模範的なロープライスゲーにして王道の監禁陵辱モノ。そして「あの頃の夏」感のノスタルジーがたまらない
クリア日時:2020年8月7日
2日で全クリ。総プレイ時間6時間ちょい。
……最ッ高だった!!!
これが模範的なロープライスゲーか……一気に駆け抜けた満足感と一筋の寂寥感がたまらない。
陵辱監禁モノとしてみたときの抜きゲー要素も個人的にほぼ完璧だし、なにより「あの頃の夏」感、ノスタルジー、エモさを演出する青春モノとしても完璧。
同級生の元クラスメイト美少女(夢はバイオリニスト)を拉致監禁して陵辱するってのは「馬鹿な妄想」であって、その馬鹿らしさが若さと結びついてよりエモくなる。
どのルートも異様に完成度が高い。
特に好きなのは逮捕エンドと未遂エンド……ってあれ、陵辱に失敗してるじゃねえか!いや徹底的に嬲るの自体は最高なんだけど、「夏休み」以降もこの関係、この現実が続いていくとは思えない。というか、逆にひと夏の思い出であったほうがよりエモさ/エロさが増すと思うので、隷従エンドや愛玩エンドはたしかに男の妄想の理想ではあるんだけど、やっぱり破綻するし、関係性の盛り上がりもこの夏が頂点だろう。(ラブコメはくっつくまでが面白い、というクリシェのと似たようなもん)関係性が続くどちらのエンドでも将来が明るくないことが示唆されているのは、そういうことなんだろう。
※逆に、この描くのが非常に難しいとされる、異常な奴隷関係が非日常から日常へと、人生へと続いていく様を本気で描いたのが、ノクターンノベルスの『今日は昨日、明日は今日』だ。この小説の凄まじさはいつかちゃんと語りたいんだけど、僕もまだ半分しか読めてない……長過ぎる……必要な長さとは言え……(完結したのは衝撃だった)。
ルートごとの雑感
・逮捕エンド
主人公がやったことの酷さ、許されなさをちゃんと自覚した上でゲームを作っている、というのがこのルートから最も伝わった。
主人公はこの陵辱が許されない極悪非道なことだと理解してしまった、理解できるという意味で「普通のひと」になってしまった。そのことに主人公はもっとも絶望し、その自覚とともに行き続けていくことが、償いにはならずとも、ただ、それだけが彼にできること、しなくてはならないことだ。うーん、リアル。
美月にとって路傍の石、自分など認識する価値もない、どうでもよい存在であることのコンプレックスから犯行に至ったわけだけど、タクシードライバーとなって運命の再会を果たしても、「感謝」される、つまり自分と過ごしたあの夏のことなどすっかり「乗り越えた」ということ、それこそが主人公にとって最大のダメージであり、また、そこで何も声をかけずに、永遠の別れをすることが、主人公にできる最良の選択、罪滅ぼしである。この罪滅ぼしは、文字通り美月には何の影響ももたらさない。それゆえに罪滅ぼしたりえるという倒錯した事実をうまく表現している。素晴らしい。
『タクシードライバー』観るか……
・未遂エンド
未遂エンドが最後の最後に開放される構造もニクいな〜〜〜。
全て終わった後にこのルートを見ることで、プレイヤーにとって「あのときこうしてれば……」という「あり得なかった未来」反実仮想としてこのエンドは実感されるし、もちろん反実仮想としてではなく、本当に起きたエンド、これこそがTrueエンドであると捉えてもいい。
まぁ同窓会で再会まではいいけど、拉致に失敗した台風の日のこと(傘いらない?)を美月が覚えていて話しかけてくれた上に、主人公の写真を褒めてまでしてくれるなんて都合が良すぎるきらいはあるけれど、気に入らなければ反実仮想に押し込めてしまえばいいのだ。
僕はどちらでもあってどちらでもないような、ノベルゲームのみに許される真実の曖昧さに身を委ねたいと思います。あぁ……美月……綺麗になって……
・BADエンド(勢い余って殺しちゃって自殺)
