であることが欠点となるどころか美点となる場合がある。変身ヒロインの悪堕ち洗脳モノが好きな人間が求めていることは概ね決まっている。それに忠実に、求められているものを過不足なく提供する。そんな、芸術家の仕事というよりは職人業といったほうがふさわしい作品だった。
以下、いくつかの特筆事項
・簡易アニメーション時にメッセージウィンドウが邪魔
本作のシーン時には時々、CGの差分を交互に切り替えて表示することでピストン運動などを表現する、簡易アニメーション(とも呼べない代物)の演出が入る。これ自体はいいのだが、せっかく簡易アニメーションをしているのに、その最中も画面下部のメッセージウィンドウが表示されっぱなしで、肝心のCGが部分的に見にくくなってしまっている。アニメーション中は右クリックによるメッセージウィンドウ非表示機能も反応しないし、configでメッセージウィンドウの透過度をいじることも出来ないため、これは明らかに設計上のミスだと思う。せっかくの演出を自ら台無しにしているのは勿体ない。
(自分が気付いてないだけで、ちゃんと非表示に出来たのかもしれない。そうだったらごめんなさい)
・「完堕ち」「洗脳」について
このような変身ヒロインの敗北Hを愉しむジャンルにおいて(というか、より広範の陵辱調教ジャンルにおいて)、「ヒロインは最後まで気高い心を失わず、陵辱者に屈しないのがいいのか、それとも最終的には"完堕ち"するほうがいいのか」という議題は、ジャンル愛好者のなかでもしばしば論争を呼ぶ定番ネタだろう。また、この亜種として「ヒロインが洗脳されて完全に人格が入れ替わるほうがいいのか、それでは"中身"が別人になっているからダメなのか」という話題も色々なところで見聞きする。
言うまでもなく、これらの問いに普遍的な答えはなく、「各々の性的嗜好に依る」としか言いようがないのであるが、では自分は果たして「どっち」なのか?──という疑問は長らくあった。そして、この類の問いは、単に頭で考えていても本質的には無意味である。なるほど、正義のヒロインが最後まで屈しないからこそ、そして屈していない状態のまま犯されるからこそ興奮するのだ、という言い分は尤もだし、洗脳によって別人になってしまったら、それは痴女と和姦をしているだけで陵辱の愉しみから外れてしまっている、というのも頭では理解ができる。しかし、そんな理解など、《自分は果たして「どっち」なのか?》という原初の問いに対しては何の意味もない。
──己の身体に聴け。古来の偉人(えろいひと)はこう言った。自身の身体、肉体、それらの感応によって形作られる性的嗜好は、もうひとつの宇宙、もうひとつの深海とも呼べるフロンティアである。その真実を識るには、貪欲に獲物──オカズ──を喰らい、我が血肉としなければならない。己のことなど己自身にもわかっていないのだから、「外部」の「他者」を己に通過させることで間接的にその一端の輪郭を明らかにせんとする。それが抜きゲーに相対するものの本懐の1つではなかろうか。少なくとも私はそうだ。
・・・要するに何が言いたいのかというと、「洗脳モノが守備範囲かどうかはやってみなくちゃわからないから本作で判定できてよかった」ということだ。結果は、まぁ普通に使えた。作中の洗脳完了直前には、明確に、彼女の意識が奥深くに「封印」される、という描写があり、では洗脳が完了したあとに目の前で喘いでいるこの女は《誰》なんだ──?自分は一体、《何》に劣情を催しているんだ──?という疑問を抱かないこともないが、とりあえずは使えればそれでカタはつく。後者の疑問に関してはおそらく単純に図像のある種のパターンに反応している面は否めない。とにかく、私は洗脳も完堕ちも守備範囲のようであったことが本作で確かめられてよかった。
とはいえ、最も良かったシーンは、洗脳"初期"のまだ元人格/性格が残っている状態での、市民の前で恥辱の振る舞いをするところだったので、やっぱり「堕ちかけ」がいちばん好ましいのかもしれない。
・「触手」という第3勢力
また、悪堕ちや洗脳は大丈夫だったようだが、「触手」についてはあんまり好きではない可能性が出てきた。ヒロインの正義のスーツが魔改造されて、一体どんなえっちな衣裳になってしまうんだと心を踊らせていたところに、触手が生えてスーツ自らヒロインを犯しだすという斜め上の展開に困惑をしてしまった。生理的な嫌悪感や拒絶感があるわけでは決してないのだが、いまいち乗り切れないジャンルだなぁと思う次第であった。その原因も、これからの人生で探っていきたい。
なお、スーツから触手が生えて意志を持ってヒロインを陵辱する、というのは単なるいちシチュエーションというだけでなく、本作の(薄い)ストーリー/世界設定の上でも実はわりと重要な意味を持っている。
というのも、実は「エレメントスーツ」は、ヒロイン(善)ー 敵幹部(悪)という二項対立で成り立つ※かにみえるこの作品の「第3勢力」であるのだ。(※正確には、ゲノムは上官イービルに反旗を翻そうとしているので悪勢力のなかでも更に分裂しているが、ほとんど本筋には出てこないので無視する)
敵幹部ゲノムはスーツの力を手中に収めれば全宇宙を支配することも可能になると考えるが、いくらヒロインを調教し洗脳しても、最後までスーツの力を制御することは出来ない。つまり、エレメントスーツは第3勢力にして作中の「最強キャラ」として、本作の勢力図を左右するポジションにいるのだ。触手が生えるのも、スーツが単なる道具ではなく、明確な主体(キャラクター)であることからの必然的な帰結であるとは考えられる。
ゲノムはなんとかスーツに部分的な改造を施して、正義や愛の意志に反応するのではなく、淫らで堕落した思いを糧にして力を発揮するようにさせるが、これはスーツがゲノムの支配下に置かれたことを意味しない。スーツの行動が一時的にゲノムの利害に合致しているに過ぎない。
だから、個人的には、ヒロインを完全に洗脳して配下に加えたゲノムが、彼女の身に纏うスーツの暴走(あるいは"正常な生命活動")によって攻撃され、地球や宇宙の支配といったわかり易い目的がないままに天下をとったスーツ=触手が無秩序な振る舞いを続ける──というエンドであれば、シナリオゲーとしても一定の評価は出来たかもしれないと思う。そうすれば、あまりにもナイーブな善悪の二項対立が根幹にある作品世界を自ら最終的に乗り越えて、善悪の「外」へと到達するようでアツいではないか。
しかし、当然ながら(or残念ながら?)抜きゲーとしての評価とシナリオゲーとしての評価は両立しないことも多いため、そんな「狙った」展開を持ち込むことは、本作の抜きゲーとしてのある意味で完成されたテンプレート感を毀損するだけに終わることも十分に考えられる。これだから抜きゲーは難しい。