ここは陵辱好きの間でも意見がわかれるところなのだろうけれど、殺しちゃうと萎える。(ひどい字面だ)
というかあんまり苦痛系が得意ではない。スタンガンとか、痕・後遺症が残るのも、興奮より可哀想……と思う気持ちが優った。
これは別に聖人アピールをしてるのではなく(だったら陵辱好きなんて告白しねえよ)、単純に痛さを自分でも想像しちゃって怖くなる。
エロスを突き詰めていくと「死」の香りがする、というのは川端康成『眠れる美女』なんかで見事に表現されているわけだけど、個人的な性癖としては「死」とか肉体的な「苦痛」は、エロスを助長せずに打ち消しちゃう。打ち勝っちゃう。一般的なテーゼとしてはたぶん川端の理論は正しいとは思うんだけどね。
BADエンドのあとに、選択肢に戻って殺さないルートをやり始めても、さっきまでの死の影がちらついてしまってうまくプレイに入り込めない。
こんなに喘いでるけど、あとほんのちょっとスタンガンを押し付けてたらこの子は死骸だったんだよな……と考えてしまってよくない。
とはいえ、「ほんの少しの差で運命が大きく変わる」とか「人間はわりと簡単に死ぬ」とか、このエンドで表現されていることは総じて正しいと思うし、作品全体の構成を考えても必要なルートであるとは思う。ただ自分の性癖に合わないだけ。
あと、マジでスタンガンが痛そうすぎて可哀想過ぎて、そのあとに排泄プレイとか中出しとかいろいろな酷いことをして美月は絶望しているけど、いち部外者の男性である自分からすると、どう考えてもスタンガンを押し付けられるのがいちばん嫌なので、そこで一気に「ハード」プレイのハードルが高くなってしまって、「本当に美月はこれを辛いと思っているのか……?さっきのスタンガンよりマシじゃね?」と思ってしまい、そこで感情移入しにくくなった。
・隷従エンド
まずガリガリに痩せ細った腕が見ていてツラかった。あのドレスでのプレイを楽しみにしていたのだけれど、それよりも腕の細さ、不健康さに可哀想と思ってしまい集中できず。
やっぱり陵辱は肉体的な健康があってこそだよ!
あと妊娠がふつうに無理。
あと謎の媚薬キノコも、まぁエロかったのは認めるけど、そうじゃないんだよなぁ感。媚薬で強制的に興奮させるのではなく、素の状態で調教していくから面白いのでは?
バイオリンを徹底的に怪我して尊厳破壊するのは王道だけど良かった。バイオリンを突っ込むのはやっぱりエロさより「痛そう」が勝ったけど……
・愛玩エンド
食事や毛布やバイオリンを与え、心身ともに健康状態を保つのはgood. そうして次第に美月は主人公をほんとうに「御主人様」とみなし始める……
監禁奴隷モノとしてはいちばん王道の展開。両親への疑似ビデオ撮影とかも。
ただ、大学進学してあの地下室から美月を連れ出すというのは以外だった。あの場所、そして「あの夏」だからこそ妄想が具現化できたと考えたい。
だから都会のマンションの一室では同じようにはたぶんいかないし、長らく監禁され病院にもいけない美月は当然ながら咳が目立ち……うーん、リアル。
プレイ的に苦手な要素はなく、全ルートを含めて考えれば展開にも納得ができるエンドだが、めちゃくちゃ好きというわけではない。
細かい好きな要素
・猫耳かわいかった
・ボンデージエロかった
・脇毛最高。スカトロも容赦なくていい
本作の特徴として、ヒロイン(美月)が主人公に心を許したり、ましてや愛情を抱いたりするルートが一切ない。
いちばんそれっぽい愛玩ルートでも「御主人様」として精神的に依存している感じで、もはや自立した人間とは言えない。
ここらへんのシビアさはリアルで高評価できるんだけど、それゆえに死とか衰弱とかスタンガンによる後遺症とか、苦手な肉体的苦痛要素も多めだった。ジレンマ
本当はもっと胸を攻めるプレイが見たかったんだけど、スタンガンのせいで片方の胸に痕が残っているので、たとえあったとしても集中できなかったと思う。